「58万キロ38年視界を確保してくれたガラスが高速道路走行中に割れた。悲しい」とツイートしたのは、ベテランドライバーのKorokoroさん(@r30nissan)。
なんと、「高速道路を走行している時に車のフロントガラスが割れてしまった」というのです。この衝撃的なツイートが話題となっています。
速度指定のない区間では普通車の最高速度は100km/hにもなる高速道路。ちょっとしたトラブルが命取りになりかねません。そんな中での「フロントガラスが割れる」というゆゆしき事態。なぜ起こったのでしょう?
高速道路などで車のガラスが割れる理由として多いのは「飛び石」です。大型車のタイヤが路上の小石を弾いてしまうなどして、それが他の車のガラスにぶつかるという場合。
しかし、Korokoroさんはその時の状況についてこう語ります。
「走行中に突然ボンと言う大きな音がして、一瞬にして視界が白くなった」
「走行中に突然ボンと言う大きな音がして、一瞬にして視界が白くなりました。『えっ。何が起きたの?』と一瞬驚きましたが、すぐにガラスが割れたんだと理解しました」(Korokoroさん)
なんと、いきなり割れてしまったとのこと。ガラスにも何かがぶつかったような痕跡はなかったそうです。
さらに、前方が亀裂で白くなっただけでなく、車内にもたくさんのガラス破片や細かいガラス粉が飛び散りました。それ以降も、軋むような音が聞こえて微小な崩壊が続いたといいます。
予想外の大変な事態に見舞われたものの、Korokoroさんはパニックに陥らずに冷静に対応しました。
乗っていた車のフロントガラスには、視界確保の目的から「中心部は割れ方が粗くなる」という性質があったため、フロントに顔を近づけて亀裂の隙間から外を見ながら運転し、何とか切り抜けたそうです。
まさに、熟練ドライバーの技。大事故にならず、本当に良かったです。
長年乗ってきた愛車…それだけに日々のメンテナンスは大変
しかし、なぜこんなことが起こったのでしょう?
Korokoroさんが乗っていた車は、1984年に納車されたという日産スカイライン。Korokoroさんが「日産」に就職する直前に購入したものだといいます。それから38年近く乗り続け、走行距離は58万キロ以上にも及ぶといいます。
さらに、Korokoroさんが子どもの頃から父親が同車種の自動車を所有しており、Korokoroさんにとってスカイラインとは、人生の大半を共に過ごしてきたかけがえのない存在といっても過言ではありません。
それほど思い入れのある愛車。しかし、それだけ長年乗り続けていたことによって、車を構成するパーツが徐々に劣化し、今回のような悲劇につながったということは想像に難くありません。
Korokoroさんによると、同車はこれまでにも何度かトラブルに見舞われたことがあるそうです。しかし、Korokoroさん自らが整備を行いつつ、共に乗り越えてきたとのこと。
「長く乗るためにはちょっとした異常に気づいてすぐに対応することと、クルマはメンテナンスをすれば乗れるんだと信じて愛情を少し注いであげることだと思います」 (Korokoroさん)
その一方で、「クラッチは2回しか交換しておらず、エンジンも快調」とのこと。国産車の品質の高さを物語っていますが、所有者が愛情をもって接していることこそが、車の長持ちの秘訣であることは間違いないでしょう。
しかし、今回のフロントガラスの問題は、さすがのKorokoroさんも一筋縄ではいかなかったようです。
40年近く前に購入したスカイラインであるため、販売されているパーツが少なくなっていることが大きな理由です。
さらに、このスカイラインのフロントガラスに使われていたガラスは、「部分強化ガラス」と呼ばれるもの。
このガラスには、先述の通り破損時のガラスの亀裂が細かくならず、万が一の時にも視界が確保できるよう加工がされており、当時よく使用されていました。
しかしその後、「合わせガラス」に注目が集まります。このガラスには、衝撃を受けてもその部分だけにしかキズやヒビができず、ガラスの破片が飛び散りにくいなどのメリットがありました。より高い安全性を考慮し、以降はフロントガラスとして合わせガラスが標準装備される車が増え、部分強化ガラスが使用されていたのは1987年ごろまでと言われています。
かなり前の型の車であることに加え、フロントに使用されるガラスの変遷――これらの時代背景もあり、この車にはめられるフロントガラスの純正品はすでに製造中止であり、中古品か社外品の特別生産のものを探すしかないそうです。
38年間もKorokoroさんの視界を守り続けてくれた愛車のフロントガラス。
「最後まで貴方を守って立派なガラスでしたね」
「雨の日も雪の日も台風の日も、太陽が照りつける真夏日にも、ずっと頑張ってきたフロントガラスさんに敬礼…」
など、Twitter上では多くの称賛の声が上がりました。
割れたガラスは積年の務めを終えましたが、また次に役目を担ってくれるガラスに巡り合えると良いですね。
ガラスはなぜ割れた?よく起こることなの?専門家に聞いた
今回Korokoroさんが見舞われたような、車のガラスが割れるという出来事。
ガラスはなぜ突然割れてしまったのでしょうか?また、このようなことは、実際によく起こり得るのでしょうか?
