岐阜県関市では、ふるさと納税の返礼品に戦闘飯盒(はんごう)と折り畳み式の携帯シャベルを採用している。自衛隊で使用されている戦闘飯盒2型と携帯円匙(えんぴ)と同型のものだ。なぜそのような返礼品を採用しているのか、関市役所企画広報課に話を聞いた。
今年11月に採用されたばかり…滑り出しは好調
懐かしいものを見つけて、筆者は目を奪われてしまった。岐阜県関市で、ふるさと納税の返礼品に、戦闘飯盒2型と携帯シャベルをみつけたからだ。即応予備自衛官をやっていたとき、訓練で使用したものだ。もっともシャベルは自衛隊用語で「円匙(えんぴ)」と呼ぶから、携帯シャベルを自衛隊ふうにいうと「携帯円匙」となる。
飯盒は、今ではキャンプ用品として販売されているが、起源は軍隊における個人装備のひとつ。アルミ製で軽量、調理器具としても食器としても使える便利アイテムだ。
それがなぜ、ふるさと納税の返礼品に選ばれたのだろうか。関市役所企画広報課に聞いてみた。
「昨今の自衛隊人気とあいまって、コロナ禍の影響で、密を避けて屋外で活動できるキャンプ市場が拡大していることがひとつ。また他の自治体では返礼品に食品が多いのに対して、モノづくりの街である関市では寄附額の90%以上が『モノ』の返礼品で構成されています。自衛隊は採用基準が厳しいと聞いており、自衛隊に採用される製品を返礼品に採用することで、モノづくりの街・関市をPRできると考えたことも大きな理由です」
製造販売を手掛けているメーカーは、関市にある東海理研株式会社で、同社の営業開発部によると「飯盒と携帯シャベルを防衛省へ納入していた実績があります」という。
飯盒と携帯シャベルが返礼品に採用されたのは今年11月で、まだ日は浅いが滑り出しは悪くないそうだ。ちなみに、携帯シャベルは数量限定とのこと。飯盒・携帯シャベルともに「GIFU SEKI」のロゴが入る。
戦闘飯盒2型は、一般的な飯盒と比べて高さが半分ていど。いまは自衛隊でも飯盒で飯を炊く機会がほぼなくなっており、野外で食事を受け取る際の食器として使われることが多い。そのため小型化され、このような形になった。だが、これでも2合の米が炊ける。
ほかの自治体にもある自衛隊グッズの返礼品
いわゆる自衛隊グッズをふるさと納税の返礼品に採用している自治体は、関市だけではない。調べてみると香川県善通寺市、埼玉県入間市、鹿児島県鹿屋市など、20を超える自治体が自衛隊に関連するグッズを採用している。いずれも陸上自衛隊の駐屯地や海上・航空自衛隊の基地を擁する自治体だ。
以下、いくつか例を挙げてみよう。
▽滋賀県高島市(陸上自衛隊・今津駐屯地、航空自衛隊・饗庭野分屯基地)
今年8月、陸上自衛隊今津駐屯地70周年と航空自衛隊饗庭野分屯基地50周年を記念して「自衛隊フェスタ50・70」が開催された。そのイベントに向けて開発された今津駐屯地オリジナルカレーとブルーボトルの日本酒とのセット。
高島市役所総合戦略課によると「期間限定なので、お早めに」とのこと。
▽香川県善通寺市(陸上自衛隊・善通寺駐屯地)
明治31年に旧陸軍第11師団司令部が置かれた都市で、現在は陸上自衛隊第14旅団司令部と隷下部隊が駐屯している。5年ほど前から数種類の自衛隊グッズで返礼している。
善通寺市総務部政策課「ミリタリーファンと思われる方の申し込みが少なくありません」
▽岩手県奥州市(陸上自衛隊・岩手駐屯地)
防衛省で使われる天幕、バッグ、担架などのほか、陸上自衛隊で使われているバッグを製造しているメーカーが奥州市にある。陸上自衛隊の衛生隊員が装備する「収納袋、救護用医療嚢2型」をベースに開発されたキスリング型のバッグが、2020年から返礼開始されているそうだ。
奥州市都市プロモーション課「実際の自衛隊装備品と同じポリシーで一般向けに開発されたもので、自衛隊グッズならではの機能性や耐久性が魅力です」
▽鹿児島県鹿屋市(海上自衛隊・鹿屋航空基地)
鹿屋基地はかつて旧海軍の航空基地であり、現在は海上自衛隊の航空基地となっている。敷地内にある鹿屋航空基地史料館には旧日本海軍創世期から第2次世界大戦までの資料が展示されており、その中でも世界に1機しか現存しない二式大型飛行艇12型は圧巻。
鹿屋市ふるさとPR課「件数は多くないですが、毎月申し込みがあります」
▽埼玉県入間市(航空自衛隊・入間基地)
航空自衛隊入間基地の食堂で提供されている「狭山茶入りカレー」を、入間基地の近くに工場をもつ株式会社インデラが商品化。
入間市企画部財政課「インデラカレーや狭山茶についても話題になると嬉しいとの思いで、2022年6月から採用しています。入間基地の売店では『肉の量が多く、後味に狭山茶の風味が残ってとても美味しい』と好評で、お土産として購入する隊員の方も多いので、今後さらに知名度を上げていきたい」