「異議あり!」「くらえ!」の名台詞が、宙組男役スター・瑠風 輝(るかぜひかる)の美声で劇場に響き渡る。累計販売980万本を超える大人気ゲームシリーズ「逆転裁判」の世界を舞台化した、宝塚歌劇宙組公演『ミュージカル・ロマン「大逆転裁判」-新・蘇る真実-』が、7月19日に梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで開幕。同劇場で初主演の瑠風が、痛快な法廷バトルをセンターで盛り上げた。
これまで宝塚では、2009年に当時宙組の蘭寿とむ主演で『逆転裁判-蘇る真実-』を上演したのを皮切りに、3度同シリーズの公演が行われ、本作が10年ぶり第4弾となる。今回も宝塚の鈴木圭が脚本・演出を担当し、株式会社カプコンが原作・監修・制作協力。「逆転裁判」シリーズの主人公・成歩堂龍一の先祖、成歩堂龍ノ介を主人公にした「大逆転裁判」の舞台化で、シリーズの生みの親である巧 舟(たくみしゅう)と鈴木が念入りな打ち合わせを重ね、ゲームにはない新たな事件を書き下ろした。
明治時代の大日本帝国から、最新の司法制度を学ぶため大英帝国へ留学する成歩堂龍ノ介(瑠風)。彼は弁護士を志す大学生で、法務助士の御琴羽寿沙都(山吹ひばり)が留学に同行していた。異国に到着早々、大探偵シャーロック・ホームズ(鷹翔千空)からバッキンガム宮殿で催される仮面舞踏会に誘われる。その舞踏会で龍之介は思いがけない事件に遭遇。弁護を託された彼は、絶体絶命のピンチを覆していく。
175cmの長身が映え、男役としての風格と色気が増してきた生粋の宙組スター・瑠風が、詰襟の学生服で爽やかに登場する冒頭から新鮮。親友・亜双義一真(風色日向)の志を受け継ごうとする生真面目さや正義感、御琴羽寿沙都に恋心を抱くときのお茶目な様子、汗をぬぐいながら真実を突き詰めようとする眼差しなど人間味あふれる造形が、ゲームの世界を素敵に立体化している。ぶれのない朗々と響く歌声やスタイルの良さが、やはり大きなインパクトに。「ぐぐぐ」とのけぞるコメディタッチの仕草も、脚の長さが際立つ。
鷹翔千空(たかとちあき)演じるシャーロック・ホームズは、どんな窮地に立たされても飄々としていて憎めないキャラクター。宙組は2021年に大劇場公演『シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-』を上演しているが、そちらとはテイストの違うホームズを、鷹翔が楽しそうに演じている。
そのほかにもクセのあるキャラクターが次々登場。親しみを感じさせるヴィクトリア女王(小春乃さよ)、「まるでドラキュラ伯爵のようだ」と言われる不気味な風貌のバロック・バンジークス(優希しおん)、下駄を鳴らして闊歩する夏目漱石(凰海るの)、ホームズと同居する天才少女のアイリス・ワトソン(美星帆那)や陪審員の一人一人まで個性的。
またゼングファ共和国の大使を演じる専科の汝鳥 伶と、バッキンガム宮殿の執務長を演じる天彩峰里は、声色ひとつにも芝居の奥行きを感じさせ、本作に無くてはならない存在。この時代の衣裳が似合い、ヒロインとして作品に華やかな彩りを与えた山吹ひばり、龍ノ介の親友としての重要な立ち位置をたたずまいからも放っていた風色日向も健闘した。
伏線となる会話や小道具、次々と覆される証言や推理が展開、まさにアドベンチャーゲームに乗っかっているような演劇体験。おなじみの主題歌「蘇る真実」でキャラクターたちが勢ぞろいするシーンは胸が高鳴り、瑠風の歌声もたっぷり聴ける。フィナーレでは瑠風がゴールド系の華やかな衣裳で、ほかのキャストが見守るなか一人で踊る場面も。山吹とのデュエットダンスでは優しく彼女を抱き寄せる。
初日前日に行われた通し舞台稽古では、瑠風が「明日の初日から千秋楽までどうぞよろしくお願いします」と爽やかに挨拶していた。
『「大逆転裁判」-新・蘇る真実-』は同劇場で7月26日まで上演。千秋楽の26日15時公演はライブ配信も行われる。また、8月1日から8日までKAAT神奈川芸術劇場でも上演される。詳細は公式サイトへ。
宝塚歌劇宙組シアター・ドラマシティ公演
『「大逆転裁判」-新・蘇る真実-』
公式サイト:https://www.umegei.com/schedule/1119/