少し頑固な元野犬 「譲渡は難しいかも」とスタッフも半ば諦め…運命の人が施設にやってきた!

松田 義人 松田 義人

2016年、保護団体ピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)に引き出された元野犬のおさむ。

保護された当初のおさむは推定3歳。性格はおとなしく、好きなことはお散歩・お昼寝・おやつ。シャンプーも嫌がらず、とってもいい子です。しかし、少し頑固な一面もあるようで、お散歩の途中に嗅いだ匂いが気になってなかなか進まなかったり、お散歩から帰るのを嫌がったりしていました。

他のワンコの卒業を何頭も見てきた

元野犬の保護犬は、他のワンコと群れたりするのは得意な一方、人間に対して、とても怖がりが多いものです。おさむも人間が苦手。「この人、ちょっと怖いな」「苦手だな」と感じてしまうと、仁王立ちのまま動かなくなってしまうこともありました。こういった性格などから、スタッフは「新しい里親さんへの譲渡は難しいかもしれない」と感じるようになっていました。

同団体では、「持病がある」「高齢だ」などケアが必要で譲渡が難しいワンコには、関連施設で、その命を全うするまで他のワンコたちと一緒に過ごしてもらい、お世話を続けます。おさむもまた、「現実的には同団体の施設で暮らすことになるのだろう」とスタッフは考えていました。

結果、おさむは、後から同団体が保護したワンコたちが、新しい里親さんの元へと巣立っていくのを何頭も見ることにもなりました。

「今まで犬に助けてもらった分、保護犬のお世話をしたい」

そんなおさむにでしたが、2022年の秋口のある日のこと。おさむにとって運命の日でした。

別のワンコを迎え入れることを名乗り出たある里親希望者さんがいました。その人は、何度も何度も同団体の施設に足を運ぶ、目当てのワンコはもちろん、他のワンコにも触れ合ってくれていました。この方は、8年ほど前、先住犬のシェトランド・シープ・ドッグを癌で亡くしたそうです。そのときの別れがあまりにも辛く、「もう犬は飼いたくない」と思っていました。それから月日が経ち、お子さんが進学で家を出てから「なんだか寂しい」と感じるようになり、「今まで犬に助けてもらった分、退職したら保護犬のお世話をしたい」と思うようになったとのことでした。

この方が同団体の施設を訪れた際、たまたまスタッフがおさむの紹介もしました。すると、普段はやや頑固で人間が苦手なはずのおさむが、この里親希望者さんからなでてもらうことを全く嫌がらず、おやつも食べることができました。

6年間見送り続けたおさむ、卒業のとき

その後、里親希望者さんもおさむとの縁を感じ、当初迎え入れる予定だったワンコではなく、おさむを家族として迎え入れることにしました。

おさむを里親希望者さんに紹介してからわずか1カ月後、2022年11月11日、おさむは同団体からの卒業が決まりました。「1」が並ぶ「わんわん(11月)わんわん(11日)」の日です。

おさむと一緒に過ごしてきたスタッフはこう語ります。

「里親希望者さんは、迎え入れるワンコに対し『私が責任をもって介護をするし、シャンプーもご自分でされる』とおっていました。もちろん、おさむのこれまでの病歴も確認され、『何かあればすぐ病院にも行きます』って言ってくださったので、安心しておさむを任せられるなと思いました。ぜひまたおさむの写真や動画をピースワンコに送って欲しいなと思っています」

卒業の日、おさむは移動のためクレートに入る際、モフモフしたお尻の毛が、クレートの外にはみ出ていて、スタッフの笑いを誘いました。偶然の出来事ではありますが、長年世話をしてくれたスタッフへ、おさむからの照れ隠しが混じった「お礼」に感じられました。

新たな生活をスタートさせるべく、里親さんの車に乗り、同団体を後にしたおさむ。遠くなる車を見送りながらスタッフは、「6年間も、里親さんが見つからなかったおさむだけど、ついに幸せを掴んで良かった」と思う気持ちと、「でも、少し寂しい」という気持ちが入り混じりました。そして、シニア犬の年齢に達しても、「心温かいパートナーが見つかることがある」といった好例をこの日に体験したことで、他のワンコたちの未来に向け、お世話をし続ける意欲を新たにしました。

おさむ、本当に良かったね。新しい里親さんの元で、いつまでも楽しく元気に過ごしてね!

 ピースワンコ・ジャパン
https://peace-wanko.jp/

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