災害級の暑さという日々が続くなか、外出先での熱中症対策をおこなう人は多いですが、長時間過ごす住居はいかがでしょうか? 実は家での熱中症の発生率が高いという事実が…そんななかで見直したいのが、家での「断熱」。
現在、窓の断熱工事に対して補助金が出るといいます。建材・設備機器メーカー「LIXIL」(本社:東京都品川区)の広報・酒井さんに話を聞きました。
熱中症、家も危険です!
総務省消防庁の報道資料によると、熱中症の発生場所は屋外が11.8%、道路16.6%、そして住居(敷地内すべての場所を含む)が、39.5%(出典1)となっています。
「夏は、窓や玄関ドアなどから、73%もの外気の熱が流入してきます。そのため、窓や玄関ドアの断熱性能を高めることで、外からの熱の影響を少なくすることができます」と酒井さん。
エアコンを利用するにあたって、窓とドアの断熱対策をした方が冷気が逃げづらくなり、効果的に快適な室温を保つことができるとのこと。自宅の窓ガラスの遮熱や断熱効果について調べるには、直射日光が当たっている窓ガラスを内側から触ってみるといい。それで熱を感じるならば断熱効果が低いと判断できるそうです。
80・90代は特に周囲が注意を
60代以上を対象とした調査では、60〜90代の熱中症対策の1位は「こまめに水分を補給する」、2位は60〜70代が「エアコンを利用する」でしたが、80・90代は「窓を開けて室内の風通しをよくする」(出典3)という結果になっていました。
熱中症の予防や対策の気がかりなこととして、80代・90代の1位が「エアコンを使用すると体が冷えること」というのもありますが、3位が「エアコンや扇風機を使うことで電気代がかかること」(出典3)というのも懸念材料のようです。断熱していれば、電気代削減にひと役買いますが、LIXILの調査(出典4)によると断熱の存在を「知らなかった」「聞いたことがなかった人」が40.3%もいるのです。
「断熱」を知らない人も多い!?
「東日本に比べると、冬が比較的温暖な西日本の方が、断熱の認知が低いという結果になりました。冬は、10度以上の温度差がある場所は、特にヒートショックなどの危険性が高まるので、断熱することは夏・冬とともに大事なのです」と酒井さん。そんな認識の低さからか、約5000万戸ある既存住宅で、現行基準の断熱を満たしているのは10%、残りは低い断熱性能、もしくは無断熱といいます(出典5)。
ちなみに断熱が本当に効果があるのかどうかわからない人に向けて、その差を体感できる施設「住まいStudio」(予約制)が東京と大阪に設けられています。「住まいStudio大阪」では、真冬を想定した0度の空間にそれぞれ昭和55年を想定した「昔の家」、そして現在の断熱基準を満たすように改修した「リフォームの家」(G2グレード)が設置されています。
同じように暖房していても、「昔の家」は特に窓際は室温が下がっており「寒さがこんなにも違うとは」と、室温の体感の差に驚く人が続出しているそうです。
窓の断熱改修のため、国が補助金を出す
現行の断熱基準を満たすよう、既存住宅の窓の断熱改修を支援するために、1戸あたり5万円から最大200万円までの政府補助金「先進的窓リノベ事業」の交付申請を受付中です(2023年3月31日から)。予算は1000億円で、7月10日時点では交付申請金額が341億円472万円に達しています(詳細は、ホームページ「住宅省エネ2023キャンペーン」にて)。
「今回の「先進的窓リノベ事業」を機に、生産体制を強化しましたが、想定を上回る状況です。内窓商品に関して言えば、普段であれば稼働日5日でご対応できるところ、2か月以上納期を頂いている状況です(8月5日現在)。断熱性の高い窓に交換して20年ぐらい使用することで、条件にもよりますが、光熱費のもとをとれる試算になります。また、家の中で過ごす快適さは大きく変わっていくかと思います」(酒井さん)。
ほかにも家でどんな対策ができる?
「ほかにもできる夏の対策として効果的なのは、窓から光が入る量を防ぐため日よけの『スタイルシェード』を外に付けることです。太陽の熱は外側から遮断をする必要があります。カーテンでは太陽の熱を45%しかカットできませんが、スタイルシェードでは83%もカットでき、一般複層ガラスの窓と組み合わせて使用した場合は室内温度がが最大3.4度も下がるという試算も(LIXIL調べ)。またほかには、採風対策としての採風玄関ドア、湿気対策としての壁材「エコカラット」も人気となっています」とのこと。
費用はかかるものの、室内での熱中症の発生率の高さを考えると、家での滞在時間が長い人にとって家での暑さは、死活問題です。日本の平均気温も変動はあるものの上昇傾向にあり、気象庁によると100年で1.30度の割合で上昇中。また、断熱することで冬の浴室で起こりやすいヒートショック対策にも。夏だけでなく、冬も見越して今後の対策を。
出典1:総務省消防庁令和4年10月報道資料より
出典2:東京消防庁 令和3年5月報道資料より
出典3:一般財団法人 日本気象協会「熱中症ゼロ」プロジェクト調べより 調査時期2023年5月
出典4:LIXIL「住まいの断熱と健康に関する調査」、全国都道府県の20〜50代、4700人(各都道府県男女50名ずつ)2022年9月実施
出典5:国土交通省「社会資本整備審議会 建築分科会 資料(2021年)」より