日本で世界初の死亡事例も…マダニ媒介の感染症どう防ぐ アース製薬の害虫マイスターに聞いた

黒川 裕生 黒川 裕生

厚生労働省と茨城県は6月23日、マダニが媒介するとみられる「オズウイルス」に感染した茨城県内の70代女性が死亡したことを明らかにした。人での発症や死亡の報告は世界で初めてという。一方、兵庫県内でも今年4月以降、赤穂市などでマダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の感染報告が相次いでおり、専門家らが注意を呼び掛けている。殺虫剤・防虫剤メーカー大手アース製薬の“害虫飼育のマイスター”有吉立さんに、マダニの生態や有効な対策法について取材した。

「マダニは草むらの葉っぱの裏によくいます。それで、人や動物が近くに来るのを待っていて、二酸化炭素を感知すると葉の先端部分にヒュッと移動して飛び移るんです」

赤穂市坂越にあるアース製薬の研究所で、実に25年にもわたって害虫を飼育してきたマイスター有吉さん。マダニも市内の草むらなどで簡単に見つかるといい、これまで資料として撮りためてきた映像や画像を示しながら、マダニについて解説してくれた。

「例えば、草むらの上部を撫でるように白い旗などを2、3回振っただけで、驚くくらいマダニが付着します。外出時は絶対に油断してはいけません。SFTSは致死率が16〜30%程度と言われていて、ワクチンも治療薬もない。特に免疫力の低いお年寄りは感染すると大変危険です」

研究所では、試験管でマダニを飼育しているという。

「マダニは普段、ほとんど動きません。でも上から息を吹きかけて試験管に蓋をすると、二酸化炭素に反応して活発に動き始めます。『お、誰かおるんか』と言わんばかりに、上に向かってワーッと動く。屋外でマダニに刺されるのは、そういうメカニズムです」

「犬の散歩にも注意しないといけません。ダニは犬の毛の中に入ると見えませんから、気づかず家庭内に持ち込んでしまう危険性があります。面倒でも、帰った後はブラッシングした方がいいでしょう」

マダニに咬まれるのを防ぐ有効な対策についてはこう語る。

「市販の虫除け剤を塗ると、全く寄りつきません。実験では、塗布した部分にマダニを無理やり乗せても、『イヤイヤ〜』と落ちることが確認できています」

「また、野外に出る場合は長袖長ズボンがオススメです。そして、肌が露出しているところには虫除け剤を塗布してください。それでも服の隙間から入り込んでくることがありますが、マダニは血を吸う場所をめっちゃ探すので、実は咬まれるまでに時間がかかります。山登りや農作業などから帰ってきたら、上着は外で脱ぐ、すぐシャワーを。まだ皮膚についていなかったら、それで除去できます」

「マダニを媒介とする感染症はこれからますます増えて、問題になってくるでしょう」と懸念する有吉さん。マダニは春頃から増加し始め、10〜11月頃が本格的な活動期になるという。近年は山や公園、河川敷、草地、庭など、身近な場所での存在も問題視されており、さらに、SFTSウイルスを保有したマダニは国内で広く分布していると考えられている。

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