もし「クマ」と遭遇したら?
ーーもしもクマと遭遇してしまった時は?
「クマを見た時は動きを止め、落ち着いてクマの様子を見てください。驚いてドキドキしているのはクマも同じです。ほとんどの場合、やがてクマの方から離れていきます。近くで急に出会ってしまった場合、こちらが慌てて走り出したり大声で叫んだりすると、クマを興奮させてしまいます。極力落ち着き、ゆっくりとクマから離れるようにしてください。
30年余りツキノワグマの生態を見続け、わかってきたことは、クマは臆病で警戒心が強く、人間を恐れているということです。また、クマだけでなく、野生動物は人をよく見ているということにも気付きました。クマは危険で恐ろしい動物というイメージが出来上がっていますが、実際は人を見ただけで襲いかかってくることはほぼありません」
yoshiさんが考える「ツキノワグマ」の魅力
ーーyoshiさんが考える「ツキノワグマ」の魅力とは?
「猟師の武勇伝や事故の報道などから、当初はとても恐ろしい危険な動物だと思い込んでいました。まだわからないことも多いですが、長年に渡り観察を続けてきた中で、本来は臆病で人を避けながらおとなしく生活している動物であり、人間をよく見ていることもわかってきました。
特に母グマは子グマをとても大切にしており、食べ物や危険な相手(オスのクマや人間)や危ない場所などを、生まれてから2歳までの間にしっかりと教えています。一般的には子連れのクマは危険だと言われていますが、母グマにこちらを危険ではないと認識してもらい、何日にも渡って近くで観察したことが何度もあります。人間が対応を間違うことさえしなければ、クマはこちらの存在を受け入れてくれます。もちろん、このことに気づくまで長い時間がかかりました。クマの性格や生態を多くの人に正しく理解してもらえるようになれば、人とクマとの関係性も変わってくるのではないかと思います」
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警告看板という人工物に興味を持ち、深い爪痕を残していたように、クマは我々が思う以上に人間に関心を持ち、観察しているのだそうです。
登山やハイキングの機会が増えるこの時期、甚大なトラブルを避けるためにも、クマの性質や生態を理解し、彼らのテリトリーを侵害しないことが大切です。