薄汚れうつろな表情 多頭飼育崩壊で傷つき怖がりの保護犬 「この子のことが知りたい」家族と出会った

松田 義人 松田 義人

 

多頭飼育崩壊から保護されたワンコ、エーフは本来の面影をかすかに残しながらも、体全体が薄汚れ、うつろな表情を浮かべていました。過酷な環境で過ごしていたことがすぐに想像できました。

超怖がりで体に触れると嫌がるエーフ

 

エーフを保護したのは、保護犬の譲渡活動を通し、「犬の殺処分ゼロ」を目指すピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)。エーフを含む多頭飼育崩壊から保護された7頭のワンコを引き出し、団体のシェルターへと連れて帰りました。

シェルター内の検疫犬舎で体調検査やワクチンの摂取を行い、別の犬舎へと移動。こちらで譲渡を視野に入れたさまざまなトレーニングを行うわけですが、8頭の中でも特にエーフは、触られたり抱っこされることがとてもイヤな様子。エーフは特に怖がりのワンコでした。

 

エーフのペースに合わせて根気強くトレーニング

 

散歩トレーニングもなかなか大変でした。エーフは人間のちょっとした動きや音に反応してしまうことから、ハーネスの装着時、散歩中のスタッフのちょっとした動作にその都度反応し、パニックに陥ります。

ただし、多頭飼育崩壊という、おそらくは放置に近い状態だった過去を持つエーフですので、こういった人間との交流を怖がってしまうことはよくわかります。数多くの保護犬と触れ合ってきたスタッフは、こういった生い立ちや性格を理解した上で、エーフのペースに合わせて根気強くトレーニングを重ねることにしました。

たとえば散歩の際などには、スタッフはエーフの歩調に合わせるのと合わせて、できるだけ多くのアイコンタクトを取りました。また、お風呂に入る際などにもできるだけ声がけをするようにしました。

しばらくするとエーフはパニックを起こさなくなり、少しずつスタッフに心を開きはじめ、ついには笑顔を見せてくれるようになりました。

2022年、エーフは譲渡センターに移動しました。新しい里親さんを見つけるための施設ですが、慣れない場所や知らない人がいるとエーフはまた怖がり固まってしまいます。しかし、それも保護当初ほどではありません。環境に馴れ、たとえば知らない人がそばにいても食事ができるようになりました。これなら里親さん探しもスムーズにできそうです。

 

「エーフのことが知りたい」…里親希望者さんが現れた

譲渡センターにある里親希望者さんが訪れました。幼い頃から保護犬と接し、最期まで看取られてきた経験がある方で、当初はエーフと別のワンコを迎え入れることを検討されていました。しかし、そのワンコを迎え入れた後の生活などを総合的に検討され、一度は断念されました。

しかし、この里親希望者さんは後日インスタグラムにアップされたエーフの写真を見て、ビビッときたらしく、今一度連絡をくれました。

「この子(エーフ)のことが知りたい」と言い会いに来てくれました。息子の優しいお兄ちゃんも一緒でした。

事前に聞いたエーフの性格も十分理解し、正式に譲渡を決めるまで、何度も何度も譲渡センターに通われました。

やがて、里親希望者さんはエーフを迎え入れる決心をしました。自宅では、家族全員でエーフを迎え入れる環境作りをしました。

優しい里親さんには怖がる素振りを見せず第2の犬生へ

 

万全の体制を用意してもらったところで、エーフは見事ピースワンコを卒業することになりました。

譲渡センターを後にする際、エーフはすんなりと里親さんの腕の中に抱かれ、怖がるそぶりはありませんでした。この日までにエーフに対し温かく接した里親さんを信頼してのことでしょう。

スタッフは「エーフ。卒業おめでとう。これからも幸せにね」と送り出しました。

 ピースワンコ・ジャパン
https://peace-wanko.jp/

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