民家で猫80匹の多頭飼育崩壊、約20匹の死体も発見…虐待か? 神奈川の動物愛護団体が刑事告発

渡辺 晴子 渡辺 晴子

神奈川県横浜市内の民家で猫が増えすぎて、飼い主が適正飼育をせず「多頭飼育崩壊」が起き、周辺住民の住環境に多大な影響を及ぼしていたことが分かった。

5月初旬には飼い主が猫たちの所有権放棄を申し出て、同市内にある動物保護団体「おーあみ避難所」(代表大網直子)が猫約80匹を保護。さらにこの民家から20匹近い猫の死体が見つかるなど、飼い主による虐待(ネグレクト)の疑いとして「一般社団法人 動物虐待インターベンション」(神奈川県、代表河野治子)が動物愛護法違反の罪で告発した。飼い主側は否認しているという。

近隣住民から「猫の死体のようなものが…」と、動物愛護団体へ相談

民家の多頭飼育崩壊が発覚したのは3月中旬。動物虐待インターベンションの河野さんのところに「猫の死体のようなものが玄関口から見えていた」などと、段ボール箱から猫のしっぽが垂れ下がっている写真が送られてきた。河野さんが現場に急行したところ、写真と同じ位置にしっぽが出ている段ボール箱を発見。全く動かない状態だったため、警察や横浜市などに通報・相談し、同日玄関で8匹ほどの猫の死体が見つかったという。

「今回の現場で段ボール箱の猫を確認した後、横浜市動物愛護センターなどに情報提供に行きました。1月中旬から近隣住民は『ひどい臭いがしてくる』と通報していたそうです。その時は飼い主に会えず室内に入ることはできなかったようです。

実際、周辺はふん尿の臭いと死臭が混ざり合った、酷い悪臭がしていました。あまりにも臭いので定期的にアンモニア濃度を測ってくれと大家さんからご依頼があり、民家の裏庭の共用部分に立ち入っていたのですが…そこから室内はふん尿で汚れ、白い長毛の猫たちも体中にふんなどがこびりついてクリーム色に変色した猫が見えました。ある時には猫の死体が転がっているのを発見しました。死体は骨が不自然に露出していて、共食いされたのではないかと思いました」(河野さん)

4月に横浜市が立ち入り検査、横浜の団体が約80匹の猫を保護

そして 4 月下旬にも、横浜市が立ち入り検査を実施し、通常民家ではあり得ない99ppm 前後の高い数値をアンモニア計測器が示し、相次いで猫の死体が発見されたという。

「40代飼い主夫婦は数年前に長毛猫を数匹飼い始めたようです。徐々に猫が増えていって近隣住民らから悪臭などの苦情が相次ぎ、住んでいたマンションが契約解除に。それ以来、横浜市内で引っ越しを繰り返していたそうです。

4月に横浜市などが立ち入り検査を行った後、飼い主が入院し飼育そのものが難しくなり、飼い主側が猫たちの所有権放棄を申し出て『おーあみ避難所』が全頭保護することになりました。『おーあみ避難所』と協力団体が手分けしてこの猫全頭を複数の動物病院に受診させましたが、いずれの病院の獣医師からも『ネグレクトは明らか』という診断書が出ています」(河野さん)

近日、保護された猫たちの様子はYouTube「HGA48 犬猫ニュースチャンネル」で公開する予定という。

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動物愛護団体が警鐘「多頭飼育崩壊は飼い主さん、ご近所さん、動物たちを不幸にします」

横浜市の民家で起きた多頭飼育崩壊を通じて、河野さんはこう警鐘を鳴らします。

「数匹から始まり、乱繁殖した典型的な多頭飼育崩壊の事例。一部の雄猫だけ去勢手術をしていたようですが…経済的な理由があるならば、まずは雌を全頭避妊する必要があります。頭数が増えすぎてお世話ができなくなってしまうと、室内はふん尿だらけになり、悪臭や害虫の大量発生など必ず近隣住民とのトラブルにつながります。

たくさんのもふもふに囲まれて生活したいと考える方は多いと思いますが、多頭飼育は想像以上に大変です。当たり前ながら、膨大な数のふん尿の掃除をするだけで、時間がかかります。増えないように全頭避妊・去勢手術をした上で、きちんと個体管理。予防接種や病気の予防、治療など獣医療にかける膨大な時間もお金も必要になります。たくさんの動物を飼育する全ての人が崩壊にならないのは、時間や手間を惜しまずしっかりと衛生的な環境を整えた上で、一匹一匹の健康状態を見られているからです。

日頃のお掃除を怠るなど、適正飼育ができなければ飼い主さん、ご近所さん、そして猫たちが不幸になってしまいます。横浜市の現場は実際、不衛生な環境下に置かれて、頭数管理ができず餌が足りない状況で、免疫力が低下している弱い子が亡くなったり、共食いされたりした猫の死体が多数出てきました。身勝手な人間のずざんな飼育が動物たちの命を奪っていることを今回の現場を通じて知っていただきたいです

YouTube「HGA48 犬猫ニュースチャンネル」

おーあみ避難所のホームページ

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