「小学生にエクセル教えたら、ジャンプの打ち切り漫画の掲載順位まとめて容赦無い分析してた」と投稿したのは、小学6年生を育てる札幌暮らし(東京→北海道Uターン移住)さん(@sapporolife2021、以下札幌暮らしさん)。
自由研究ネタで盛り上がる夏休み後半のSNS。毎年、個性的で奇想天外な切り口のネタが飛び出しますが、今夏はエクセルを駆使した、『週刊少年ジャンプ』(集英社)がテーマの自由研究が現れました。
分析調査したのは、漫画雑誌ジャンプを愛してやまない小学6年生の女の子。最近の約1年間で打ち切りになった漫画作品の掲載順位と掲載継続中の漫画順位のグラフ化や各漫画の打ち切りになってしまった理由、打ち切りの危機に読者は何をすべきか、などをまとめた自由研究は全16ページに及ぶ超大作になったそう。
ご本人への許可を得て、その制作秘話を札幌暮らしさんに聞きました。
自由研究のテーマは『少年ジャンプ』の打ち切り漫画!?
−−自由研究の題材が、ジャンプの打ち切り漫画についてとは!「これぞ自由研究!」「子どもの発想は無限大」というコメントもありました。
「きっかけは、気に入っていたジャンプの連載漫画(アメノフル)が打ち切られたことでした。「どうやって打ち切られる漫画が決まるのか」が気になって、調べてみると、人気のある漫画は掲載順が上に、逆に人気が落ちると下になるとわかったそうで。さらに、掲載の順位は読者からのアンケートはがきが影響していることもつかみました。それで、打ち切りとなってしまったマンガの順位について調査して自由研究にしようと思ったみたいです」
−−では、エクセルはこの自由研究のために習得したということ?
「そうです。手書きで定規を使ってグラフを作ろうとしている娘に、「Excel使えば楽だよ」とグラフの作り方を教えました。グラフの見せ方やデータのまとめ方はアドバイスしましたが、どんなデータを集めるか、それをどう解釈するかは極力助言せずに「どんなデータが必要?」「このグラフから何がわかる?」と本人に考えさせるようにしました」
−−すごい!目的があるとモノにできるという典型的なエピソードですね。
「毎年ギリギリまで宿題やらない小学生ですが、ジャンプへの情熱は凄いな、と傍で見てて思いました(笑)。
−−調査や分析も含めて、自由研究を仕上げるのにどれぐらいの期間でした?
「2週間くらいですね。 全16ページ構成で、冒頭で打ち切りやアンケートシステムについての説明と、調べる背景(好きな漫画が打ち切られて仕組みが気になった)について記載しています。それから、ここ一年くらいで打ち切りになったマンガ9作品の掲載順位と掲載継続中の漫画順位をグラフ化して比較して、そこから気付いた点をコメント。
次に各マンガの打ち切りになってしまった理由を本人なりに考え、展開の遅さやキャラの魅力など4つに分けて説明。最後に、打ち切りマンガでも面白いものがあるので単行本で読んでほしい、好きな漫画の掲載順位が下がってきたらアンケートを出してほしいというメッセージでまとめていました」
−−最後の締めにマンガ愛が込められていますね!
「そうですね。日頃から、娘には応援しているマンガがあればアンケート出せとしばしば言っていましたが、この自由研究の結果を見て、アンケートの大切さを実感したようで。友だちに布教しています(笑)」
Twitterで公開されたのは自由研究の一部だけでしたが、その内容を見て、
「『テンポが遅い』 たしかにそれは面白く感じない漫画だと思う…」
「データ至上主義でなくて良かった」
「わかりやすい上に指摘が的確」
「容赦無いだけでなく、出版執筆側にとってはとても身のある分析」
「このツイートを見て震え上がってる若手漫画家の姿が見える…。」
という声や
「打ち切り漫画学会期待の新星」「何者だその子、将来有望な編集者じゃないか」「出版業界にドラフト制度があったら競合必至」と将来を期待する声があふれました。
小6女子の訴え「全部読んで!」「アンケート送って!」
−−札幌暮らしさんは、仕上がりを見た時、どんな感想を?
