先日、Twitterのタイムラインを眺めていると、あるアカウントが目にとまった。それは「ビートたけし(TakeshiKitano).bot」(@takeshi_beatbot)というアカウント。
「何も無くていいんだ。人は生まれて、生きて、死ぬ。これだけでたいしたもんだ」
などとビートたけしさんのコメントとされる"名言"を延々と投稿し続ける、いわゆるbotアカウントだ。なお、「何も無くていいんだ」という言葉は「ビートたけし詩集 僕は馬鹿になった」(祥伝社黄金文庫)におさめられた「騙されるな」という詩の一部なのだが、切りとり方があまりに雑で、たけしさんが本来言わんとしていたであろうメッセージがまったく伝わってこない。どういうつもりでこんな切り抜き方をしたのかわからないが、ご本人にしたらさぞ迷惑なことだ。
たけしさん以外にも最近、主にお笑い界の大物タレントの名言とされる投稿をやたらと見かける。調べてみると、明石家さんまさん、所ジョージさん、島田紳助さんらのbotアカウントが見つかった。
問題はいずれもビートたけし.bot同様、発言の切りとり方がいい加減かつ出典不明で、しかもそれに対し数千から数万のフォロワーが存在し、投稿ごとに「感動しました」などと大きな反響が出ていること。運営者がその気になれば虚偽の投稿で世論を誘導することもできるだろう。こんなことが本人の許諾なく許されていいのか。
そんな思いで僕が「最近、ビートたけしさんや明石家さんまさんの真偽不明の『名言』を垂れ流すbotが目立つけど、みんな同一人物が運営してるのかな?大半が今年になって出来たアカウントだし、内容もうさん臭いし、ちょっと問題視したほうがいいと思うなー」と投稿したところ、そこそこの反響。
同じような疑問を抱いていたTwitterユーザーは多いようで
「最初流れてきたのがビートたけしのだったのですが 内容があまりにまた、本人らしからぬ温かい内容(すごい失礼)だったので違和感でしたがやはり…」
「沢山いいねを集めて、頃合いを見計らって固定ツイートでアフィ誘導ってのがありそうな気が」
「これって美輪明宏さんとか矢沢永吉さんもやられていますよね。botを見るんじゃなくて、ご本人の本を読めば充分だと思います。」
など数々の共感の声が寄せられた。
その後、ビートたけし.botは反響に臆したのか、アカウント名を「励まされる140文字の言葉」という意味不明な名称に変更。僕が「有名タレントのbotアカウントを運営される意図は?」などと質問状を送ったところ即座にブロックされ、結局意図はつかめないままだ。
そして2カ月ぶりくらいにアカウントを確認したところアカウント名は「ビートたけし(TakeshiKitano).bot」に復旧していた。浅ましいというか厚顔無恥というかなんともはや。この間にツイッター社を買収したイーロン・マスク氏もbotアカウントの撲滅をTwitter改革の骨子としているそうだが、確かにこんな無法が許されるものではない。
本稿を読んだTwitterユーザーには、どうかこのようなbotアカウントを無闇にフォローしないことをおススメしたい。既にフォローしてしまっているという方は、ネットリテラシー面で恥をかく前にフォロー解除されるのがよろしいだろう。