「成人しても母親を悩ます子ども」について、親子関係心理学の専門家の三凛さとしさんは以下のように解説しています。
▽なぜ、こんな傾向が出るのか?
【1:親と同じことをやってしまっている】
心理学や精神医学の権威エリックバーンは「子どもは親のテープレコーダーだ」という言葉を残しています。これは、子どもにとって親は一番身近な見本であり、親の言動や生き様をデフォルトとして取り入れるという意味です。
両親との関係において傷つけられたり苦しめられたりした人は、自分が親になった時に自分の親と同じような姿勢で(つまり親のテープレコーダーになって)子どもに接してしまい、負の連鎖が起きやすいということが今回のアンケート結果にも表れています。育ち方は、育て方の雛形と言えるのかもしれません。
【2:自分自身が両親から「愛されなかった」と感じているから、その表現方法がわからない】
親から愛情を十分に注いでもらえなかったと感じる人は、自分自身が満たされていないまま、また健全な愛情表現がわからないまま大人になります。そもそも自分自身が満たされていないと、他者に健全な愛情を注ぐような心の余裕も持てないですよね。自分自身の親との関係で満たされなかった心の傷が、自分の子育てにも影響してしまうということです。
過干渉、ネグレクト、またそこまでいかなかったとしても「気持ちを無視した強制」を受けた子どもは、親への復讐として不幸を選ぶようにもなります。幸せになってしまったり成功してしまったりしてしまうと「自分の親の教育は正しかった」ということになってしまうからです。それが、引きこもりや定職に就かない、人生をサボタージュ(破壊)してしまう行為に繋がるというような背景もこの調査結果からは垣間見えます。
▽成人した子どもについての悩みはどうすれば乗り越えられる?
【1:子どもの人生と自分の人生を切り分ける】
子どもが成人した後も子どもの人生について悩む方の多くは、子離れができていません。どこか「子どもの人生は私の人生」だと思っている方が多いです。
しかし、世界に目を向けてみると、「子どもの人生は私の人生」だと捉える文化の方が稀で、特に欧米では理解されない考え方です。子どもが成人してもどこかで「この子の人生の責任は、親である自分にある」と信じて生活していると、言動の随所からそれが子どもにも伝わります。
子どもも「自分の人生の責任は、親にある」という意識を持ってしまい、自分の人生の責任を自分で取れない人になってしまいます。親の方が「本人の人生の責任は、本人にしか取れない」ということに気づくと日頃の接し方も変わり、子どもは本当の意味で自立していくようになります。
【2:本当の意味で信じる】
子どもが成人してもまだ子どもの人生についてヤキモキする根本的な理由は、子どものことを心から信じられていないからです。この子はきっと自立できない、生き方が危なっかしい、この子は無力だというように、親が子どものポテンシャルを100%信じられていないから悩むわけです。
自分の子どもを心底信じられていないというのは、必ず子どもにも伝わります。それこそ、子どもが成人する前の子育て中も、ずっとそれが言動の端々から伝わっていたはずです。親から信じられていないと子どもは自己肯定感を高く保てず、親の信念通り「自分は無力な存在だ」という自己イメージを持つことになります。今日からでも、自分自身の子どもの人生を心底信じてみてください。すると、子どもへの声かけや態度も変わり、子どもの意識も徐々に変わっていくはずです。
【3:親自身がイキイキと幸せに生きる】
「子どもは親のテープレコーダー」なので、親が人生に遠慮して小さくまとまろうとすると、子どもはその背中を見て同じように人生に遠慮し、パッとしない「我慢の人生」を送るようになります。
実際私も、親が不幸せそうに苦労している姿を見て育った子ども時代は「人生ってそんなもんなんだ。期待できないな」と感じていたものです。しかしそのあと、親が自分の好きなことや熱中できることを見つけて幸せに生きはじめた頃から「人生って楽しいものなのかも?前向きにチャレンジすれば、道は開けるものなのかもしれない」という人生観に変わっていきました。親自身がやりたいことを我慢せず、楽しく幸せに生きる姿を背中で見せることで、子どもも必ずそれを真似して前向きに生きるようになります。
◆三凛さとし(さんりん・さとし)ライフコーチ。親子関係心理学の専門家。米NY州立大学卒業。
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【出典】
▽合同会社serendipity調べ