某硝子メーカーの事業部門の担当者さんに話を聞きました。
担当者の方は、「実際に現物を見ているわけではなく、これほど古い自動車ガラスの知見が足りないため、断定的なことは言えませんが」と前置きしたうえで、一般的な見解としてお答えくださいました。
――今回のように投石による衝撃などの大きな理由もなく、車のガラスが割れてしまったという例は他にもあるのでしょうか?
担当者:一例として、冬期にガラスにお湯をかけるなどした場合に破損することがあります。
――割れた原因については? 経年劣化によってガラスが割れることもあるのでしょうか?
担当者:ガラス自体が経年劣化を起こす可能性は低いですが、微細なキズが風圧や車体振動、歪み等によりガラス内部のバランスを崩す要因になった可能性はあると推定します。
――今回使われていたのは「部分強化ガラス」ですが、ガラスの種類によって劣化による割れ方などに違いはあるのでしょうか?
担当者:先ほどもお答えした通り、ガラス自体の経年劣化による割れの可能性は低いと考えます。
専門家によると、自動車のガラスが突然割れてしまうという可能性は低いとのことでした。ただし、今回のKorokoroさんの車の実例もあり、まったくゼロとは言えません。ドライバーは最悪の事態も想定しておく必要がありそうです。
◇ ◇
ドライバーにとって、車は長年共に過ごすパートナー。そんな愛着ある存在である反面、下手をすれば大きな事故を引き起こす危険性を伴うものでもあります。所有者は責任をもって、日々車の調子を気にかけ、メンテナンスを継続して行うことが大切です。
長く乗っている車であるほど、その必要性は大きいといえるでしょう。もちろん、安全運転は大前提ですね。
■KorokoroさんのTwitterはこちら→https://twitter.com/r30nissan
「旧車のガラスが走行中に割れたりヒビが入ったりすることはよくある」という声も【3/18追記】
記事内にて「車のガラスが突然割れるという可能性は低い」とお伝えしましたが、読者の方から「旧車のガラスが走行中に割れたりヒビが入ったりすることはよくあります」というご指摘をいただきました。
実際に、その方も3台ほど同様のトラブルに見舞われているとのことです。
概要をご紹介させていただくと…
その方によると、旧車のガラスが割れる要因として、当時と現在では車の性能や構造に大きな違いがあることが挙げられるとのことです。
さまざまな自動車部品の性能も徐々に向上しており、特にタイヤの進歩はめざましく、現代のタイヤは昔に比べて格段に性能や安全性が良くなっています。
しかし、性能が上がった分、ボディには負荷がかかります。現在の車はそれに耐えられる剛性をもった構造をしています。しかし、旧車はその当時の仕様で造られているため、近年のタイヤで走行すると負荷に耐え切れず、ボディが歪んでしまうこともあるそうです。
1984年当時のスカイラインは、Aピラーと呼ばれるフロントガラスを支える窓柱の部分が細く設計されています。この部分が歪んだり曲がったりすると、フロントガラスのヒビや破損につながってしまうといいます。
また、ツイ主のKorokoroさんに、今回のご指摘についてお話したところ「よく分かります」との回答が。さらに「私のスカイラインの時代は燃費や軽量化が大きなテーマだったと思います。今は衝突安全性能ですね。ですから、車体剛性は比較するまでもないと思います」との見解をいただきました。
以上ように、旧車の方がガラス破損などが起こりやすいという意見もありますので、古い車に乗られている方はより注意が必要かもしれません。しかし、新旧にかかわらず車の運転にはリスクが伴うものですので、ドライバーの方は日々のメンテナンスを忘れず、安全運転を心がけることが大切でしょう。
この度は、貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。