“池袋”級の巨大ターミナルは、実は「目白」にできるはずだった? JR山手線・乗り換えできない「単独駅」に意外な歴史

糸川 憬 糸川 憬

日本の首都・東京にぐるりと円を描きながら走る鉄道、JR山手線。2021年・JR東日本エリアの乗車人員ベスト3には、新宿駅(1位)と池袋駅(2位)がラインクイン。他にも、全30駅中6駅(前述の2駅と合わせると8駅)がベスト10入りしている、東京を代表する路線といえます。

このようにターミナル駅をいくつももつJR山手線ですが、30駅中2駅だけ、JR線・他社線ともに接続していない駅があります。さて、いったいどの駅でしょうか。

正解は、目白駅と新大久保駅です。

今回は、JR山手線の中でも珍しい2つの駅の周辺を歩きながら、なぜその2つの駅が「単独駅」=どの路線・駅にも接続していない「ひとりぼっちの駅」になったのか、探ります。 

本当はターミナル駅になるはずだった「目白駅」

JR池袋駅とJR高田馬場駅の間にある、目白駅。

西武池袋線・椎名町駅-池袋駅を走行中に、その特徴的な駅舎を見ることができます。

徒歩圏内にある路線・駅として、西武池袋線・椎名町駅(約1.4km)、都電荒川線・鬼子母神停留所(約1.0km)、東京メトロ副都心線・雑司が谷駅(約0.8km)、西武新宿線・下落合駅(約1.8km)などがあります。

ただ、西武池袋線も東京メトロ副都心線も池袋駅を通っているので、乗換駅としては現実的ではありません。また、西武新宿線は高田馬場駅や西武新宿駅を通っているので、下落合駅も同じく現実的な乗換駅とはいえないでしょう。

目白駅の前身は1885(明治18)年に開業した、当時の日本鉄道・目白停車場。豊島区史編纂委員会編纂『豊島区史 通史編二』によれば、近隣の村による設置願が提出されたことによってできたのだそうです。周辺の村の生産品である繭や生糸を出荷するために使いたいというのが大きな理由でした。その後、目白-田端間に「豊島線」を建設する計画が立てられましたが、目白駅周辺の住民から反対があったことや、駅の拡張が困難だったことから、目白-板橋間に池袋駅を設置して分岐駅とするようにしたそうです。

その後の池袋駅周辺の発展は前述の通り。JR東日本エリアの乗車人員第2位に輝き、私鉄・メトロなどとも乗り換えができる駅として、成長しました。

もし計画通りに鉄道の建設が進められていたら、目白駅と池袋駅の役割はそれぞれ今とまた違ったものになっていたのかもしれませんね。

さて、東京メトロ・雑司が谷駅まで歩いたのち、副都心線で東新宿駅へ。徒歩で新大久保駅を目指します。

「新大久保駅」に「新」が付いている理由は…

JR新大久保駅は、JR新宿駅とJR高田馬場駅の間にある駅です。

徒歩圏内にある路線・駅として、JR中央線・大久保駅(約0.35km)、都営大江戸線・東新宿駅(約0.75km)などがありますが、いずれの路線も新宿駅を通っているため、乗り換える人は少ないと考えられます。

山手線の駅間距離は1km以内のところも多く、新宿駅‐新大久保駅間は1.3km、新大久保駅-高田馬場駅間は1.4kmと、比較的駅間距離の長い場所であるともいえます。

新大久保駅の開業は、1914(大正3)年。一方、大久保駅の開業は新大久保駅開業の19年前、1895(明治28)年です。

今でこそそれぞれ「JR山手線」「JR中央線」の駅として知られている両駅ですが、新大久保駅は「日本鉄道」として、大久保駅は「甲武鉄道会社」という私鉄線として開業しました。

現在のJRの前身が「日本国有鉄道」であることはご承知かと思いますが、鉄道というライフラインが、1906(明治39)年に「鉄道国有法」の公布をもって国有化される前は私鉄だったことを、意外に思われる方もいるのではないでしょうか。

日本鉄道品川線開通時(1885年3月1日)に開業した新宿駅と、ほどなく開業(1885年3月16日)した目白駅ですが、その間にあるのは新大久保駅と高田馬場駅の2駅。高田馬場駅は1910(明治43)年開業です。新大久保駅がない場合、新宿駅-高田馬場駅間は約2.7kmとなることから、利便性を考慮して開業したと考えられそうです。

単独駅は意外に多い

路線図を眺めてみると、意外に多い「単独駅」。今回はJR山手線の単独駅を取り上げましたが、網の目のように張り巡らされた東京の鉄道網にも単独駅は複数あります。みなさんがお住まいの地域はいかがでしょうか?降りてみると、意外な発見があるかもしれませんよ。

   ◇   ◇

【参考資料】

▽各駅の乗車人員 2021年度 ベスト100|企業サイト:JR東日本
https://www.jreast.co.jp/passenger/
▽豊島区史_既刊区史_豊島区史通史編二(としまひすとりぃ)
https://adeac.jp/toshima-history/top/topg/06kikankushi/index.html
▽季刊むさしの ナンバー106 2014年春号|武蔵野市公式ホームページhttps://www.city.musashino.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/001/818/106_010-011_history.pdf
▽日本鉄道史 | 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/000218983.pdf
▽明治39年(1906)3月|鉄道国有法が制定される:日本のあゆみ
https://www.archives.go.jp/ayumi/kobetsu/m39_1906_01.html
▽小林祐一『山手線 駅と町の歴史探訪 - 29駅途中下車 地形と歴史の謎を解く』(交通新聞社新書,2016)

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