インディペンデント映画ながらも半年以上のロングランヒットを記録した『ベイビーわるきゅーれ』(2021年公開)の主演で一躍知名度を高めた。『ベイビー~』が“動”ならば、8月27日公開の映画『とおいらいめい』の高石あかり(19)は“静”だ。
しっくりくる持ち方を模索
人類滅亡を前にゆっくりと家族になっていく3人姉妹の姿を綴った『とおいらいめい』では、腹違いの妹・宮田音役。『ベイビー~』での高校を卒業したばかりの明るい性格の殺し屋・ちさととは一転、感情を押し殺した寡黙なキャラクターに扮している。「この短期間で静と動を見せることができるのは女優として光栄なこと。私の役の幅の広さを皆さんにお見せできることにワクワクしています」と念願の封切りに期待を込める。
演じた音は瀬戸内にある大きな一軒家に一人で住んでいる。黙々と食事をして洗い物をする。静かで落ち着いた日々の営み。そんな静謐なトーンが作品全体を貫いている。食事のシーンでは細かな所作にこだわった。箸の握り方やお茶碗の持ち方にその人となりが出ると感じたからだ。
「脚本を読み終えたときに、音はどのようにコップを持ったりお箸を持ったりするのだろうか?と考えました。実際に近くにあるコップを持ってみて、音としてのしっくりくる持ち方を模索しました」と繊細な役作りで臨んだ。
『もはや怖い』の領域
岡山県の瀬戸内でロケを敢行。「みんなで同じ家に泊まり込んでの合宿のような撮影スタイルで、お風呂の順番を決めたりするのが日常的にありました。それもあってみんな家族のような感覚。吹越ともみさんや田中美晴さんとも本当の姉妹のような雰囲気を出すことができたと思います」とワンチームでのものづくりを体感した。
『とおいらいめい』は約2年前に撮影された作品。高石は当時17歳だった。『ベイビー~』を経て、今では高石を見る周囲の目も大きく変化している。「お仕事で会う方全員が『ベイビーわるきゅーれ』を知ってくださっていて、あまりの反響の大きさに『めちゃめちゃ嬉しい!』を通り越して『もはや怖い』の領域です(笑)。この不思議な感情は自分でも面白いと思います。こんな感情を抱けるというのも贅沢で、なかなかない経験」と驚く。
イメージを常に更新したい
『ベイビー~』へのリアクションは想像をはるかに超えていた。ソフト化の際はネット通販サイトでベストセラー1位を記録。大手シネコンでの限定上映ではチケットが即日完売。ファン待望の続編も準備中だ。高石自身「自分の名刺代わりになる作品」と代表作であることを自負しているが、そこに留まることは良しとしていない。
「『ベイビー~』公開以降、私イコールちさとというイメージを持っていただけることが多くなりましたが、そのイメージを覆していくというのが今の私の課題。『とおいらいめい』はそのひとつで、動の高石あかり像を壊すことができるのが嬉しい。役者としての幅を広げられるようにイメージを常に更新していきたい。そんな思いが心の中で増してきて、かなり燃えています」。10代最後に未来への誓いを立てている。