激シブな学習帳が誕生、神戸ノートと産業遺産がコラボ 愛にあふれた日本最初の河川トンネル情報も

脈 脈子 脈 脈子

 学習帳。それは、その響きだけで、向かうところ敵なし状態だった小学生時代の記憶を鮮やかに甦らせてくれる魅惑的な言葉。先生にバレないよう、昆虫や植物の写真が載った表紙の裏に落書きをしたり、端をちぎって友達にちいさな手紙を書いたりはしなかっただろうか。あるいは、テストで間違えた漢字を何ページも書き取りさせられ、泣きたくなったり。他でもない、筆者の記憶である。

 誰しもが、学習帳にまつわる思い出のひとつやふたつ、きっとあるだろう。そんな学習帳エピソードに想いをはせる大人たちの心をくすぐる、シブすぎる学習帳が兵庫県神戸市で誕生した。

その名は、湊川隧道学習帳

 そもそも神戸の学習帳事情はちょっと特殊である。昔から神戸の子どもたちは「神戸ノート」と呼ばれる学習帳を使うのがあたり前になっているという。神戸ノートは、今から71年前の1952年に誕生。戦後復興のまっただ中にあり、物資が不足していた時代だった。

 「未来をになう子どもたちに良質な文房具を低価格で提供したい」との思いから関西ノート株式会社(神戸市長田区)と、市内にある公立小学校の先生たちが協同開発した。

 商品の正式名称は「関西ノート学習帳」だが、発売時に「神戸ノート」の愛称が付けられ、以来、世代を超えて親しまれている。それこそ、昆虫や植物の写真が印象的な、あのノートを使っていたのは転校生だけだったと、自身が小学生だった当時を振り返るのは、神戸市で生まれ育ち、今も市内に住む前畑温子さん。湊川隧道(ずいどう)学習帳の発案者で、日本初の河川トンネルである湊川隧道の素晴らしさを伝えたいと活動する「湊川隧道部」(以下、隧道部)の部長を務めている。

 「神戸ノートがめっちゃ好きなんです。小さい頃から数え切れないくらい使ってきました。関西ノートさんがいろいろコラボ商品を出しているのは知っていたので、いつかコラボしたいと思い続けたのが叶いました」と話す前畑さん。隧道部でグッズを作ろうと企画が出た際に、ノートのアイデアを提案。部員の西島陽子さんと佐藤典和さんとともに、関西ノートとのオリジナルノートづくりがはじまった。

細部まで隧道部オリジナル

 湊川隧道学習帳は書き込みをするノート部分以外、つまり表紙と裏表紙それぞれの見返しという限られたスペースの中に、コンパクトながら充実した情報が詰め込まれている。「湊川隧道とはいったい何なのか?」の基本情報はもちろん、湊川隧道と並んであげられる「神戸三大土木事業」についてもイラスト付きで説明されている。さらに、入り口から普段は人が立ち入ることができないエリアも含めた姿が、写真とイラストで詳しく図解されていて見ごたえがある。

 イラストを描いたのは部員の佐藤さん。絵を誰かに習ったことはなく、昔から細かい描写をするのが好きで、よく描いていたという。以前からパンフレットなどに佐藤さんが描いた挿絵を見ていて、湊川隧道学習帳にすごく合うと確信した西島さん。佐藤さんの絵について「こういうテイストの味がある絵を描ける人って、意外といない」と話す。

 部員とともにノートづくりに携わったのは関西ノートの大河社長。「日本最初の河川トンネルという近代化産業遺産とのコラボということで、非常に興味深くお手伝いさせていただきました。表紙に使用した旧隧道の写真と裏表紙の新隧道の写真とで色味や雰囲気がかなり違ったため、単色のモノトーン加工での色出しにやや苦労しましたが、旧隧道のノスタルジックな雰囲気と新隧道の近代的な雰囲気を出せたのではないかと手前みそながら思っています」と、制作秘話を明かした。

 湊川隧道は阪神・淡路大震災で被災したため、2000年に完成した「新湊川トンネル」にその役目を受け継ぎ、現在は産業遺産として地域で大切にされている。役目を終えた遺産のノスタルジーと、バトンを受け継いだ現役トンネルのたのもしさ。それぞれの味を、黄一色のモノトーンでうまく表現できた、というのだが、この単色のモノトーンに加工された神戸の名所をうつした写真に、ノートの名前が威風堂々と明朝体で書かれた表紙が神戸ノートらしさ。そのスタイルは、湊川隧道学習帳にもしっかり受け継がれている。

オリジナルグッズ開発は今後も

 湊川隧道学習帳は、昨年12月に開催されたイベント「湊川隧道カフェ」で初お目見え。そこで購入し実際に使用しているという30代の女性からは「久しぶりに神戸ノートを使えて、とても楽しいし、湊川隧道についてとても勉強になった。横罫線のものや、方眼がもっと小さいものなどバリエーションがあると嬉しい」との感想が寄せられたという。神戸の子どもたちとともに歩んできた神戸ノートは、今や大人をも魅了するノートへと進化した。

 隧道部では湊川隧道学習帳だけでなく、地元の飲食店と協力し、生チョコレートやカレー、コーヒー、ほうじ茶といったオリジナル商品も開発。どれも湊川隧道の特徴をとらえ、オリジナルキャラクターの「湊川隧道くん」が随所で活躍していて、つぶらな瞳に母性をくすぐられる。これらのグッズは今後もイベントで販売するといい、3月18日(土)には前回好評だった「湊川隧道カフェ」がマルシン市場(神戸市兵庫区)で開催予定。

 また、オンラインでも湊川隧道学習帳をはじめ、一部のグッズを販売予定とのこと。オンラインショップでの販売開始や今後のイベントなどは隧道部の公式サイトで案内される。

◇ ◇

「湊川隧道学習帳」
価格:300円(税込)

▼公式サイト
https://minatogawazuido-bu.jp/

▼湊川隧道カフェ
日時:2023/3/18(土) 10:00〜
場所:マルシン市場内「marushin47よんなな」
兵庫県神戸市兵庫区東山町2-3

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