もし先輩が保護しなかったら・・・
しらすくん(生後7カ月・オス)は、民家の裏の畑で鳴いていた。その家の住人が見に行ってみると、しらすくんがいた。周りに母猫の姿が見当たらなかったので、保護して1カ月ほど里親を探したが、飼える人が見つからなかった。自身でも飼えないので、保護センターに連れて行こうと思っていたそうだ。
2022年8月末、新潟県に住むTさんは、猫好きの友人と話していた時に、たまたましらすくんの話を聞いた。保護した人は偶然にもTさんの先輩だった。
「慌てて先輩に連絡して、保護センターに連れて行くのを待ってもらいました。写真を送ってもらったら真っ白な可愛い猫でした。白猫は目立つから外敵に狙われやすく、もし先輩が保護してくれなかったら、あるいは保護するのがもう少しでも遅れたら、カラスに突かれて亡くなっていたかもしれない。そう思うと涙が出そうになりました。よければ私が迎えますと言って、お迎えの準備をしました」
運命の出会い
Tさんは結婚前、実家で猫を飼っていた。歴代猫の数は合計6匹。みんな捨て猫や母猫とはぐれてしまった猫だった。Tさんは実家を出た後も、頻繁に猫たちに会うために帰省していたという。
「自分の家で猫を飼いたいと思いましたが、猫を飼う時は“運命”がある。然るべきタイミングに出会うべくして出会うものだと思っていました。実家の猫たちもみんな運命的な出会いでした」
しらすくんの話を聞いた時、Tさんは「これは間違いなく運命だ」と思ったという。
「どんな猫でもうちで保護しようと思いました」
私の寿命が短くなってもいい
9月6日、Tさんはしらすくんを迎えに行った。生後3カ月になっていた。全く怖がる様子もなく、おとなしく抱かれていた。家に着いてキャリーを開けると、すんなり出てきてすぐにおもちゃで遊び始めた。
「ケージに入ると小さく伏せて、我に返ったように、『ここはどこだろう』というような表情で、じーっと見つめてきました」
翌日は病院に行き、ノミの駆除薬や結膜炎の目薬をもらった。ごはんもよく食べ、うんちもしっかり出して元気そうだった。Tさんは、「大きくなれよ〜」と思って過ごしていた。
するとある朝、しらすくんが部屋の隅で伏せていて、Tさんは何か違和感を覚えた。夕方に帰宅すると、ごはんが減っていない。夜には3回吐いて、下痢もした。結膜炎が悪化して目が真っ赤だった。翌朝病院に連れて行くと、注射や点滴をして目薬を出してくれた。数日間病院に通ったが、一向に良くならない。食べられず、どんどん痩せていくしらすくん…。
「私の寿命が短くなってもいいから、頼むから生きてくれと毎日願いました。すると、朝、トイレ掃除をしていた時に糸のようなものを見つけたのです。病院で確認してもらうと寄生虫でした。その後、抗生剤や駆除薬を処方してもらい、徐々に回復しました。きっと私の寿命は十数年短くなったでしょう(笑)」
甘えん坊のストーカー
しらすくんは甘える時にTさんの指をチュパチュパしゃぶって、エアーふみふみする。実家の猫でも、チュパチュパふみふみする子はいたが、みんな毛布にしていたのでTさんは最初驚いた。かなりのストーカーなので、Tさんがリビングから出ると、ドアの前で待っている。出先から帰宅した時も必ず出迎えてくれるという。
「ダッシュで家の中に入っても、しらすのお出迎えの速さには勝てません(笑)まだ7カ月の子猫ですが、チュパチュパもストーカーも、大人になってもずっと続けてくれたら嬉しいです」