月経痛に悩む女性たちへ 低用量ピルで劇的に痛みが改善 漢方薬を処方することも

ドクター備忘録

川口 惠子 川口 惠子

初潮の平均年齢は12歳頃、閉経の平均年齢は50.5歳ごろと言われており、多くの女性は約40年間月経と付き合っていくことになります。月経時に多少下腹が痛くなるのはほとんどの女性にみられることですが、痛みが強くて仕事や勉学に支障をきたすようになると問題です。

月経痛には子宮内膜症や子宮筋腫といった病気によって起こる器質性月経困難症とそのような疾患のない機能性月経困難症があります。機能性月経困難症は若い方に多く、器質性月経困難症は30代から40代に多いのですが、10代後半でも若年性子宮内膜症の人もいるので注意が必要です。

月経痛がひどくて医療機関を受診すると、まず超音波検査などで子宮筋腫や内膜症がないかチェックをされ、これといった異常がなければ機能性月経困難症ということになります。異常がないと言われても痛いのは辛いので何とかしなければなりません。

まず月経痛のひどい人は冷え性で血流の悪い人やストレスを抱えている人が多いのです。適度に運動をする、ゆっくり入浴する、趣味や楽しいことをして気分転換するなど日常生活の工夫も有効です。それでも痛い時は鎮痛剤を服用します。鎮痛剤でも効果不充分な時は低用量ピルを服用するとほとんどの方は劇的に痛みが軽くなり、出血量も減少します。ピルを服用すると血栓症などの副作用を心配される方が多いですが、若い方では血栓症の確率はとても低いので医師と相談して適切なピルを選ばれたら良いと思います。

大学受験を控えた高校3年生

Yさんは高校3年生です。1年前から月経痛がひどくなり痛み止めを飲んでも効かない時もあり、勉強に集中できなくなりました。お母さまと一緒にクリニックに来られたのは9月でした。来春には大学受験もあるのに、月経のない男子学生と競わなければならないのはひどいハンディだ、と怒っています。

私は彼女に低用量ピルを勧めました。「副作用は大丈夫なんですか」と心配されるお母さまにあまり心配はない事を説明し、9月からピルを飲むのはとてもいいことだと伝えました。ピルは人によっては慣れるのに1~2カ月かかるので入試直前からスタートするのはお勧めしません。

Yさんはピルを開始し2カ月もすると月経痛はほとんどなくなり勉強に専心し見事第一志望校に合格しました。大学は東京にあり、一人暮らしが始まり環境が激変するので落ち着くまでこのままピルを服用する予定です。

クラシックバレエに打ち込む中学生

S子さんは13歳の中学2年生です。小学校6年生で初潮があり、最初は痛みなど全く無かったのですが2年生になってから月経痛がひどくなってきました。鎮痛剤を飲んでも一時的に良くなるけれど直ぐにまた痛くなってきます。月経中は時々スーっと気が遠くなるような感じもします。

S子さんは熱心にクラシックバレエを習っていますがお腹が痛くてレッスンに集中できません。バレエの先生はとても厳しくてS子さんはつらい思いをしています。お母さまは「ピルを飲んだら楽になりますか」と言われましたが私はお勧めしませんでした。

S子さんは13歳でまだ身長が伸びているのです。ホルモン剤は骨の成長を止める作用がありできれば他の方法が良いと思いました。私は彼女に当帰建中湯という漢方薬を勧めました。子供さんの中には漢方の粉末はとても飲めないという方もいますが、彼女は嫌がらずに飲んでくれました。

1カ月後には痛みは半分くらいになり、2~3カ月後には時々鎮痛剤を飲めば支障なくバレエのレッスンができるようになりました。次の発表会には主役をやれるかもしれないとS子さんは張り切っています。当帰建中湯は虚弱な若い女性の月経痛に効く漢方薬で、月経痛の他に体を丈夫にする作用がある二千年も前から使用されている薬です。

ピルも漢方薬も色々な種類がありますからそれぞれのニーズに合ったものを探せばよいと思います。月経痛のひどい方は医師に相談されてはいかがでしょう。

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