小型モーターやプラスチック製のギヤ、ローラー、シャフト-。店内にずらりとミニ四駆の部品が並ぶ。おもちゃ屋さん?いえ、コンビニです。京都府宮津市須津の「ローソン宮津須津店」がミニ四駆の取り扱いを始めた。SNS(交流サイト)上で「徹夜でマシンを組める」「近所のローソンにも置いてほしい」との声が上がり、ちょっとした話題になっている。だが、なぜコンビニでミニ四駆を仕入れたのだろうか。
山陰近畿自動車道与謝天橋立インターチェンジ(IC)の出口から右折をすると、左手にローソンが見えてくる。入店すると、他のコンビニでは雑誌や書籍を置いている窓際にミニ四駆のグッズが並ぶ。一面にマシンを改良する上で必要な部品や組み立てる時に使うニッパーといった小道具が、下には本体や部品を入れる収納ボックスが平積みされている。
オーナーの橋本英一さん(38)が6月から仕入れ始めた。小中学校時代、大のミニ四駆ファンだったという橋本さんは、公式大会に参加したり、全国大会を見学したりしてきたという。中学を卒業してから遠ざかっていたが、最近になってミニ四駆のスマートフォンゲームで遊ぶようになったという。
「本物にも触れたいな」。久々に1台購入した。完成品を福知山市にあるコースで走らせてみたが、全くスピードが出なかった。「タイヤの削り方で違いが出たりパーツも多くなったりと、昔と比べて複雑になっていて、段違いに奥深くなっていた」と驚く。夢中になって速いマシンを作り、友人たちと競い合っていた頃の記憶がよみがえった。
「自分のように、当時ミニ四駆に夢中になった隠れた大人のファンがたくさんいるのではないか」「親になって子どもに魅力を教えている人もいるかもしれない」。そんな思いでミニ四駆の仕入れを始めた。独自で卸し先を探し、コンビニの本社からも販売の許可を得た。
ミニ四駆の専用コーナーを設置するなり、さまざまな反応があった。ファンと見られるツイッターユーザーが「24時間パーツが補充できる」と投稿し、100件以上リツイート(転載)された。ICから近いこともあって、30代くらいの男性客が市外から来店。手に取ったり、思い出話で盛り上がったりするという。また「何でミニ四駆があるの」との問い合わせもしばしばあるという。
橋本さんは、経営するもう1店舗「綾部宮代店」でもミニ四駆コーナーを導入する予定だ。「駐車場にコースを作って大会も開いてみたい。大人も子どもも楽しんでもらって、まちの活性化にもつながれば」と、子どものように語った。
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ミニ四駆 小型のモーターを搭載し、単3電池を動力として走行する自動車型のプラモデル。小学館の漫画誌「月刊コロコロコミック」で「ダッシュ!四駆郎」や「爆走兄弟レッツ&ゴー‼」など1980年~90年代にかけて題材にした作品が連載され、小学生を中心に大流行した。