「もしかして熱中症?」…小さな異変を感じたら頑張らないで 自力で動けるうちに対処を

平藤 清刀 平藤 清刀

梅雨が明けたら、いよいよ本格的に夏がやって来る。近年は最高気温が40度に達する地域もあって、尋常な暑さではない。熱中症の危険が増すばかりだが、熱中症になったら自分の体にどんな異変が現れて、どう対処したらよいのだろうか。

高温の環境下で起こる体調不良は…

熱中症とは何か? 環境省が発表している「熱中症環境保健マニュアル2022」(以下、マニュアル)によると、「体温を平熱に保つために汗をかき、体内の水分や塩分(ナトリウムなど)の減少や血液の流れが滞るなどして、体温が上昇して重要な臓器が高温にさらされることにより発症する障害の総称」とある。とくに、気温が高く湿度も高い場合は、熱中症のリスクがさらに高くなるという。

高齢者は若い世代より寒暖の差を感じにくいうえ、体温調節機能が劣るといわれている。また、幼い子供は体温調節機能が十分に発達していない。高齢者と幼い子供に熱中症のリスクが高いといわれるのは、このためだ。

ちなみに高齢者は、どれくらい寒暖の差を感じにくいのか。ある地方都市で、救命救急センター長を務める医師に聞いた。

「毎年必ず複数人、猛暑の中ダウンジャケット等を3枚も4枚も着込んでこたつに入り、窓を閉めてエアコンはついておらず、もしくは暖房設定という我慢大会のような状況を救急隊が確認して、搬送されてきます」

子供は頭の位置が近く、地表面からの輻射熱を受けやすいため、成人と比べて熱中症のリスクが大きいという。

では、どのような異変が現れたら熱中症を疑うべきだろうか。次の図表にある「軽症」の段階では、他人からは分かりづらいかもしれない。

あくまで筆者個人の経験だが、軽症の症状が表れる前に「もしかしてヤバいかも?」と思わせる兆候が表れる。まず視界が、カメラレンズの露出をオーバー気味にしたような感じに似て、視界全体が白っぽく見えはじめる。大量の汗をかいて止まらなくなる。呼吸が荒くなるなど。

このような異変が表れたら熱中症の兆しなので、自力で動けるうちにカフェや店舗などを探して、スポーツドリンクを摂りながら休むことにしている。経験上、この段階ならば30分ほどで回復する。

マニュアルにも、熱中症の処置として「体を冷やす」「塩分を補給する」こととある。倒れてしまう前の、なるべく初期の段階で気づいて、且つ自力で動けるうちに対処すれば回復は早い。

熱中症らしき人を発見したら…

熱中症は、正しい予防法を知っていれば防げるといわれている。睡眠・栄養・水分を十分に摂取すること。こまめに水分補給すること。屋外へ出るときは帽子をかぶることなど。

環境省は「冷房時の室温28℃」「快適に過ごせる軽装」を促すクールビズを推進しているが、多くの人が「室温28℃」を誤解しているそうだ。これは、冷房の設定温度ではないという。28℃に設定しても室内温度が28℃になるとは限らないため、実際には設定温度をさらに下げる必要があるそうだ。

もし熱中症と思われる人を見かけたら、どう助けてあげたらいいのか。日本救急医学会の熱中症に関する委員会が2018年に発表した「熱中症予防に関する緊急提言」によると、熱中症を疑った場合は、まず「涼しい場所で休憩させましょう」とある。そして、患者がペットボトルなどを自分で保持して飲めない場合は、医療機関へ連れて行く。

このほか「体を冷やす」「スポーツドリンク、食塩水(0.1~0.2%)などを自分でもたせて飲ませる」ことなどの処置が、環境省のマニュアルにも紹介されている。

体を冷やす場合は、脇の下、両側の首筋、足の付け根など、太い血管が通っている部位を冷やすと効果的だという。

ただ、医学知識のない人が人助けのつもりで、勝手な判断をしないことにも留意が必要だ。自信はないけど見捨てて行くこともできないという場合は、その場ですぐ救急搬送を要請したほうがいいだろう。しかし、前出の救命救急センター長によると「不要不急の救急要請が増えつつあります」とのこと。そのため「予防と早期の対処を認識してほしい」と呼びかけている。

熱中症かなと思ったら頑張らない、頑張らせないことが大事。症状が軽いうちに適切に処置すれば、早く回復することが期待できる。

   ◇   ◇

▽環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf

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