「農家が丹精したお米の価値認めて」米屋の挑戦 猫印のキッチンカーで、地元のお米をカレーライスやチャーハンに

渡辺 晴子 渡辺 晴子

埼玉県川越市で米の販売や生産などを営む「ライスセンター金子」代表の金子宏さんが、地元で作った「河越米(かわごえまい)」を炊飯して直接、消費者に食べてもらおうとキッチンカーでの販売を始めました。アメリカのスクールバスを改造したキッチンカーで、河越米を使用したキーマカレーやチャーハンなどを販売しています。

コロナ禍で飲食店やイベント向けなどの業務用の米が売れず、倉庫にずらりと並んだ米袋の写真を2年半ほど前に投稿し、Twitterで話題を集めた金子さん。今年に入りスタートしたキッチンカーによる販売は好調といい、「皆さんのおかげで在庫のお米は売れました! 販売量はコロナ禍の影響も強くいまだに回復はしていませんが、病院や福祉施設、学校、飲食店などの取引の件数が幾分増えております。今後はキッチンカーの販売などを通じて地元の河越米を多くの方々に味わってもらい、農家さんのお米が少しでも高く売れるように頑張りたい」と意気込みを話します。

2020年から米の生産も開始 日本人の米離れに歯止めをかけたい!

金子さんは、先代のお父さまから引き継いだ創業60年余りの老舗米穀店を経営。取り引きをしている農家は、地元の埼玉を中心に全国1000件近くにも上ります。地域農業の意欲的な担い手として市町村から認定を受けた農業者「農業認定者」として、2020年から米の生産も始めて今年で3年目。今回キッチンカーを始めた理由やお米の生産への思いなどを、金子さんに聞きました。

――キッチンカーを始めようと思ったのは?

「自分は小さいころから父親の米屋を手伝っていました。その頃は、まだ農家さんも元気でお米も高く取引されていた時代。今では、後継者不足と高齢化により離農する農家さんが増え、年々その傾向は顕著になってきています。ウクライナ戦争やコロナの影響で、肥料や農薬や機械代何もかもが高騰して農業をやってゆくのは大変リスクが高いのが現状。なおかつ米離れも進み、今では一日に1食くらいしかご飯を食べない人が多いようです。

そこで、まずは直接お客さまに私たちが作ったお米を食べてもらおうと思い立ち、自社の敷地内でキッチンカーを置いて販売を始めてみました」

――お米が売れないと嘆いているだけではなく、地元で生産したブランド「河越米」を実際に食べてもらうと。

「そうです。河越米は川越とその周辺でとれたお米を、農産物検査員の資格を持つ自分が検査を実施。年産、等級、品種名を明記して河越米として販売しています。河越米は、川越のふるさと納税にも使われています」

アメリカのスクールバスを改造 飼い猫「トラ」の顔を似せたキッチンカーが誕生

――キッチンカーはアメリカのスクールバスを改造したとか。

「まず初めにアメリカのスクールバスを見たとき何となくかっこいいなって感じました。バスの改造はキッチンカー専門の業者に頼み、1年以上かかって製作。屋根には飼い猫を模した猫の『トラ』の顔を乗せて後ろには猫のしっぽを描くなど外装を施し『kawagoe tora.s kitchen bus』という店名にしました」

――メニューは河越米を使ったお料理ばかり?

「キーマカレーとチャーハンは、河越米を使用しております。このほか、埼玉県産の地粉を使い毎日手打ちで作った『青竹手打ちラーメン』や地元産のもち米とササゲと雑穀で作ったお赤飯なども提供。手打ちラーメンは埼玉の地粉で作っているので珍しくておいしいって言われますね。カレーや雑穀赤飯もお持ち帰りができるので近くの会社の人が買いに来てくれます!」

水田を拡大して米の生産を増やす 海外輸出も視野

――「認定農業者」として、2020年から始めた米の生産状況はいかがでしょうか。

「現在、2軒の農家さんに協力してもらい、農作業を教えてもらいながら年間を通して種まきや田植え、稲刈りをしています。特に川越は高速道路のアクセスが便利な土地柄で都心にも近く人口の多い町。弊社の周りは水田が広がっています。

将来は認定農業者の利点を生かし、弊社の敷地面積が600坪の土地でさらにお米の生産を増やす予定。たくさん生産して将来的には海外にも輸出できるようにしたいです。

また、耕作放棄地が増え社会問題になっています。その問題解決に向け、お米の生産だけでなく放棄された耕地を使って野菜や果物なども生産をしてキッチンカー事業だけでなく農家レストランも計画中です。地域の雇用促進と、車いすなどでも作業ができる環境を整備し、若い人たちが農業に魅力を感じて参加しやすくしたいと思っています」

――今後キッチンカーの販売はどうなる?

「フランス車のシトロエンを改造したキッチンカーや大型トラックを改装した巨大なキッチンカーなどを登場させる予定です。キッチンカーで手軽に食事を楽しんでもらい、若い人たちを含め日本人の米離れ問題を少しでも解消したいと考えています。さらに地産地消を推進し、地元の農業を発展させて川越の農業を応援したいです!」

キッチンカーの販売場所は小江戸市場カネヒロ敷地内(埼玉県川越市大中居467−1)。
営業時間は、月曜から金曜まで正午から午後7時まで。問い合わせは、電話049-230-4153へ。

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