102歳、一人暮らし 広島で大人気の哲代おばあちゃん 口癖は「上等、上等」 生き方指南本が17万部ベストセラー

松田 義人 松田 義人

「人生100年時代のモデル」として、中国新聞社に密着記事が連載されるやいなや注目を浴びるようになり、テレビにも出演するようになった石井哲代さん(以下、哲代おばあちゃん)。広島弁の優しい言葉は、シニア層にとって、人生100年時代のお手本としてはもちろん、世代を超えて多くの読者の心をがっちりつかみました。

哲代おばあちゃんの「名言」を収録した「102歳、一人暮らし。哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方」(石井哲代 中国新聞社・共著、文藝春秋)は、発売から4カ月ほどで17万部を発行するほどのベストセラーになりました。

小学校の先生をしていた哲代おばあちゃん。同書はその日記スタイルの語りから始まります。

その言葉からは哲代おばあちゃんが暮らす広島県尾道市ののどかな景色が浮かんできますが、人々の心を癒し元気を与えてくれるのが、その言葉です。いくつか抜粋します。

苦労のない人生はつまらんです
正月には早いけど干していた黒豆を炊きました。黒豆は「苦労豆」。苦労しますようにと願って黒豆をいただくんです。苦労することで見えたり感じたりすることもあるでしょう。どう乗り越えようかって考えますもんね。苦労のない人生はつまらんです。なんちゃって。口ばかり達者でございます。

同じことを繰り返す幸せ
毎日、同じようなことの繰り返しじゃけど、それがどれだけ幸せなんかが分かります。101歳を前に、また一つ勉強しました。

「機嫌よく」は自分次第
同じ一生なら機嫌よう生きていかんと損じゃと自分に言い聞かせております。不機嫌になることは捉え方を変えて受け流す。特にこの10年ほどは穏やかに人の話を聞けるようになりました。早う家に戻ってみんなとおしゃべりしたいですなあ。(中略)情けないことも、しんどい思いも全部自分の心です。引きずるのも打ち切るのもやっぱり自分次第ですけんね。自分の心は自分で育てるしかない。いくつになっても切磋琢磨ですな。

「五つの心得」と「五カ条」

哲代おばあちゃん流の「生き方上手になる五つの心得」「私らしくいるための五カ条」も紹介されています。

 【生き方上手になる五つの心得】
一、   物事は表裏一体。良いほうに考える
二、   喜びの表現は大きく
三、   人をよく見て知ろうとする
四、   マイナス感情 笑いに変換
五、   手本になる先輩を見つける

【私らしくいつための五カ条】
一、     自分を丸ごと好きになる
二、     自分のテンポを守る
三、     ひとり時間も大切
四、     口癖は「上等、上等」
五、     何げないことをいとおしむ

 これらに加え、哲代おばあちゃんは以下のようなことも語っています。

 しんどい時があったからこそ、肩が軽うなった今の暮らしが喜びに満ちてるかもしれんなあ。自分で自分を褒めてやらんといけんです。
若い頃のようにちゃっちゃと動けんようになりました。畑に出るにしてもご飯の支度をするにしても、休憩を挟んでちょっとずつエンジンをかけるんです。きのうも昼ご飯を済ませて、さあ畑の出ようと思っていたのに、ようやく腰をあげたのは日が暮れようかという頃じゃったん。へへへ。台所の椅子に座ったまま何をするでもないんじゃけどなあ。自分のテンポってものがあるんです。気の向くままでございます。(中略)
何ごとも、いいように受け取ると気持ちが高揚しますね。102歳になると今まで通りにはできんことも増えてきました。でもできたことを喜ぶ。出来栄えが不細工でも「これで上等、上等」ってなもんです。

手の甲はしわしわでも、ひっくり返せば手のひらはつるつる

人生100年時代といわれる今、老後を前に戦々恐々とした思いを抱くミドル層の人は多いと思いますが、そういった不安を持つ人に明るく背中を押してくれるような哲代おばあちゃんの珠玉の言葉の数々。

それは飛び抜けて新しいものだったり、強い個性を持ったものではないかもしれません。しかし、哲代おばあちゃんの人間らしさに満ちたこの「言葉」たちは、先へ先へと進もうとする人たちに足元を見つめ直させ、そして癒してくれる強い力を持つもののように思いました。

また本書は、哲代おばあちゃんに接し取材を重ねてきた中国新聞社の記者、鈴中直美さん・木ノ元陽子さんの温かい眼差しも随所にかいま見える、強くて優しい一冊のようにも思いました。

担当編集者は「哲代さんは、小学校の先生をされていたこともあり、聡明で、ウイットに富んでいて、サービス精神旺盛です。子どもができなかったりと、102年の人生にはつらいこともあったし、とがっていた時期もあったそうですが、『物事は表裏一体。手の甲はしわしわでも、ひっくり返せば手のひらはつるつるでしょう』と、何ごとも良いほうに考えて、気張らず、飾らず、自分で自分を褒めながら、毎日笑顔で朗らかに過ごされています」

「そんな哲代さんを『人生のお手本にしたい』という声が、地元の広島県民だけでなく、全国の幅広い年齢の方々から次々に届いています。50代で子どもがいない私自身もそうなのですが、将来に不安を感じている人は、ぜひ手に取ってほしいです。哲代さんの笑顔に癒され、元気がもらえて、前向きな気持ちになれるはずです。『高齢になって、近頃あまりご機嫌に過ごせていないかも……』と気にかけている、親や祖父母へのプレゼントとしてもおすすめです」

 

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