「男は嫌われる、オネエに擬態しないと仕事が貰えない」 男性メイクアップアーティストを取り巻く“厳しい環境”が話題に

中将 タカノリ 中将 タカノリ

男性メイクアップアーティストを取り巻く環境がSNS上で大きな注目を集めている。

きっかけになったのは現在、イラスト講師として活躍するダテナオトさん(@datenaoto2012)の「29歳の頃、漫画家辞めて母がやっていたメイクの手伝いを1年ほどしていたのだけれど、『この仕事で食おうかな』と言うと母は『そんな楽なものではない、何よりこの業界は男には厳しい』と言われた 詳しく聞くと『男は嫌われる、オネエに擬態しないと仕事が貰えない』ということだった」という体験談。

ミス日本コンテストのメイク指導もしていたダテさんの母ならではの金言のような忠告。実際、それまでにダテさんが出会ってきた数人の男性アーティストの多くは"擬態オネエ"だったそうだ。女性が圧倒的多数となるメイク業界ならではの同調圧力が存在するのだろうか…ダテさんの投稿に対し、SNSユーザー達からは

「ずっと疑問に感じてた事が一つ解明しました」
「美容師さんも『男はある程度の歳になったら、店長になるしか生き残れない。中年のおじさんに髪を触られるのを、女の人は嫌がる』と言っていました」
「これが『ジェンダー』ってやつのひとつの形というか、『ある性別である事がある場合にある役割を期待される』という話の典型的な表れで、とても面白い話」

など数々の驚きの声や共感の声が寄せられている。

投稿者さんに聞いた

ダテさんに話を聞いた。

ーーお母様からこのお話を聞いた際の感想をあらためて。

ダテ:母が携わっているということもあり、私自身も子供の頃からメイクアップアーティストという仕事に興味、関心がありました。しかし、母にメイクを教えてもらうことをお願いしても、ずっと拒否されていました。

私が漫画家を辞めていろいろな仕事をしていたころ、意を決して母に依頼したのですが、やはり同じ答えでした。結構強く「自分が母の仕事を引き継ぐことができないか」と言ってみましたがそれでもダメ。後からわかったことなのですが、母はこのメイクの仕事を自身だけの、一代で終わらせるつもりだったそうです。

ーーお母様の真意はどこにあったのでしょうか。

ダテ:母の真意を知ることができたのは、ある日皆でお酒を飲んだ時でした。そこで飲みながら理由を聞いたら「この世界に男は入れない。入りたいなら女にならざるをえない」という答えを貰うことができ、そこでようやくある程度合点がいきました。というのも、自分も以前からあの業界は薄々「男の居づらい世界」だというのは気が付いていたからです。こうした仕事は男性にはできない仕事なのかとあらためて感じた、という次第でした。

ーー実際に男性メイクアップアーティストと会ってみて。

ダテ:彼らの仕事中にお会いすると、皆が普通に会話が「オネエ言葉」でした。ところが一対一でお話すると、口ぶりが全く普通に変わってしまう。たとえるなら幼稚園や小学校の先生が子供言葉を意図して使うのに似たりする感じなのかと思いました。ちなみにこうしたメイク業に従事する男性も、プライベートでは皆既婚者だったり彼女が居たりと、普通に男性をしていたという背景があったので、余計に前述した「男性には居づらい」というのを強く感じたわけです。

ーーメイク業界が男性に厳しいと実感されたことは他にもありますか?

ダテ:人によっては、自分が顔を触ろうとすると一瞬表情がこわばる人がいらっしゃいました。ほかにも一瞬身じろぎをする人なども少なからずいたので「ああ、やはりそういうことか」と感じました。私は母と共に、ブライダルメイク専門でしたが、聞くところでは割合としては少ない方だったらしいです。結婚式という状況下で夫も至近距離にいる上に、相手が幸せの絶頂にいたためかと思われます。それでもやはり「え?」っていう顔をする人がいたのは事実です。「男がするの?」という雰囲気を醸す方は結構いらっしゃいました。

ーー今回の反響へのご感想をお聞かせください。

ダテ:この一連の話は1980年代後半から1990年代に自分が子供だった頃から、母に上述の答えを聞いた2006、7年ごろにかけてのエピソードです。当時はそこまで強く意識していませんでした。最近の時局や出来事などを考えるに、「もしかすると拡散するかな?」という意図があってツイートしてみました。昔からメイク業界に在籍している方や、美容師といった関係の方が、今回のツイートに関してつぶやいており、「擬態オネェの存在」はどうやら以前からある程度認識されていたのだなと感じました。

   ◇   ◇

メイク業界ではMtF(男性から女性へ性別移行を望む人)であることを告白しているアーティストも多い。またメイクを受ける圧倒的多数は女性。男性アーテイストがなんらかのやりにくさを感じるとすればそのあたりが原因となるのだろうか。統計的な調査があるわけではないが、長年メイク業界で過ごしたダテさんの母の言葉だけに非常に興味深い。

今回の話題を提供してくれたダテさんは昨年8月に新著「イラスト 光と色彩 解体新書」(マイナビ出版)を出版。また3月25日には主催するオンラインサロン「ダテ式お絵かきゼミ」のリアルイベントが神奈川県茅ケ崎市で開催される。部外参加も可能ということなので、ご興味ある方は公式ホームページのメールフォームかTwitterからお問い合わせいただきたい。

【ダテナオトさんプロフィール】
イラスト講師。マンガ・アニメ・ゲームなどに特化した絵の描き方や、こうした仕事の行い方を教える教室を経営。元漫画家。著作に「イラスト解体新書」28刷 最新作「イラスト 光と色彩 解体新書」。京都芸術大学講師。
▽Twitterアカウント
https://twitter.com/datenaoto2012
▽オンラインサロン「ダテ式お絵かきゼミ」
https://datenaoto.net/course/online-salon/
▽「イラスト 光と色彩 解体新書」
https://amzn.asia/d/gkV1I4b

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