あの人ってどれくらい稼いでいるんだろう？ そんな密かな関心事である給与明細を買い取り、SNSで公開する人がいる。X名「給与明細買取屋さん」。「美容クリニックの闇を知る美容クリニックのカウンセラー（年収530万円）」などと題して給与明細を投稿し、インタビューには匿名で学歴や仕事内容をはじめ、宗教や風俗経験、整形などが赤裸々に綴られている。これまで公開された給与明細は600人超。一体、誰がどんな目的で活動を始めたのだろうか。
お金に対して勉強不足
「日本人ってお金に対して勉強不足だなと感じていて。他の人の給与や働き方を知ることで、自分の給与が適正に払われているのか判断できるようになると思うんです。労働者が搾取されがちな世の中です。100人に1人でもこの事実を知って何らかの行動に移せば、世の中が変わるんじゃないかな、と」。そう話すのは、アカウント運営者で、経営者の30代男性。新規事業として考えていた給与明細買い取りだが、会社では難しいため断念。会社が軌道に乗って時間ができたことから、2021年6月にアカウントを趣味として立ち上げた。
給与明細とインタビューは、〝社会の歪み〟を浮かび上がらせる。美容クリニックを転々とする美容カウンセラーはおすすめしない医院を挙げ、「人体破壊工場ですよ。顔のどこに筋肉があって、神経があってとか把握してない医師が多すぎます。わけわかんないとこ縫ってわけわかんないもの入れられてる可能性が高い」とぶっちゃけ。ゆるふわベンチャーで働く男性は「実働1～2時間で年収820万円」とさらけ出す一方、同じ業界で月120時間労働する注意欠如・多動症（ADHD）の女性もいる。東京大学に通う女子学生は、将来への不安から風俗で年収800万円稼ぎ、プレイのコツを詳細に語っている。
「世の中が信じられなくなる」
「最初は毎回毎回炎上していました（笑）底辺から金持ちまで、同じ世界に生きている格差がすごいですよね。暴露話を見ると…世の中が信じられなくなってきますよね」と中の人。買い取り額は1000円からで、黒塗りなしは5800円相当。年収や経歴、サービス残業などのほか、「世の中にぶちまけたい何か」を答える応募フォームをもらった後、10個ほどの質問を送り、深堀りしていく。一つの給与明細の質問や投稿に掛ける時間は約10分という、早業だ。
ちなみに、中の人の学歴はMARCH以上。おなじみの質問「世にぶちまけたい何か」を聞くと、こう返ってきた。「『お疲れ様です』『よろしくお願いいたします』と書かなくちゃいけないメールはもうやめよう。日本人は社交辞令も多くて、1行で終わることを5倍掛けていて効率が悪いんです。海外でそんなことやってるところ、ないですから」
