鳥取県民の誇り「牛骨ラーメン」を全国区へ! 市内店舗が集まり「同盟」設立 目指すは札幌、博多!?

山陰中央新報社 山陰中央新報社

 鳥取県中西部で人気の牛骨ラーメンを全国区の知名度にしようと、米子市内のラーメン店と広告代理店、市で構成する「米子牛骨ラーメン同盟」が設立された。市の担当者は「札幌のみそラーメン、博多の豚骨ラーメンと肩を並べたい」と意気込む。実現に向け、具体的な構想を聞いた。

 発起人は広告代理店カミナリ(米子市米原6丁目)の加藤寛大社長(45)と全日本空輸(ANA)グループから米子市に出向し、観光課の観光振興プロデューサーを務める大森満晴さん。加藤社長が、市内の滞在人口を増やすために歴史文化や自然、食といった観光資源を考える中で、国民食であるラーメン、中でも全国的に珍しく、地域性がある牛骨ラーメンに目を付けた。

 大森さんはパフェで地域振興を目指す「475(よなご)パフェ」事業の呼びかけで、市内の店舗を回っていた際に加藤社長と知り合い、牛骨ラーメンを生かした地域振興に共感した。

 加藤社長は「幅広い人に来てもらう、というよりは『ラーメンがめちゃくちゃ好き!』という人たちに的を絞りたい」と戦略を話した。市内にラーメン店は多いものの、いずれも店の切り盛りで忙しく、思うように魅力を発信できていない状態だと分析。「同盟として、牛骨ラーメンというブランドの核を固めたい。牛骨ラーメンが知られれば、ラーメン好きなら一度食べてみたいと思うはず」と期待を込めた。

 山梨県出身の大森さんは牛骨ラーメンについて「失礼ながら、こちらに来るまで全く聞いたことがなかった」と笑った。調べるうちに、米子市は人口に対してラーメン店が多い(約100店)こと、牛骨ラーメンはおいしく、県中西部で人気があることを知り「全国に打ち出せば必ず注目される」と確信したという。

 ホームページで店舗情報を積極発信

 鳥取県中西部の人にとって「ラーメン=牛骨」の図式が当たり前で、牛骨スープでありながら、牛骨とうたっていないラーメン店も多い。加藤社長はまず市内のラーメン店が足並みをそろえて積極的に情報発信していく必要があると考え、同盟のホームページを制作して9月22日に公開した。

 ホームページ上で加盟する市内27店舗(2022年10月上旬時点)の情報を細かに記載している。「ラーメン日誌」ではカミナリの社員が記者となり、各店で新作情報や割引情報、周年行事があるたびに記事にして公開する。店舗が本業に専念しながら情報発信ができるようにサポートする。

 「ラーメン旅」では観光客向けに、牛骨ラーメンと観光、宿泊を絡めた記事を掲載している。弓ケ浜サイクリングコースの途中で立ち寄れる店や、大山(鳥取県大山町大山)からの日の出の観望会に合わせて早朝から営業する店を紹介し、県外旅行客がラーメンを楽しみやすい道順を提案する。

 このほか、各店の麺が細いか太いか、スープがあっさりかこってりかを一目で分かるグラフにした簡易な店舗情報や、加盟店の求人情報も掲載した。

 鳥取県中部や中海圏域在住者にとっても、「牛骨ラーメン」と名前は聞いたことはあっても、詳しい情報は分からない人が多い。米子の牛骨ラーメン事情が簡単に分かるホームページはありそうでなかったため、情報発信という点では効果的な取り組みだ。

 なぜ牛骨が主流に?

 大森さんは牛骨ラーメンの歴史についても教えてくれた。

 鳥取県では1951年、新聞の広告で初めて中華そばの店が掲載され、その時から牛骨と豚骨を合わせたスープが使われていた。当時、スープのだしとして一般的な鶏ガラは有料。それに対し、大山周辺は江戸時代ごろから牛馬市が開かれ、栄えたため、牛骨は無料で手に入った。経済的な理由で、牛骨スープのラーメンが主流となっていったと考えられるという。

 長らく牛骨ラーメンは鳥取県以外では日の目を浴びなかったが、2000年代になると県外ブロガーが紹介するようになり、09年には県中部で「鳥取牛骨ラーメン応麺団」(現在15店)が発足した。加盟店の有志が運営するホームページもあるが、店舗経営が忙しいのか、14年ごろから長らく更新されていない。今回の同盟のホームページをカミナリが運営するのは、同様の事態を避ける意味合いもある。

 今後はふるさと納税の返礼品に牛骨ラーメンを採用してもらったり、市内牛肉加工会社や焼き肉店と連携したりしながら牛骨ラーメンの知名度を上げたい考え。大森さんは「ゆくゆくは県中部の牛骨ラーメン店とも連携し、鳥取県一丸となって牛骨ラーメンを鳥取観光の中核に据えたい。若者が進学で県外に出ても、日本中どこででも食べられるラーメンになればうれしい」と夢を描く。加藤社長も「牛骨ラーメンが地域の人にとって当たり前にそこにある存在にしたい」と意気込む。

 山陰両県の自治体で、ラーメンを切り口にした地域振興に取り組む所は珍しい。ラーメンは国民食とも呼ばれ、多くの人が好むため、情報発信と店の連携が機能すれば大きな注目を集める可能性もある。米子が札幌や博多と肩を並べる日が来る、と想像すると夢のある取り組みと思った。

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