片目が失明しています―。SNS上に自身の目の状況を赤裸々に明かし、カラフルな義眼を着ける女性がいる。子どもの頃にけがで右目が見えなくなり、白く濁っている。「見た目のことでキモい、怖い、という言葉を飽きるほど言われてきました」と女性。個性的な義眼に憧れたのをきっかけに、今では自分で製作するまでに。1個十数万円ほどする義眼を、女性はこう例える。「きれいな指輪を集めている感じ。やっと、なりたい自分になれました」
バイト面接で罵詈雑言
名古屋市在住で、X名リブさん(29)。子どもの頃から見た目で怖がられることが多く、右目に眼帯をしたり、前髪で隠したりして過ごした。ショックだったのは、ホテルのアルバイト面接。顔を合わせた瞬間、相手の表情が強張った。「格式高いホテルなのに醜い顔で来るなんて…と罵詈雑言を浴びせられました。見た目で断られることはよくあったけど、つらかったですね」と振り返る。
目のコンプレックスはあり、義眼の存在は知っていた。でも、20歳の時に初めて着けると、違和感を持った。ごく普通の義眼。「どうして周りの人と同じ目に合わせなきゃいけないの?と思ったんです。個性を大事にしたいなって」。そんな時、中学の時に見たアメリカ映画「ラスト・アクション・ヒーロー」の登場人物を思い出した。ニコちゃんマークに、炎のような真っ赤な目…。シーンごとに変わる義眼にかっこよさを感じた。ただ、どこの義眼製造会社に問い合わせても、一般的なタイプしかない。「カラコンっぽい色もありませんでした。福祉の世界はおしゃれが難しいなって…」
他人のウケより自分のウケ
ネットや文献の中で情報を集め続け、つてを辿り、対応してもらえる技師を見つけたのは2020年。星空をモチーフにした義眼を頼んだ。完成した義眼は、約2センチの歪んだ半球型で、裏側は凹んでいた。全体に星空が散りばめられ、中心にはキラッと光る大きな星が1つ。目を覆うように被せて鏡を見ると、なりたい自分になり、うれしさがこみ上げた。
ブラックライトで青色に光らせたり、鳥の目の色合いにしたり…。蛍光オレンジを背景に「EYE」の文字を入れた義眼では、ネイルも同じ色にして遊ぶことも。今では技法を学んで自分で作り、10数個の義眼を持っているという。SNSに写真を投稿すると、いい反応がある一方で、今でも心無い言葉が並ぶ。でも、リブさんは明るく跳ね返す。「他人のウケより自分のウケです」
※写真では左目に義眼を着けているように見えますが、インカメラで撮影して反転させているそうです。