病気や事故、災害など、ペットの飼養が継続できない状況に陥る可能性は、誰にでもあり得ます。7歳になる紀州犬の男の子、お米丸くんは、約半年前に飼い主が急逝。突然、行き場をなくしました。しかし、お米丸くんを襲った悲劇はそれだけではありませんでした。
「飼い主様が自殺し、ひとり残された7歳のオスの紀州犬…『縁起が悪い犬』というレッテルを貼られ、引き取り手がおらず、約半年間たらい回しにされて、保健所行きの手前で急遽一報が入りました。名前は【お米丸】。突然ですが、今日から家族です！」
そうTwitterに投稿したのは、「一般社団法人 ワニガメ生態研究所」（@kanameogino）の所長、荻野さん。投稿には10万7千以上のいいねがつき、多くのリプライが寄せられました。
飼い主の分も「幸せ」になれるように
「ワンちゃんに何の罪もないのにこちらの勝手でそんな風に言うなんて」
「そんなこと言う人の心が難癖つけ野郎だ。こんちくしょう」
「この子だって飼い主さんが突然いなくなり悲しい思いをしたのに」
「飼い主様が選択した背景に何があるか分かりませんが…飼い主様の分まで…それ以上に幸せになれるように願ってます！」
荻野さんが運営する「一般社団法人 ワニガメ生態研究所」では、大型の爬虫類や大型犬、小型犬、猫など、保護依頼のあったさまざまな動物が保護・飼養されています。
ワニやカミツキガメ、土佐犬やピットブルなど、扱いが難しいとされる動物を保護することが多い「一般社団法人 ワニガメ生態研究所」の所長、荻野さんは、心優しいタフガイ。そんな荻野さんちの一員となったお米丸くんと、ペットと暮らす上で考えておくべき「万が一の心構え」について、お話を聞きました。
薄茶色→紀州犬らしい白色に
ーーお米丸くん、首輪の跡がただれていたそうですね…。
「約半年間たらい回しにされた結果です」
ーー「薄茶色」だったシャンプー前のお米丸くんの被毛を見て、そういう紀州犬もいるのかと思われたそうですね。お米丸という名は、白米のように被毛が白い紀州犬ならではの毛並みが由来…？
「亡くなられた飼い主様が付けた名前なので、由来はわかりません」
ーーそうでしたか…。お米丸くんはどんなわんちゃんですか？
「元来、紀州犬は気が荒いと言われていますが、私の中の『荒い』の基準が、イリエワニや人慣れしていない土佐犬、狩猟型犬種のドゴ・アルヘンティーノですので、それに比べれば、ドーベルマンでもおとなしい部類なんです。なので、紀州犬クラスですと、サイズ的には中型犬ですが、私にとってはおとなしい小型犬、です」
ーー頼もしい！お米丸くんは今後、荻野さんのところの元保護犬たちの仲間入りを…？
「まずは、ピットブルのエースやドーベルマンのこたろうと遊んでみてからですね」
考えておきたい「後見人」と「お金」
ーーお米丸くんのような悲劇を生まないためにも、万が一に備えて、飼い主が考えておくべきことはありますか？
「今回の”飼い主の自殺”のようなケースは別として、事故などは数分先にでも起こり得ることです。ただ、そればかりに固執していては何もできないのも現実です。もし最低限準備しておくものがあるとすれば……頼りになる人か、いやらしい話ですが、現金でしょうね」
◇ ◇
人間の身勝手で輸入された動物が遺棄、殺処分される現状に憤りを感じ、「不遇な動物たち」の保護活動を開始した、荻野所長。特定外来生物飼養許可施設でもある「一般社団法人 ワニガメ生態研究所」を設立しました。
そんな頼もしい荻野さんと出会えた、お米丸くん。「縁起が悪い」というよりも、実は最強の縁を結んだ幸運なわんちゃん、なのかもしれません。
