「世界一黒い布」にアノ業界から注文殺到 カメラマンの撮影用背景として開発したはずが…メーカー「何に使うのか」「驚くばかり」

金井 かおる 金井 かおる

 「世界一黒い布」に注文が殺到し、メーカー担当者を驚かせています。月曜日の朝、担当者が会社のパソコンを開くと、大量の注文が。しかも注文者は全国の歯科医院。「歯科業界で一体何が?」

「これほどまで黒い背景を求められていたとは」

 光学機器用部品製造の光陽オリエントジャパン(埼玉県上尾市)が2022年2月に発売した世界最黒のシート素材「特級暗黒布 太黒門(たいこくもん)」。

 本来の用途はプロカメラマン向けの撮影背景素材。可視光域の光吸収率は99.9%を達成し、さまざまな無反射黒色素材を開発する同社製品の中でもダントツの黒さを誇ります。「光学的に選定されたパイル、樹脂、織り規格の組み合わせにより、パイルが乱れなく垂直配列した理想の立体構造を実現しました。テーブルフォトの下敷きや展示品の装飾にご使用いただくことで、背景が存在しないような不思議な視覚効果を演出することができます」

 発売直後、プロカメラマン以外から思わぬ反響がありました。「A4サイズのものがガンプラ撮影の背景に最適というSNS投稿を頂き、ホビーユーザーから周知を得ました」。SNS上にはプラモデルやカプセルトイの背景として使用された美しい写真が多数アップされています。

 この頃から歯科医院向けの出荷はちらほら入り始めていたそうで「何に使うのかと不思議に思っておりましたが、今回、突然の全国からの大量注文を頂き、驚いているところです」。

 SNS上の動きを調べてみると、ある歯科医院の院長が撮影した写真に対し、同業者から「黒い背景は何か」「画像処理はどうしているのか」などの質問が寄せられ、院長は太黒門を紹介。投稿には多数の「いいね」がついており、今回の大量注文はここから火がつき、全国の歯科医院へ広がったと考えられそうです。

 同社でもその後、施術や手術の道具、歯科装置、口腔内写真を撮影する際の黒背景として使用されている例を確認しており、担当者は「歯科という業務の中で、これほどまでに黒い背景を求められているとは思わなかったので非常に驚いております。医師は研究者としての側面もございますので、症例や治療で得た知見をプレゼンテーションやレポートとして公表する機会があるのではないでしょうか。そういった中で資料としての撮影素材として、背景が完全に黒抜きされた画像が必要になるのだと思います」と話しました。

 世界一黒い布の世界。体験してみたい人は多いのではないでしょうか。

 「A4サイズから販売しておりますので、趣味の模型や天然石、コインのコレクションなど、ご自身が持つ小物を撮影するときは非常に便利にお使い頂けると思います。圧倒的な黒の世界をお手軽に楽しんで頂ければと思います」(同社担当者)

 A4サイズ1540円(税込、送料別)。メートル単位切り売り販売などもあり。

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