噛みつき手がつけられず…家族に「殺処分」と言われた柴犬 小3だった私は「自殺する!」と泣いてお世話を頑張り、穏やかな犬に

渡辺 晴子 渡辺 晴子

「あまりに手が付けられなくて家族に『殺処分』って言われた子でした…
けど、末っ子で当時小3だった私に出来た弟はかわいくて仕方なくて
『殺処分するなら、私この家の2階から飛び降りて自殺するから!私がお世話するから連れてかないで!』って泣いて説得して しっかり寿命を全うしてくれました」

こんなつぶやきとともに、今は亡き愛犬の写真をツイッターに投稿した飼い主の「Leo's diary」さん(@Sheltie_Leo1107)。写真のワンちゃんは、昨年1月22日、家族に見守れながら息を引き取った柴犬のコロくんです。16歳でした。

飼い主さんが小学生だったころ、かみついて手に負えなかったというコロくん。家族から「(コロくんを)保健所に連れて行く」と言われ、思わず「殺処分するなら、私この家の2階から飛び降りて自殺するから!私がお世話するから連れてかないで!」と泣きながら引き留めたといいます。

そんな”弟”のように愛しかったコロくんとのことを思い出してツイートした投稿に感動する人や、涙を流す人たちからたくさんのコメントが寄せられました。

「あまりにも素敵な話で心を揺さぶられました!」
「最後の瞬間までお世話、側に居てくれた、あなたが、あなたの様な方が居てくださり、心から感謝です。今も思われているコロちゃん幸せです。いつまでもその気持ち忘れないで下さい」
「最後まで飼ってくれてありがとうございました。元柴犬のブリーダーより。」
「きっと、小3のお姉チャンは弟クンのお世話を一生懸命に頑張ったんですね 大変だったこともあったと思います。有言実行 素晴らしい絆 また必ず出会えそうですね」
「手を合わせます。大好きな主様とたくさんの幸せを重ねたね。お友達が待ってるょ。主様を見守ってね。ありがとう。」

生前のコロくんについて、飼い主さんに聞きました。

柴犬にかみつかれ手の甲の骨が見えるほどの傷を負った祖母…「保健所に連れて行くしかない」

――コロくんは、あまりに手が付けられなくて家族に「殺処分」(保健所に持って行く)と言われたワンちゃんだったとのこと。当時のコロくんについてお聞かせください。

「家に来たのが6カ月を過ぎてからなのですが、その頃から散歩に連れていくのに首輪に手を持っていったり身体に触れたりするとかみつく子でした。もちろん食べ物を食べている時は近付けなくて…身体が触れないとお世話をすることができませんし、祖母がかまれた際に手の甲の骨が見えるほどの傷を負うことも。また他の家族も深くかまれたことが時々あり、これ以上は…という状況でした」

――ご家族からコロくんを「殺処分」と告げられたときに「殺処分するなら、私この家の2階から飛び降りて自殺するから!私がお世話するから連れてかないで!」と返した言葉。どんな思いで言い放ったのでしょうか?

「私に初めてできた唯一の弟なので、連れて行って欲しくなかったのと、かむようになったのはきっと私たち家族のせいなのに殺してしまうのはおかしいと思ったからです。またコロは他のワンちゃんとも仲良くできない子だったので、もし殺処分されてしまうと天国でひとりぼっちになってしまうかもしれないと、私が一緒に天国に行けば寂しくないかも!と子どもながらに思っていました」

――ご家族の反応は…。

「家族は、私が普段そんな話をする子ではなかったので、本気で言っていると思ってくれたようで、ちゃかすことなく話を聞いてくれました。その後、殺処分の話が出ることは一切なかったですね」

繊細な柴犬にとって不快なことを全部止めてみた 

――それから飼い主さんはコロくんのために頑張ってお世話されたそうですね。

「振り返ると、大変な毎日でした。当時コロが家族をかんだ状況を整理して、原因になりそうな行動は全部止めました。他のワンちゃんなら大丈夫でも、繊細なコロにとって不快なことも多くて。例えば、最初の頃はリードをつなぐとき首輪を少し引っ張るだけでブチ切れるので、そういった不快になることを止めてみたんです。

