「鉄爺友と会う」編の#2で紹介したYouTube公式チャンネル「掛布雅之の憧球」の収録が12月8日に行われた、場所は大阪・堀江の鉄板焼き店。その個室を借り切っているという連絡があった。
その電話の中でまず確認したのは、「どんな格好で行けばよいか」ということと、トークの際の言葉遣いはどうすればよいか、という2点だった。
掛布さんの返事は即答、明瞭だった。「服装はジャケット、ノーネクタイ。言葉遣いはふだんのため口で」。
チャンネルスタートから半年。飲食店舞台で、しかも途中からはビールを飲み、食事をしながらという設定は初めてのことだという。これまではプロ野球界のスター選手を招いての展開がほとんどだったが、今回はガラッと趣向を変えて、かつての阪神担当記者、いわゆるトラ番記者を招いて、グラウンドから離れた裏話を語り合おうという企画だからそれはそれでよし。
YouTube収録の現場というのは初めての体験だった。鉄板焼き店の奥まった場所にある掘りごたつ席が用意されており、テーブルに向けて照明のスタンドと、1台のカメラ、1台のスマホカメラが据えられていた。同じ収録といっても、サンテレビで経験してきたスタジオでの収録の様子を思えば別世界の話。別世界といえば、そのカメラの前に自らが座るという経験もまた然り。
予定している収録時間は2時間と聞かされる。1回の配信時間は10~15分が目安とのことで、今回の収録で最低でも6話分、話の内容によっては10話分ぐらいにまとめたいのだという。
手渡されたA3用紙の進行メモには、事前にこちらから送った情報をベースにした項目が、老眼鏡をかけても読めないほどの小さな文字でギッシリ詰まっている。「店の席は時間無制限で借りてあります。時間は気にせず、思う存分に語り合ってください」と肩の力を揉みほぐされて収録が始まった。
まずは掛布さんからスポーツ報知OBの世良直さんと、デイリースポーツOBの私、いわゆるトラ番記者としてのつきあい、掛布会を通しての40年を超える仲が紹介される。そういう関係の3人なので、肩肘張らず、ふだんどおりの相手の呼び方、話し方での進行になります、というユーザー向けのお断りも加えられた。
想定はしていたが、そのきっかけさえ作られれば、後の話の転がりは放っておいても縦横無尽、自由自在。脱線あり、編集段階で削除必至の個人名トークありで、アッという間に予定の時間を大幅に超える3時間半が過ぎていった。
この3人の付き合いが始まってから45年。掛布会が発足してからでも34年が経つ。その間に共にした時間の長さを考えると、いまさら初めて耳にするような話などないはず、とタカをくくっていたが、面白いことに3人それぞれが、聞き手ふたりをして「え~、そんな話初めて聞いたよ」という秘話を披露し、目を丸くさせた。
1時間が過ぎたころからはビールと料理が運ばれ、ますますテンションが高まっていく。果たしてこの言いたい放題がどうまとめられ、編集されて「掛布雅之の憧球」の一つのシリーズに仕上がっていくのか。
そんな楽しみを吹き飛ばすような電話が掛布さんからかかってきたのは年の瀬も押し迫った12月28日のことだった…。