こたちゃん(7歳・メス)は、野良の子猫だった。2015年9月の朝、千葉県に住む遠藤さんは、外から子猫の鳴き声がしたので窓から庭を覗いてみた。すると、地域猫の黒猫に1匹の見慣れない子猫がまとわりついていたという。
ごはんをあげると、警戒しつつもお腹が空いていたようでむしゃむしゃと食べ始めた。全部食べ終えると、今度はちょろちょろと跳ね回っていた。しかし、捕まえようと思うとピーっと逃げていき、姿が見えなくなった。それ以来、遠藤さんは日中も子猫のことばかり思い出した。
「もう現れないかなあ、また来たらどうしようと、そんなことばかり考えていました。この頃、愛犬や母の死で弱っていて、子猫の写真や動画に癒されていて、かなり猫熱が高まっていたんです」
うちの子宣言
猫熱は高まるばかりだったが、ペットショップで買うのは何か違う気がして、とはいえ、譲渡サイトを見たり、譲渡会に行く気力はなかった。
「もし向こうから子猫がひょいとやってきたら考えようかな、でもそんなことあり得ないし、とぼんやり考えていた時期でした。子猫を見た時、『まさか猫神様が遣わした運命の子!?』とも思いました」
そんなことを考えながら帰宅すると、黒猫に付いて再び子猫が現れた。遠藤さんは、飼う飼わないは別にして、子猫を放置しておくわけにはいかないと思い、ひょいと抱き上げ、家の中に入れた。生後1カ月ほど、痩せていたという。夫は、「小さくて可愛いうちに里親さんを探しなよ」と言い、飼うつもりは全くないようだった。
遠藤さんも新しい命を迎える覚悟ができておらず、ずっと犬を飼っていたので猫を飼うのにためらいがあり、しばらく悩んだ。
「でも、色々と飼う理由を探していることに気が付いたんです。これはこの子をうちの子にしたいからだなと納得し、うちの子宣言をしました」
守ってあげたい、家族だから
こたちゃんは、初日から2日目は部屋の隅に隠れてしまった。遠藤さんは、どうしたら良いのか分からずネットで、「懐かない、引きこもり、猫、保護」などとキーワード検索した。
「家庭内野良という言葉も知って、そうなったらどうしようと思いました。でも、子猫だったので、3日目には布団の上で遊び回っていました。とても飼いやすい子で、ラッキーでした」
ただ、遠藤さんはお母さんの愛犬だったミニチュアシュナウザーも飼っていた。14歳だったが血気盛んなおじいちゃん。こたちゃんを見ると鼻息が荒く追い回していた。こたちゃんは興味津々で、追いかけられてもちょろちょろしていた。
「穏やかな共存は難しいと思っていたのですが、半年ほど経ったある日、犬が突然こたの存在を認めたのです。こたが、だんだん落ち着いてきたからかもしれません」
遠藤さんにとってこたちゃんは守るべき存在。家族が増え、守る存在があると生活に張り合いが出るという。