「人生のベースはボクシング」 映画「春に散る」で好演の片岡鶴太郎…実はプロテスト合格の腕前 主演の横浜流星に感じたセンス

磯部 正和 磯部 正和

 1988年、当時33歳でプロボクサーのプロテストを受け合格し、話題になった俳優の片岡鶴太郎。プロテスト合格後は、世界チャンピオンになった鬼塚勝也や畑山隆則のマネージャーとして、タイトルマッチでセコンドを務めることもあった。そんな片岡が、ボクシングを題材にした映画『春に散る』(8月25日公開)で、横浜流星演じるボクサー黒木翔吾をサポートする佐瀬健三を好演している。

 「僕の人生にとって、ボクシングは切っても切り離せないものなんです」としみじみ語る片岡。出会いは幼少期。テレビに映るボクシングが大好きで夢中になって観戦していた。どこかで「やってみたいな」という思いが心のなかにあった。

 そんな片岡が行動を移すことになったのが1988年。自身が33歳のときだ。この時期と言えば、大ヒットドラマ『男女7人夏物語』(1986年)、『男女7人秋物語』(1987年)が放送され、片岡が演じた“不死身の貞”は大きな反響を呼んだ。

 「どうしてもやってみたいという思いが止められなかった」という片岡は、肉体改造に挑んだ。当時ボクシングのプロテストの受験資格上限に引っかかっていたが、懇願して受験資格を得たことを考えても、どれだけ本気だったのかがうかがえる。

  「やるからにはライセンスを獲得したい」と一念発起し、プロテストに向けて1年間、徹底的にトレーニングに励んだ。「渡嘉ちゃん(元世界王者の渡嘉敷勝男氏)にお願いして、周囲には秘密でいろいろ指導をしてもらいました。本当に32~33歳の1年間はライセンスを獲るために、精神と肉体を鍛え上げました」

 この時期のボクシング経験があるからこそ、その後の人生で多くのことにも自信を持って取り組むことができた。そんなボクシングを愛する人物として、映画『春に散る』に参加する。片岡が演じる佐瀬は、不公平な判定によって心が折れてしまった若きボクサー・黒木翔吾(横浜流星)と、翔吾のトレーナーとして世界を目指す元ボクサーの広岡仁一(佐藤浩市)を優しく支える役回りだ。

 「なんか私の実人生とダブる部分もあったので、お話をいただいたときには運命を感じました。彼の気持ちもよく分かる。すごく感情移入できる役で、流星くんと浩市さんのサポートをする立場として、台本にないセリフや動きなども相談させていただいたんです」

 片岡と同じく横浜は、本作の撮影後、ボクシングのプロテストを受け、ライセンスを獲得した。

「流星くんと現場で一緒のとき、彼のボクシングを見て『これはプロライセンス獲れるぐらいまでの力はあるな』という話をしていたんです」と裏話を明かすと「もともと流星くんは空手をやっていたので、体のつくり方やトレーニング方法は全部わかっている。スキルもある」

 ただプロテストにはスパーリングがある。

「打ち合わなければならないので、そこは準備が必要なんですよね。パンチに慣れる必要がある。スパーリングさえしっかりこなせれば、間違いなく受かるよ」と背中を押したという。合格の知らせを聞いたときは「やっぱり受かったか!と思いました。本当にうれしかったです」

 ハードなボクシングシーンは、他のボクシング映画と比較しても迫力満点だ。それは経験者である片岡も同じように感じた。「流星くんも窪田正孝くんも、本当にきっちりと体を作って、スキルを身につけて撮影に臨んでいました。監修に入った松浦慎一郎さんも数々のボクシング映画に携わっていて、しっかりと手を決めていました。本当にすごいシーンに仕上がっています」と太鼓判を押していた。

◇映画『春に散る』は8月25日より全国ロードショー

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