3月に東京、4月から5月に大阪で上演される、劇団☆新感線43周年興行・春公演『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』。激しい嫉妬にかられ、破滅へと突き進む男・亜牟蘭オセロを演じるのが、元V6のメンバーで数多くの舞台に出演する三宅健だ。1月13日に大阪市内で取材会がおこなわれ、主演の三宅と、劇団主宰・演出のいのうえひでのりが作品について語った。
本作はシェイクスピアの四大悲劇のひとつ「オセロー」を、青木豪が日本の任侠悲喜劇として翻案した『港町純情オセロ』(2011年)の再演だが、物語の時代や、橋本じゅんが初演で演じたオセロ役の設定などが多少変更されている。
いのうえは、「オセロをはめていくイアーゴ的なところの役を女性の高田聖子が演じるのが今回のウリで、そこに絡むオセロは真っすぐな男がいいな、というところで、三宅くんにお願いしました。時代は、前回の戦前から、1950年代の高度成長期になっていて、夢があり元気だった頃の日本に対するラブレターのような想いもドラマに乗せています」と作品の狙いを語る。
劇団☆新感線に初参加の三宅は、「新感線の公演は何度も観てきましたし、いつかは出たいと思っていたので率直に嬉しいです。いのうえさんは劇場でのほか、よく散歩している姿をお見掛けし(笑)、僕の芝居も何度も観に来てくださっていたので、いつかご一緒できたらなと思っていました」と、リラックスした様子で打ち明ける。
物語の舞台は関西の港町。ブラジルの血を引く若頭筆頭のオセロは、若頭補佐の汐見丈(寺西拓人)とシマを広げてきたが、町医者の娘・村坂モナ(松井玲奈)に惚れて、カタギになることを決意。「オセロを二代目組長に」と考えていた先代組長の未亡人・アイ子(高田聖子)の恨みを買ってしまう。
三宅は自身の役柄について、「とても純粋な人だけど、真っすぐ過ぎるがゆえに妄想も過ぎる。アイ子に色々騙され、乗せられて、変な想像を膨らませ、良からぬ方向へ進んでいきます。こういうぶっ飛んだキャラクターはやったことがないし、この物語だからこそ発せられる台詞もたくさんあるので、楽しみながら演じたいです」と話し、自身との共通点を聞かれると、「僕自身も真っすぐなタイプの人間。自分で言うのもなんですが、純粋なので!」と言うと、いのうえも大笑い。
そのオセロの台詞となる関西弁には初挑戦の三宅。「橋本じゅんさん主演の前回の映像を観たのですが、関西の設定になっているのがひとつのミソだと思いました。関西弁でシェイクスピアをやることで、より見えてくるものがあるのではと。東京で1か月公演するなかでさらに関西弁を体に馴染ませて、ちゃんと喋れるようになれたらいいなと。今は関西の人に電話をしまくっていて、昨日はトミーズ雅さん、その前は(笑福亭)鶴瓶さんに電話しました」。
いのうえも、「普通に標準語でやるよりも、関西弁のほうが笑えて泣ける空気があると思う。青木くんが巧いこと書いていて、前回も手応えがあったし、今回は(高田)聖子がイアーゴ的なところになるのが面白いアイデア。その物語に健くんがハマり、間違った方向に悲劇が進んでいくのが楽しみです。シェイクスピアならではの難しい名前や背景、土地なども、翻案したほうがわかりやすく、お芝居を観始めた人にも親切だなと思います」と、期待を込めて語った。
本作は劇団のどのシリーズにも当てはまらず、「ポイントポイントで歌や踊りはあるけれど、それがウリではなく、どちらかというと会話劇」といのうえ。そんな作品に向かう三宅に、いつも芝居で大切にしていることを聞いてみた。「やっぱりちゃんと心でお芝居をしたい。本番では何も考えずにそこにいられるように。目の前にいる相手役や、起きていく事件、出来事に、リアルに反応できることが一番の理想です」。
新感線らしいエネルギッシュな関西弁の舞台に、初参加となる三宅の演技がどういう化学反応をもたらすのか、大いに期待したい。
『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』は、2023年3月10日~28日に東京建物 Brillia HALL、4月13日~5 月1日にCOOL JAPAN PARK OSAKA WWホールで上演される。
公式HP:http://www.vi-shinkansen.co.jp/othello2023/