野球のコンバートといえば、選手の守備位置を変え、その選手の能力を最大限に引き出そうとするときや、チーム全体の戦力をアップさせたいときに用いる方法ですが、一般の社会生活でも、配置転換はときに予想を超える結果をもたらすことがあります。
医療従事歴20年で2児の母である、ゆきんこ先生さん(@okay1yukinko)のツイートによると「『遅いんだよ!』病院の会計で男性が怒鳴る。新しく入った女のコは動きや喋り方がゆっくり。本人は急いでるつもりでも傍から見たら遅かった。『私動きが遅いのが嫌で…直したい…』と泣き出した。そこで上司は、彼女を受付でなく相談窓口へ異動させた」とあります。
さらに、異動後のことについて「すると、彼女のゆっくりした口調の話し方は、たちまち評判となり、病院の口コミには『相談窓口の人が丁寧でやさしかった』、『話を親身になって聞いてくれた』と彼女を褒める言葉が並んだ。人には不得意や欠点はあります。でもその欠点が人生に恩恵をもらたすことがあります。彼女のゆっくりした物腰は大切な長所。わたしもそうなりたい…」とつづり、評判が激変した様子がつづられていました。
リプ欄には、
「ナイス上司!!適材適所。自分の短所も長所に変わる」
「その子が活躍できて良かったです!」
「みんなが適材適所で学べて働ける時代が来ると良いですね。相互理解と寛容でしょうか」
「自分にあう場所で働くって大事ですね!上司さんが部下さんをよく見てなければできない采配ですね!」
といったコメントが寄せられ、「いいね」は6.7万件にもなりました。
投稿者さんにお話を聞きました。
ーーこの方は、もともと何をするにもゆっくりな人だったのですか。
「本人曰く、もともとゆっくりした喋り方なのだそうです。新人とはいえ前職があり、そこでもたまに『遅いと言われていた』そうです」
ーー患者さんやご家族からしょっちゅう怒られていたのですか。
「そこまで目立っていつも怒られているわけではなかったと思います。ただ、混雑する病院なので、スピードは求められがちです」
ーー異動=左遷ではなかったのですね。
「その上司も彼女の物腰の柔らかさは認めていました。ゆっくり話すことで患者さんから一定の評価を得ている部分もありました。いきなり異動になったのではなく、彼女とよく話した上でこのような采配になりました」
ーー病院の相談窓口は、丁寧で親切な対応が求められるのでしょうか。
「相談窓口に来る人は体調が悪かったり心や体に不安を抱えていることが多く、とにかく話を聞いてもらいたい傾向にあります。身近な人には言えない、でもわかって欲しいという気持ちから訪れる人も多いです。話しているうちに前向きな気持ちになれたり、専門的な話にも対応もしてもらえたりするところなので、患者さんやご家族に寄り添い、親身になれる人でないと務まりません」
ーー「穏やかな物腰」が求められる仕事もあると思いますか。
「会計でもお金を出すのに手間取るお年寄りは、『遅くてごめんなさい』とよく口にします。早いことを良しとする現代で生きづらさや焦りを感じている人は沢山いると思います。『人の行動を待てる社会』は、これからもっと必要になるのではないでしょうか」
ーー短所と言われるところも長所になり得るのですね。
「長所や短所は見る角度を変えると真逆に映ります。『苦手を克服する』ことに注力するより、『得意なことを伸ばす』方が生産性も上がると思います。”誰かの苦手は他の誰かの得意”ということはよくあります。補い合って気持ちよく社会生活を送れたら良いですね」