美術を志す生徒「先生、絵って、すぐ上手くなる方法ありますか?」 先生がしぶしぶ明かした秘策とは? 鼻を折られた経験が人を育てる 

中将 タカノリ 中将 タカノリ

"絵がすぐに上手くなる方法"を解説した漫画がSNS上で大きな注目を集めている。

「美術の先生は実は知っている」と自作の漫画を紹介したのは高校教師と、画家と漫画家を兼業する夏目にーにさん(@212natsume)。

先生に「絵ってすぐ上手くなる方法ありますか?」と尋ねる少女。初め「そんな方法あったら皆すぐ上手くなっている」とはぐらかした先生だが、少女の度重なる問いかけにとうとう明かしたメソッドは「描いた絵を上手い人に直してもらうこと」だった。

生徒の個性を尊重したい、プライドを傷つけたくないという理由から積極的にこの指導法をする人は少ないという。しかし、上手い人の描き方のイメージを自分に刷り込むことこそ絵の上達の早道だというわかりみあふれるこの作品に対し、SNSユーザー達からは

「予備校で同じ経験を思い出しました。講師が手直しした線をずっとなぞって時間を過ごしました。捻くれていたので、どこが良いのかわからなかったんです。高校で美術の腕前イチバン!という勘違いがココで崩れた瞬間ですw」
「これわかります!母が美大卒でよくこれされていました!同じものがこんなに変わるの!?そんな描き方していいの!?と毎回学び私も結局芸大へ行きました」
「これ話してくれたなら 許可なしに僕がいないとき加筆してきた中学の頃の先生の指導も素直に飲み込めたのになあ いい指導だったのかもな」

など数々の共感の声が寄せられている。

マンガの作者に聞いた

夏目さんにお話を聞いた。

ーー加筆指導をする際の生徒の反応で、共通することや印象的なことなど聞かせてください。

夏目:美大予備校時代の話になりますが、加筆指導はデッサン初心者が中心なので、みな素直です。ありがとうございました、という感じです。浪人生とかになるとほぼ手入れはしないですが、なんか気合入ってないなーとか感じると、こっちも覚悟して手入れました。

エピソードはすぐに思いつかないですが、手を入れても意地でも自分のスタイルを変えないという生徒がいて大したもんだと思いました。デッサンは上手くならないけど、アーティストとして大成するかもなーと当時思いました。

ーーご自身も加筆指導を受けたことはありますか?

夏目:私が小さな美術予備校に通っていた頃、そのクラスでも何となく私が一番だろなーと調子に乗っているときに、「ちょっと席変わって?」と講師に突然言われ、横に立たされ、皆の前でガッツリ手を入れられるのは鮮明に覚えていて、公開処刑でした。しかし先生の所作であったり、出来上がった絵は明らかに私の能力のはるか先にあるスケールの絵だったので、間違いなくこの体験が私の血肉になっています。

ーー漫画が反響を呼びました。

夏目:賛否のある漫画だと最初から覚悟したんですが、補足を付けたおかげか理解いただき、いろいろな分野の方から共感いただいているのはうれしかったです。

その中でこの加筆指導がAIに置き換わる意見もありました。できあがったお手本を参考にすることも上達の一つの道です。しかし、現場で加筆中、長く感じる時間に講師の所作や過程をじっくりと眺められる時間。この過程の体験こそが上達する大きな一歩だと個人的には考えてます。古い人間ですので、面倒くさいことこそ大切にさせたいと思っております。

◇ ◇

筆者は音楽と文筆を生業にしているが、この世界でも上達のコツは絵と同様、熟練の先達に手を入れてもらうことだと感じている。若い時ほど自身のオリジナリティーを過信しがちで、そこに甘えてしまうことがあるが、もし純粋に技術を高めたいと願う人は、思い切って加筆指導してくれる人を探してみるといいかもしれない。

今回の話題を提供してくれた夏目さんは、教育や漫画を通し、今後羽ばたいてゆくクリエイターたちに「今やろう!」というやる気を与えるためのさまざまな情報発信をしている。つい先日、5月30日はこれまでSNSで発表してきた漫画をまとめたKindle本「第1集 今やれ、今: 夏目にーに漫画短編集」を上梓。ご興味ある方はぜひチェックしていただきたい。

夏目にーにさん関連情報
Twitterアカウント:https://twitter.com/212natsume
「第1集 今やれ、今: 夏目にーに漫画短編集」:https://amazon.co.jp/dp/B0C6PGT8BH

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