日本では年間何頭のワンコたちが殺処分されているかご存知でしょうかでしょうか。その数は年間約2700頭。今日、いまこの瞬間も行き場を失ったワンコたちが、殺処分機で処分されているかもしれません。
保健所にある殺処分の箱。ドリームボックスと呼ばれます。憤りを覚える名称ですが、犬猫を処分するためのガス室です。行き場を失ったワンコたちはこの冷たい金属とコンクリートの廊下を奥へ奥へと追いやられ、このドリームボックスの中であの世に送られていきます。
機械のボタンを保健所の職員が押すだけ。ドリームボックスの中のワンコたちは10分ほどで窒息し、その後焼却炉で焼かれると言います。このようにして年間約2700頭ものワンコが処分されているのです。
殺処分機を稼働させないためにできることは?
このドリームボックスや焼却炉を稼働させる費用は税金から賄われています。焼却炉を稼働させるには相応に多額の費用がかかるため、かつては、亡くなったワンコを一度冷凍庫で保存し、まとまったところで燃やすこともあったそうです。
胸をえぐるような話ですが、残念なことに今の日本ではこれが現実です。こういった殺処分をいつかゼロにするために、そして1頭でも多く行き場を失ったワンコの命を救い、幸せへと導く活動を行うのが、保護団体・ピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)です。
ピースワンコのプロジェクトリーダー、安倍誠さんによれば、「全国的に野犬などが多い地域は注射などを使わず、この方法で殺処分するところが多い」と言います。また、こういった現状に対して今できることは何かについても聞かせてくれました。
「殺処分対象は圧倒的に野犬が多いのが現状ですので、野犬を保護し人に馴らした後、里親さんへ譲渡するという良い循環を作っていくことだと思っています。結果的に『野犬を迎える文化』みたいなものを創造していけるといいなと思っています」
里親譲渡が難しいワンコも保護する理由
保健所には、高齢になったことで意図的に捨てられた飼い犬もよく収容されているとされ、中には愛護センターなどの施設近くにケージに入れたまま遺棄されていることもあったと言います。
「こういった高齢で捨てられたワンコはなおさらかわいそうです。なぜなら、もともとは人から飼われていた頃の幸せを知っているので。そして、施設に収容された後も檻の中で飼い主の迎えをずっと鳴きながら待っている高齢犬もいます。元飼い主に返すことが難しいのなら、その最期は施設ではなくて『家族』のもとで幸せのまま全うしてもらうべきだと思います」
こういった思いのもと、ピースワンコはワンコの保護活動を行い、相応のトレーニングや治療などをした上で、新しい里親さんへとつなぐ活動をしています。
他方、新しい里親さんへの譲渡が難しい重篤な持病があるワンコ、前述のような高齢犬で現実的に新しい家族とのマッチングが難しいワンコでも、殺処分寸前の現場からピースワンコでは積極的に引き出しを行っています。
ワンコ個々に与えられた等しく尊い命を全うしてもらうためで、こういったケースでは、その生涯を終えるまでピースワンコが責任を持ってお世話をし続けています。
犬も人間もみんなが幸せになれるように
動物愛護センターなどで行き場を失ったワンコを安倍さんをはじめとするピースワンコのスタッフが引き出す際、ときには強い警戒心からスタッフを威嚇し、噛みついてくるワンコもいます。しかし、安倍さんは動じません。むしろ「かわいい」と話します。
「全然大丈夫です。どんなに牙を剥けられても、優しく愛情を持ってワンコに向き合えば、必ずいつか心を開いてくれますから。そして、そのワンコの殺処分を免れさせてあげられるのなら噛まれるくらいノーダメージです。現在、日本で行われている犬猫の殺処分はほとんどアウシュビッツの方法と同じです。半世紀も前の人類の過ちをいまだに日本で、日本人がおこなっています。日本は文化的には後進国だと思います。だから変えていきたいと思っています。殺処分は動物に対する差別です。弱い立場の命を人間の都合で処分しているわけだから、変えなきゃいけない問題だと思います。これからも殺処分ゼロを目指して活動を続け、犬も人間もみんなが幸せになれるようがんばっていきたいです」
ピースワンコ・ジャパン
https://peace-wanko.jp/