ブリーダーの地下駐車場で育った甲斐犬 人への警戒心が強く体を触られるのが苦手 でも保護団体スタッフはあきらめない

松田 義人 松田 義人

2023年2月下旬。保護犬団体・ココニールに、ボランティア仲間の方から相談がありました。「とあるブリーダーの廃業をきっかけに、波乱万丈を過ごしたワンコがいる。引き取ってくれないか」というものでした。聞けば、保健所に送られる目前にして、短期間に波乱万丈を過ごしたワンコのようでした。その名は、甲斐犬のサラダ(メス・2歳6カ月)。同団体が引き取った当初から今もなお、人間への警戒心がなかなか解けないワンコでした。

ブリーダー廃業→譲渡先から脱走→飼いきれず保健所へ?

サラダが、同団体にやってくるまでの経緯は非常にややこしいのですが、要約すると以下の通りでした。

(1)ブリーダーが廃業。100頭あまりいたワンコ個々の、里親さん募集を自分たちで実施。そのうちの1頭がサラダだった。

(2)しかし、里親さんが見つからないため、ブリーダーの知り合いのボランティアが「犬あげます」と告知を手伝い、里親募集。サラダも一時、ある里親さんに引き取られた。

(3)しかし、人慣れなどのトレーニングもしていないばかりか、ブリーダーの元では地下駐車場で過ごしていたため、明るい場所にも慣れていないサラダ。新しい里親さんの元から脱走。

(4)その後、保護されたサラダだが、里親さんが飼いきれないことを察したブリーダーは、新しい譲渡先を探しつつ、見つからなければ「保健所に連れて行く」と言い出した。

 こんな経緯を経て、同団体が引き取ることになったわけですが、スタッフは怒りと悲しみをこらえきれなかったと言います。

「『かわいい』『かわいそう』といった一時の感情だけで軽はずみに迎えた結果だと思います。サラダは何も悪いことなく、無駄に振り回されただけなのに。サラダ、ごめんね」

ビビリのあまり、少しの動作でおもらし

 

 

こういった経緯から同団体がサラダを引き取った際も、サラダは病院でケージを破壊し、おしっこを撒き散らしながら大暴れ。それでもスタッフは「人間って悪いやつばかりじゃないんだな」とサラダが思ってくれるよう、そしてワンコらしい笑顔を見せてくれるよう、お世話をし続けることにしました。

ただし、頑なに心を閉ざしたサラダのお世話は簡単ではありませんでした。自らの意思での排泄はしない一方、ハーネスを付けようとするとだっぷん。ハーネスをつけ、リードを引いたところでパニックになり大暴れしました。なかなか大変なサラダですが、スタッフはめげないばかりか明るく接します。

「こんなにオシッコやウンチをするワンコは珍しいけど、出ないよりはいいよね(笑)!」と。

第3の犬生を目指して今日もトレーニング中

 

スタッフの明るく優しい姿勢に心を打たれますが、この結果、サラダは少しずつ心を開くようになり、スタッフが体を触れてもビビっての粗相をしなくなりました。さらに、サラダに「お手」などを教えると、わずか数回でマスターするほどの知能があることもわかりました。もともとが相当賢いワンコなだけに、知らないもの・場所・人間への警戒心もそれだけ強いのかもしれません。

そんなサラダ、今ではスタッフに自らすり寄ってくるようになった一方、逆にスタッフからサラダに触れようとすると、すごい勢いで逃げていったり、知らない場所ではビビリのあまり粗相をしてしまうクセも抜けていません。

しかし、それでもスタッフはサラダを懸命にお世話し続け、幸せな第3の犬生を送ってもらうため、新しい里親さんへの譲渡を目指すと言います。

「サラダのお世話やトレーニングは、トレーナーさんに相談しながら教わっています。

もともと地下駐車場で暮らしていたサラダなので、お日さまに当たらないと、セロトニン不足になり、意欲低下・鬱とかになるんじゃないかと心配で、『外慣れ訓練』と称し、1日1回は必ずベランダに出していました。でも、やっぱり相当ビビって嫌がっている様子なので、セロトニンはサプリで補うことにし、違うやり方で、知らない場所に慣れていってもらおうと思っています。

私からサラダの体に触っても、逃げないような楽しいワザを考えなくちゃと思っています。私自身もタッチや手の精度をあげないといけないと思っていますよ(笑)」

サラダの成長記録は、同団体スタッフ・Azuさんのブログで読むことができます。ぜひチェックしてみてください。

Azu Room
https://ameblo.jp/coconeel-azu/

ココニール
https://coconeel.wixsite.com/website

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