飼い主の会社が倒産、捨てられた犬は妊娠していた
すずちゃん(1歳8か月・メス)は、捨て犬が産んだ子だった。
すずちゃんの母犬は、飼い主の勤務先が倒産し、捨てられてしまった。同じ職場に勤めていた今の飼い主が母犬を飼うことになったが、しばらくして妊娠していることが発覚。すずちゃんを含めた7匹を出産した。子犬たちの里親をジモティーで募集したところ、2021年3月、北海道に住む木戸さんが一目惚れ。即連絡したという。
木戸さん夫妻は犬が好きだった。ペットショップからではなく、保護犬を迎えたいと思っていた。
「もともとは保護猫を迎えようと約半年間探していたのですが、運命的な出会いがなく、ジモティーですずを見つけました」
往復14時間、疲れも感じず
4月、夫妻は、すずちゃんが産まれた道東まで、札幌から車で往復14時間かけて迎えに行った。すずちゃんと一緒に暮らせることが嬉し過ぎて、夫妻はアドレナリンMAX!そのせいか、疲れは微塵も感じなかった。
「迎えの道中は、こんな幸せなことが起きていいのかな〜とワクワクドキドキ!すずを手にするまでは夢なんじゃないかと思っていました」
会いに行った時はまだ子犬がたくさんいた。可愛くて可愛くて、お母さん犬も含めて全員連れて帰りたい!と思った。しかし、そうもいかないので少し迷った後に、最初にビビッときたすずちゃんに決めたという。
本気で噛むのはなぜ?
すずちゃんは気に入らないことがあると本気噛みをしてきた。それが一番の悩みだった。
「こんなに愛しているのにどうして本気噛みするんだろうと思うと悲しくて。傷の痛みよりも心が痛かったです」
何度も流血し、全身痣だらけだった木戸さん。病院の診察に行った時は、DVと勘違いされないかヒヤヒヤしていたそうだ。
「お散歩中にも本気噛みされました。悲しいのと、泣いたらすずも分かってくれるかな?という少しの期待もあり、大人げなく声を出しながらすずと一緒に帰宅したこともあります」
もっとも、そんなことでは何も改善しなかった。夫妻は、何が気に入らないか理解しようと、インターネットで調べたり、本気噛みする直前の出来事をひたすらメモして原因を追求した。
結果、原因は『大好きだと思っていた雪遊び』であることが分かった。雪玉を投げると楽しそうに追いかけるので、飼い主も寒い中必死で雪玉を作っては投げていた。ところが、すずちゃんはそれが嫌だったようだ。
「原因が分かってからはすずに、『何度も嫌なことしてごめんね、もぅしないよー。勘違いしてごめんね』と言って仲直りをしました。それからは本気で噛まれることはなくなりました」
今では猫派だった夫もすっかり犬派に。雑種犬の可愛らしさを知った夫妻は後にもう1匹保護犬を迎えるまでになった。