「シャー!」と言われても懐かなくても…歌舞伎町で生き抜いた「元野良猫」との暮らしは「最高だよ!」ノロケみたいな保護猫と飼い主の話

はやかわ リュウ はやかわ リュウ

考えが違うのは当たり前。だから「頭を下げる」のも命を守る手段

地域の保護猫ボランティアの方の話によると、たにゃちゃんは今から十数年前に歌舞伎町で一斉に行われたTNR活動の際に確認された野良猫(桜猫)の1匹なのだという。野良猫や地域猫に対し、理解のある人もいれば、そうじゃない人もいる。たにゃちゃんが駐車場暮らしだった頃、その小さな命を守りたい一心から、たにゃパパさんはある行動を起こす。

「地域猫のご近所トラブルは色々聞きます。仕方ないと思います。百人いたら百人、考えが違いますからね。たにゃがいた場所は幸い、関係者以外立ち入れない施錠付きの駐車場でしたので、トラブルはありませんでした。ただ、すごい勢いで駐車場に入ってくるトラックのお兄ちゃんがいたんです。ま、怖めの(笑)。しかも自分の残飯や菓子パンとかを猫にあげちゃうし。

思わず、『危ねーだろ、ゆっくり走れよ、猫いるんだよ!』って言いそうになったけど、『ごめん、俺ここでさ、白い猫見てて。急いでるのはわかるんだけど、びっくりしちゃうからさ、少しゆっくり入ってくれたら助かるんです。年甲斐もなく猫が可愛くて』と、頭下げて言ったら、『あ、わかりました。ごめんね~』って。で、そのお兄ちゃん、工事現場の朝礼で言ってくれたんです。借りてる駐車場に猫がいるからゆっくり入るようにって。それからはドライバーさんたちみんなで見守ってくれて。やっぱりぶつかるのは良くないっていうか。頭をひたすら下げるのも命を守るひとつの手段なんだと思います」(たにゃさん)

自分のペースで好きにやっていいよ

野良時代、ゴミを漁っていただけでなく、たにゃちゃんは泥水を飲んで生き延びていた。暖かく安全な部屋で暮らし、毎日新鮮なごはんと清潔な水を飲めるようになった今、たにゃちゃんは何が好きで、どんなものに「シャー!」と拒否をするのだろうか?

「野良時代にだいたい好き嫌いは把握していました。野良時代はカロリーが必要でしたから、ジャンク的でしたが、家猫になってからは少しプレミアムフードを混ぜつつ、無添加のものを増やしています。でもやはり野良時代食べていたものが好きみたいで…。フィリックスのゼリー、シーバ、そして、もちろんちゅ~るが大好物です(笑)」(たにゃさん)

楽しみなはずのごはんの準備中にも、「シャー!」っと威嚇してしまうたにゃちゃん。だが、それでいいよ、好きにやりな、と語るたにゃパパさん。しかし、ひとつだけ心配なことがあると言う。

「災害や病気の時、触れないから困るな、とは思います。その時だけ、なんだかお腹痛いニャ…って感じで、足元に来てくれたらいいよ、あとは自分のペースで勝手にやりな、って思ってます。男同士ですしね」(たにゃさん)

やっと出会えた「家族」

多くのリプライの中には、「6年間あいさつがシャーでした(笑)。7年目には触れるようになりました」「いつか慣れてナデナデモフモフするのが夢です。抱っこできようものなら目から汗が出るかもしれません」という、先輩猫飼いさんたちからの経験談や共感の声も寄せられた。

懐かなくても、わがままでも、安心してそこにいてくれるだけで嬉しい。ずっと孤独や不安と戦ってきた元野良猫が手に入れたのは、そんな風にすべてを受け止め見守ってくれる大切な家族だった。

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