月経前の様々な不快症状に対して、低用量ピルが使用されることが多いのですが、皆がピルで問題解決というわけでもありません。ピルは血栓症のリスクのため40代の方にはあまりお勧めできません。また高血圧や乳癌の既往のある方はピルを使用できず、不正出血や吐き気などでピルの合わない人もいます。PMSが辛くてピルが使用できない方は漢方薬をトライしてはいかがでしょう。
PMSで最も多い訴えはイライラ、気分の落ち込みなどの精神症状です。昔から月経に関連して気分の変調に悩む女性は多かったのでしょう。昔の人はそれを血の道の病などと呼びました。そして血の道症には多くの優れた漢方薬があります。
怒りと落ち込み
Kさんは37歳で2歳になる双子のママです。結婚後なかなか妊娠せず不妊治療を受けて妊娠しました。最近月経10日くらいになると、イライラして子供が騒いだり言うことを聞かないと、怒りが収まらず理不尽に子供にあたるようになりました。激しく怒鳴り散らした後、やっと授かった子供たちなのに自分はなんて駄目な人間なんだろうと落ち込みます。月経が終わるころには普通のお母さんに戻るそうです。
私は彼女に抑肝散という漢方薬を処方しました。この薬は昔から育児ノイローゼに使用されています。Kさんは漢方薬服用後気分が落ち着いて月経前でも子供が可愛いと思えるようになりました。
Aさんは32歳の会社員です。月経前になるとイライラし、集中力が低下して仕事のミスが多くなります。仕事仲間にミスを指摘されると急に泣き出して皆にびっくりさせました。家に帰っても落ち着かず、職場での出来事を思い出して部屋の壁に物を投げつけたりします。
彼女には四逆散と甘麦大棗湯を処方しました。どちらも気分を安定させる薬です。この薬を服用して1カ月後彼女は気分が落ち着いてミスをしなくなり会社でも同僚から「最近落ち着いているね」といわれるようになりました。「もうちょっとで首になるところでした」と彼女は冗談めかして言っていました。
ニキビに悩む25歳
36歳の会社員Mさんはずっと頭痛に悩んでいます。特に月経前がひどくて頭痛のため仕事を休むことがよくあります。病院で鎮痛剤を色々もらいましたが満足できるほどの効果はありませんでした。私は彼女に五苓散という漢方薬を勧めました。この薬は月経前のむくみや頭痛、吐き気などにとてもよく効きます。Mさんの頭痛の頻度はずっと少なくなり、もし頭痛がおきても鎮痛剤を飲めば我慢できるようになりました。
Gさんは25歳の大学院生です。彼女の悩みは月経前1週間に現れるニキビ。いつも少しニキビがあるのですが、月経が近づくと口のまわりやあごにブツブツがいっぱいできておろし金のようになるのです。皮膚科にも通っており、先生からピルの服用を勧められて当院を受診しました。まず低用量ピルを処方しましたが、むくみや不正出血など服用始めによく出る副作用が現れました。少し服用を続ければ落ち着くことをお話しましたが、あまり気が進まないようでした。
漢方薬を試したいということで彼女には加味逍遥散と美肌効果のある薏苡仁(ヨクイニン)を処方しました。Gさんは真面目に服用し1カ月後の月経前には少しニキビが減少。2~3カ月後には随分目立たなくなりました。ニキビには他に桂枝茯苓丸加薏苡仁もよく使用されます。
このようにPMSに有効な漢方薬はたくさんありますから先生に相談してみてはいかがでしょう。