タバコのポイ捨てで、水族館の野外水槽の魚が死滅ーー。京都花園教会が運営する水族館の投稿が、ネット上で波紋を呼んでいます。
京都花園水族館は子どもたちが無料で観覧できる水族館として、2012年に展示を始め、主に土日限定で開放してきました。寄付のみで運営してきた教会の水族館に何が起きたのでしょう。水族館長を務める篠澤俊一郎牧師に話を聞きました。
9割の魚が死滅した水槽から吸い殻
京都花園水族館の野外水槽(縦70センチ、横140センチ、深さ30センチ)ではコイや金魚、フナ約60匹を飼っていました。篠澤牧師が稚魚から育てたり、飼育放棄され引き取った魚たちでした。京都のうだるような夏や凍えるような冬を乗り越えた魚たちは「温度管理できない水槽で生きてきたので、そう簡単には死なない」という丈夫な個体ばかりでした。
異変が起きたのは1~2週間前、温度変化に強いコイが立て続けに死にました。篠澤牧師は「自分の管理不足かな」と思い、水槽の水を入れ替えるなど水質改善に取り組みましたが、亡くなる魚は増える一方でした。
館内の水槽に魚を移したところ、元々館内にいた魚も死にました。対策に頭を悩ませる中、6月26日、生き残った魚が野外水槽の片隅に集まっていることに篠澤牧師が気付き、野外水槽の反対側を調べると、水底からタバコの吸い殻が出てきました。「ニコチンは水溶性なので水に溶け、野外水槽は水の循環する機械が入っていないので、タバコ1本でも毒素が蓄積し、魚が弱っていたのだろうと。ニコチンは殺虫剤に使われるほど毒性が強いのに…。11年やってきて初めてことです」と篠澤牧師は声を落とします。
篠澤牧師はTwitterで吸い殻を捨てた人に向けて、「貴方にとってはただの魚かも知れませんが、貴方が考えている以上のバックグラウンドがあるんですよ」と語りかけました。
生き残ったのは金魚5匹とフナ1匹ですが、いずれも弱っており、容体が回復するかは見通せない状況です。
篠澤牧師は野外水槽を撤去することを決めました。
「偶然吸い殻が水槽に入ったのか、わざと捨てたのか判断できず、今後も同様の事態が起こり得る以上、野外水槽はすべて撤去せざるを得ません。今は撤去のお知らせと経緯説明分を掲げていますが、子どもたちにショックを与えたくないので、一般公開する土曜日までに全て片付けます。カメの野外水槽も撤去します」
「野外水槽は子どもたちの通学路に面していて、生き物との接点になっていました。こんなかたちで野外展示が終了してしまうことは、子どもたちに対して申し訳ないですし、残念です」
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