「大人から見ても想像以上に興味深く、そしてよくまとまっている印象でした。漫画を傾向別に分類して、伸びなかった要因の分析(仮説)も、やや主観的ではあるものの納得できる内容でした。世の中のあらゆるコンテンツの展開・消費スピードが速くなっている中で、作者さんや編集さんはそのあたりの摺り合わせで本当に苦労されているんだろうなという思いもあります。
また、娘のジャンプ好きは知っていましたが、自由研究の取り組みを通じてこれほど好きだったのかと驚かされました(笑)。好きなものなら頑張って取り組めるのだなと痛感しました。部屋の中で場所を取っているジャンプは早く古紙回収に出して欲しいと思っていましたが、言いにくくなりました」
−−それはうれしいような、困ったような…。自信を持って提出できるのはいいですね。
「私たち一家が暮らす北海道は、本州より夏休みが短く、大体の学校は今週から始まっています。この自由研究も、すでに学校に提出して発表したそうです。先生の中にはマンガ好きな方もいて、好意的に受け止めてくれ、“この研究を見て読みたいマンガが増えた”と言ってくれた、と話していました。同じクラスの友人にも、打ち切りの仕組みが分かった、グラフが分かりやすいなど好評とのことです」
−−SNSで反響が大きかったこと、娘さんはご存知ですか?
「お褒めのコメントをたくさんもらえて、喜んでいます。見てくれた人に言いたいことがあるかを聞いてみたところ、“打ち切りの仕組みがわかり、アンケートの大事さががわかりました。ジャンプ毎週買っても、お目当ての漫画しか読んでない人もいるかもしれませんが、最後まで全部読んでほしいです!そして面白かったらアンケート出してください。打ち切られた漫画でも面白い作品は多いので、単行本買って読んでほしいです”」
−−ア、アツいですね。
「本人は寄せられていたコメントの中でも、『ここは子供の心が折れてエクセル投げ出して「俺たちの戦いはこれからだ」エンドにしてほしかった』が面白かったようです。」
−−楽しい夏休みなのに自由研究のことを考えるとブルーになってしまった、という人も多いと思います。娘さんの取り組みから自由研究って楽しめばいいんだ!と教えられました。
「暇さえあればマンガ読んでいます。もともと私がマンガ好きで、家にはいろんなジャンルのマンガがあふれていました。それを娘が読むうちに特にジャンプの漫画が好きになり、自分のお小遣いで毎週ジャンプを買うように。普段も隙きあらばマンガばかり読んでいて、なかなか宿題もやらないので親としては悩ましいところでした。ツイートに対して、編集者やデータサイエンティスト、マーケターなどをお勧めしてくれるコメントがあり、将来を考えるきっかけになればいいかなと思いました」
ちなみに、娘さんのお気に入り漫画は『ボボボーボ・ボーボボ』や『銀魂』、『ウィッチウォッチ』(現在連載中)。『犬と猫どっちも飼ってると毎日楽しい』『天地創造デザイン部』など動物や生き物をテーマにした漫画も好きだそうで、家ではさくらももこ先生のコジコジのTシャツを着ているそう。
現在のイチオシを聞くと、「『SAKAMOTO DAYS(サカモト デイズ)』!バトルシーンがかっこいいし、殺し屋をやめて太った店長という設定も新しくて面白い。連載は終わってしまったけど、『アメノフル』は、キャラクターがみんな魅力的で掛け合いが楽しかったので残念です。(全3巻。単行本買った)」
漫画愛がほとばしっています!
■札幌暮らし(東京→北海道Uターン移住)さん Twitter @sapporolife2021