さらにストレスサインは一通り頭の中に入れ、何が嫌か、どんな状況なら大丈夫か時間をかけて様子を見ました。家族にもストレスサインがどんなものか伝えましたが、その後もかまれることがあったのでお世話は一切私が担当することにしました」

――また食のこだわりが強いワンちゃんだったとのことで、犬用料理を試行錯誤しながら作ったとか。

「はい。動物病院にも連れて行けなくて往診に来てもらっていたような子だったので、添加物だらけの身体に悪いドッグフードよりお値段が高くても品質のいいものを、と思いモグワンやカナガンをあげていました。でもそれも飽きてしまい、ジーベンデリカッセンやリリーズキッチンの缶詰をフードに混ぜたりしたことも。ただお値段が大変なことになってしまって…朝食はドッグフードと缶詰、夕食は手作りフードでお金を抑えることにしました。それでも食費に毎月6万ほどはかかりましたね。

手作り食は、犬用手作り食の本を買って試してみたもののあまりお口に合わず。そこで人間が食べている食事を犬でも食べれる食材や調味料に置き換えて作りました。チャーハンやポトフ、キッシュ、石狩鍋は特にお気に入り。何よりの大好物はステーキでした(笑)」

「かまなくても分かってくれる」 飼い主の前では、穏やかな犬に変わった

――飼い主さんの頑張りによって、コロくんはどのように変わってきましたか?

「最初の頃は私に対しても警戒心をあらわにすることはあったのですが、長く一緒にいると、ストレスサインを出す前にこちら側が気付いてなでる手を止めることもできるようになってきました。コロも『かまなくても分かってもらえる』と思うようになってくれたのか、最終的には身体のどこを触っても怒らない子になりました。表情もすごく優しくなり、口を緩めたり目を細めて笑顔を見せてくれる機会も増え、すごく穏やかなワンちゃんに変わってきたんです。ただ、それは私に対してのみで、他の家族に懐くのは厳しかったですね…」

――そんな飼い主さんに深く愛されて犬生を全うされたコロくん。どんなワンちゃんでしたか?

「気性が荒く、かみつく犬と言われた子ですが、本当は花火の音でパニックになっちゃうような繊細な子。抱きしめると落ち着くような、どこの家にもいるようなかわいい甘えんぼさんでした。ラバーでできた音のなる玩具がすごく好きだったのですが、プレゼントするたびすぐに大破させちゃっていました。キャッチするのがうまかったので、おもちゃを投げてもらうのが好きだったのですが、基本持って戻ってきてはくれなかったです(苦笑)。でも、それも日本犬らしくて愛しかったです。

最期はありがたいことに、自宅で家族全員で看取ることができました。亡くなる瞬間も穏やかで、眠るように優しい顔で先輩犬のいる天国へ駆け上がっていきました。本当は『置いてかないで』と言いたかったのですが、寿命を全うして天国に行こうとする子を呼び止めてはいけないと思い『ありがとう。よく頑張ったね。これからも自慢の弟だからね』と伝えました」

   ◇   ◇

現在、シェルティのレオくん(雄・6カ月)と暮らしているという飼い主さん。コロくんとは正反対に、好奇心旺盛で知らない人にも尻尾を振ってついて行こうとするくらい人懐っこいワンちゃんだとか。でも、「怖がりだけど少し強気で、甘えたで飼い主にすぐくっつきたがるところは2匹とも一緒ですね」と話してくれました。

そして、これからおうちにワンちゃんをお迎えする方、また一緒に暮らしているワンちゃんがかんでしまうなどと悩まれている方へのメッセージです。

「犬は本来とても社会性が高く、お互いに喧嘩は避ける生き物なので、コロも気性が荒いというより”犬一倍”繊細だったのだと思います。日本犬は洋犬の子に比べ、嫌なことに対する自己表現が苦手。全国の気難しいと誤解されている子が、その性質を理解しゆっくり向き合ってくれる飼い主さんと穏やかに暮らしていけることを願っています」

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