「新たな足」電動キックボード普及する? ヘルメットや免許は必要? 危険走行も、ルールの周知急務

堤 冬樹 堤 冬樹

 京都市内で最近、目にする機会が増えた「電動キックボード」。今年3月に市内でシェアリングサービスが始まり、車両を借り、返却する場所も増えつつある。市民や観光客にとって手軽で便利な「新たな足」となるのか注目される一方、安全面での懸念の声や複雑な交通ルールもあり、車両の特性や制度の周知が急務となっている。

 電動キックボードは、細長いボードに両足を乗せて立ち、自転車のようにハンドルを握って操作する1人用の乗り物。2017年ごろから欧米などで広がりを見せ、国内では東京や大阪などに続き、京都市内でも半年前にシェアサービスがスタートした。業界大手の「Luup(ループ)」(東京)が経済産業省の認可を受け、特例措置の実証実験として展開している。

■「短距離移動の新たな選択肢にしたい」

 電動キックボードや小型電動アシスト自転車が置かれ、自由に乗車や返却ができる「ポート」は、市街地を中心に140以上ある。小型の乗り物のため、駅前やコンビニに加え、マンションや駐車場の一角など、ちょっとした空きスペースを有効活用したポートが目立つ。

 乗車の基本料金は50円で、1分当たり15円が加算される。Luupによると、電動キックボードの利用者は20~30代が最も多く、自転車と違って、またいだり座ったりしないのでスカートやスーツ姿でも気軽に乗れる。

 歩くと10~30分ほどかかる移動に適しているといい、通勤通学に使う人のほか、京都市では他都市より観光客の割合が比較的高い。市内在住の40代女性は「駅から遠く、駐車場がないクリニックなどに行く時に便利で利用している。結構スピードが出るので慎重に乗っている」と話す。「ポートが少なく、場所に偏りがある。平安神宮など岡崎エリアに行く時にも使いたいけどあまりない」とポートの充実も訴える。

 Luupの岡井大輝社長は「東京や大阪と比べ、京都はまだまだこれから。ポートをより高密度にしていくことで便利になり、認知度も上がる。短距離移動の新たな選択肢にしていきたい」と思いを語る。将来的には高齢者向けの乗り物も導入し、誰にとっても街中の移動を便利で快適なものにしたい、と青写真を描く。

■異なる車両の位置付けや走行ルール

 その一方、電動キックボードの危険な走行や交通違反が指摘されている。警察庁によると、今年2月までの半年間で、歩道走行など道交法違反容疑の摘発は全国で168件。整備不良や無免許といった指導・警告は371件に上った。人身事故は14件、物損事故は52件。京都府内では指導が5件あった。

 そもそも現在、個人所有などの電動キックボードと特例措置のシェアサービスでは、車両の位置付けや走行ルールが異なり、混乱を招きかねない状況にもなっている。

 例えば、個人所有だと現行の道交法上は「原動機付自転車」に該当するが、シェアでは「小型特殊自動車」となり、普通自動車免許などが求められ、時速15キロ以下に制限されている。個人所有では着用が義務付けられているヘルメットも、シェアだと任意だ。

 京都府警交通指導課によると、インターネット上では保安基準に満たないものを含め、国内外のさまざまな製品が販売されている。義務付けられているナンバープレートを付けていなかったり、自賠責保険に未加入だったりと、購入者も車両としての認識がないまま乗っているケースがあるという。

■道交法が改正、進む規制緩和

 さらに今年4月には、公道を走る際の新たなルールを定めた改正道交法が成立し、2年以内に施行されることになった。16歳未満の運転は禁じた上で、性能上の最高速度が20キロ以下なら免許は不要になる。

 時速6キロ以下に制御できれば歩道走行が一部可能になり、ヘルメットも努力義務になるなど規制緩和が進む。国会審議では安全性を疑問視する意見も相次ぎ、可決にあたっては、交通ルールの周知徹底や悪質な運転に対する取り締まりの強化、ヘルメットの着用促進などが盛り込まれた付帯決議がついた。

 Luupも、歩道走行や逆走といった違反や事故を確認しており、悪質な利用者にはユーザーアカウントの停止などの対応を取っているという。定期的に安全講習を開いているほか、運手時の安定感が増すようタイヤのサイズを大きくしたり、ウインカーの操作性を向上させたりと車両の改良も続けている。

 道交法の改正について、Luupの岡井社長は「ルールが一本化されるのは良いことで、今後は新しいルールにのっとり事業展開していくことになる」と歓迎する。電動キックボードの浸透には安全性の担保が第一と強調し、「行政や警察、企業が一丸となってインフラを整備していく態勢も重要。台数をむやみに増やすのではなく、地元の人たちに理解してもらうことを重視したい」と話す。

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