主演映画、ドラマ、フォトエッセイ…ブレイク女優・岸井ゆきの 原点はドラえもん、海援隊、チャゲアス

石井 隼人 石井 隼人

まさに、三十にして立つ。30代に突入した今年2022年は12月16日公開の主演映画『ケイコ 目を澄ませて』を含めて5作品の出演映画が公開され、レギュラー出演したTBS系連続ドラマ『アトムの童』も話題に。さらに初のフォトエッセイ『余白』も上梓した。今年の岸井ゆきの(30)は、向かうところ敵なしの無双状態だった。

朝ドラで強烈な大阪体感

お茶の間にその顔と名前が広く浸透したのは、2018年~2019年放送の朝ドラ『まんぷく』での香田タカ役。福子(安藤サクラ)の姪で、初登場時の年齢設定は14歳。当時26歳の岸井のベビーフェイスも相まって、その馴染みぶりはSNSを大いに沸かせた。そこから一気に“朝ドラ女優”との冠がついた。

「朝ドラの反響は肌で感じました。撮影地の大阪では色々な方から『タカちゃん!』と声をかけていただきました。東京とは違って大阪の方々のフレンドリーさは強烈。声をかけてくれた方がほかの通行人に『あんた朝ドラ見てる?この子タカちゃんよ!』と言ったりして。朝ドラって凄いと思うと同時に、その土地ならではの空気の違いも実感しました」と思い出し笑い。

とはいえ朝ドラ以前の岸井は、一部ですでに名の知れた存在だった。かくいう著者も山内ケンジが主宰する城山羊の会の舞台『あの山の稜線が崩れていく』(2012年)で岸井を初めて目にして、とてつもない衝撃を受けたのを覚えている。そして朝ドラ出演直後に公開された主演映画『愛がなんだ』(2019年)の拡大ロングランヒット。肩書はいつのまにか“実力派”に変わっていた。

恐縮しながら言い訳の日々

30代突入の今年は「忙しかった」と本人も認めるところだが、岸井はこうも付け加える。「でもそれは出演作の公開時期が偶然重なっただけで…。映画の撮影は時差があるので皆さんから『今年5作品も公開されている!売れっ子!』と言われるたびに『いやいや、たまたまの偶然です。撮影は前ですから…』と恐縮しながら言い訳をしています」と肩をすぼめる。

曰くブレイクの実感もない。「たくさん出演しているからといって自分の内面が変わったわけでもないし、生活が変化したわけでもありません。ずっと映画好きで、どんなに時間がなくても映画館に行く時間を探しているという姿勢は変わりません」と奢らず、胡坐もかかず、変わらず等身大だ。

歌謡曲にハマった理由

映画好きの原体験は小学4年生の頃にVHSで観た『のび太と鉄人兵団』など、自分が生まれる前の劇場版『ドラえもん』作品群。母が帰宅するまでの心細い時間に夢と希望を与えてくれる相棒だった。「VHSのテープが擦り切れるまで何度も何度も観ました。その時代の劇場版『ドラえもん』の主題歌は海援隊だったので、そこから歌謡曲にハマりました。周りが流行りのアイドルを聴いているときに私は海援隊やCHAGE and ASKAでしたから」。

趣味は映画のグッズ集め。ただしグッズはグッズでも本物志向だ。「映画のグッズを集めるのではなくて、映画に出てきた本物を手に入れたいと思うタイプ。例えばマシュー・マコノヒーが映画で使っていたマグカップとか、好きな俳優が劇中で着ていた洋服とか。映画のロゴの入ったマグカップはグッズとして売られているけれど、それではなくて映画の中にあるものと同じものが欲しい」とコレクターとして一家言持つ。

2023年はSSBS精神

映画の中に入りたい気持ちを持った人が、今映画の中に入っている。しかも大活躍で。2022年を締めくくるのは、聴覚障害のプロボクサー・小笠原恵子さんをモデルにした主演映画『ケイコ 目を澄ませて』(12月16日公開)。岸井曰く「ケイコは私」と言い切るほどに、手応え十分の集大成的作品だ。

「英語タイトルは『Small Slow But Steady』。小さく、ゆっくり、でも着実にという意味です。その言葉を私は凄くいいと思っているので、2023年は少しゆっくりとSSBS精神で過ごしたいと思っています」と新年の抱負を口にしている。

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