NPO・ベンチャー・官公庁…立場を変え、社会課題の解決に挑む丸岡さんが語る「ワークアズライフ」の実践

20代の働き方研究所/Re就活 20代の働き方研究所/Re就活

「ワークアズライフ」という言葉をご存知ですか。直訳すると「生きるように働く」という意味ですが、仕事をネガティブなものと捉えるのではなく、仕事もプライベートも、自身の理想を実現するための手段と考える働き方、生き方のことです。その考え方は、コロナ禍をきっかけに進んだテレワークにより、仕事とプライベートとの境目が緩やかになっている昨今、これまで以上に注目を集めています。「社会課題の解決」を自身のテーマに、NPO・ベンチャー・官公庁と様々な立場から挑む、文化庁・文化観光推進コーディネーターの丸岡直樹さんに「ワークアズライフ」の実践について聞きました。

視点を切り替えることで、仕事を楽しむ

ーまずは仕事を「楽しむ秘訣」から、教えていただけますか?

「楽しもう!」と思っているのではなく、自然と「楽しんでいる」という感覚なので、その質問は難しいですが、あえて言うならば、「視点を切り替えるクセを持つ」ということでしょうか。

仕事がつまらなくなるときって、「興味が持てないとき」「相手の考えに納得できず理不尽だと思うとき」など、やらされ感のあるときなのかなと思っています。仕事が「やらされているもの」になってしまうと、「業務量が多い」とか「自分には荷が重い」と辛いものになってしまうと思います。

仕事を「やらされているもの」ではなく「自身がやりたいこと」に昇華させるために、興味がないと割り切る前に楽しいと思える人の視点に立ってみるという、いわば「好奇心」を発動させています。

知らないものは、そもそも良さを理解できないですし、楽しいとも思えないです。一方、「好きだ!」と思って、夢中で取り組める人の視点で捉えてみると、意外と面白さを見つけられたりします。実際に熱意をもって取り組める人に対して、具体的な仕事のハウツーを聞くよりも前に、何を楽しいと感じるのか、どんなときに夢中になれるか聞いてみるようにしています。すると、どこかに自分も共感できるところがあったりするんですよね。思い返せば、大学受験のころから、10科目以上を学ぶ際にも、全部に興味を持てるように工夫をしていました。仕事においても、接客からシステム開発、マーケティング、マネジメント、行政文書の作成、法律の読み込みなど、本当に多岐に渡る仕事をしてきました。これらを「仕事だからやらなくちゃ」という義務感でやっていては、ここまで身になっていなかったように思います。「楽しい」と思える人の視点で物事を捉える、良さや本質を見つけられるという経験を重ねてきた今では、興味がないからやりたくない、で終わらせるのは、あまりにももったいないと思うようになりました。

相手からの依頼で納得できないことや、「なんで理解してくれないのか!」と感情的になりそうなときは、あえて相手の視点に立ってみるクセ付けをしています。分かってくれないと苛立つときは、だいたいの場合、写し鏡のように相手もそう感じていることが多いと思うんです。そのままでいることはお互いにとって何も幸せではないので、相手の価値観でその問題を捉えてみると、相手の言っていることも意外と理不尽ではなくて、それはそれで意味があることのように思えます。そして、相手の目から見たときに、どうやったらお互いにとってプラスになる仕事にできるか、という意味付けができると、すごく仕事がスムーズにいくし、自分自身も納得できるようになるので、楽しむことができます。

それと、ありきたりではありますが、何のためにやるのか?という「Why?」の部分は非常に大事だと思っています。先程お話したように、相手の視点に立ってみると、自分の中で盲点になっていた目的や意義を再認識することができたり、物事の結びつきが見えたりします。そして、自分自身がやりたいと思っている、「人生楽しく」「価値があることをする」「人の人生のプラスになる」「ローカルコミュニティの力になる」といったことに結び付けられると、私がやりたいことに変わっていきます。心の中に、むくむくとやる気が湧いてくるんですよね。

私にとっては「やりたいこと」に取り組んでいる感覚なので、たとえ仕事量が多くても「役に立ちたい人がたくさんいる」という感覚にすぎないですし、ややハードルが高いことでも「何とか力になりたい」という思いのほうが勝っているんだと思います。

また、「目の前の人の役に立ちたい」と思ったら、自ずと私自身のスキルや知見も高めていく必要があります。そうやって私自身がパワーアップしていくと、より「目の前の人」の力になれる、そんな好循環も「楽しい」と感じられる理由かもしれないです。

「目の前の人の役に立つ」結果として、成長する

ー​​「誰かのためになる」というマインドが、丸岡さんを突き動かしているんですね。

そうですね。たとえば、「まちなみを、なんとか残したい」という地域の方々の想いを聞いたときに、心が動いてしまうんですよね。でも、私では解決方法が分からないこと、自分一人では解決できないことも多いです。

そんなときは、実例を作った方に協力を依頼したり、ハードルになる法律を調べたり、専門家に話を聞きに行ったり、人の力をたくさん借りています。「自分のためだけ」に頑張っている人を応援してくれる人は多くないかもしれないですが、「誰かのためになりたい」「社会の役に立ちたい」と本気で思っていると、利害関係を問わず周囲の人が力を貸してくださるんです。そうやって、誰かのためになるなら、と力を貸してくださるたくさんの人のおかげで、仕事ができています。

「まちづくり」は、社会の縮図なので、観光や文化にとどまらず、福祉や教育、インフラなど様々な分野が関係しています。「このまち、この地域の力になりたい」と思ったら、そのまちや地域の課題を解決し、持続的に成長していくための道筋を描いていくことが必要です。そこで「遺跡」を軸にした魅力作りをするとなれば、「学者の価値観」を学びますし、観光客の誘致のためにデジタル領域の強化が必要になれば、「DX」について学びます。私自身の成長や、専門性、スキル、知識の習得を意識しているわけではないですが、「目的」が起点になって、自然と私自身も成長していき、解決できる課題の幅も広がってきているのではないかと感じます。

「まちづくり」や仕事において、力になってくれるのは「専門家」だけではありません。これまでサポートさせていただいた地域の方が、他の地域の課題解決のために力になってくださることも、たくさんあります。「Give&Take」というよりは、たくさんの「Give」をしていたら、私自身も多くの方から「Give」をいただいていたという感覚です。

まさに、「Connecting the dots」 とはこのことだなと思っています。仕事でもプライベートの経験でも、意味のないことはないですし、思いもよらないところで繋がったり、振り返ると今に活きているなと感じることはたくさんあります。これは「経験」だけでなく、「人とのつながり」でも同じことだと思っています。学生時代の友人とたまたま一緒に仕事をする機会を得たり、仕事を通して出会った方と数年後にまたご一緒する機会があったり、「同じ志」を持つ人とはどこかで「再会」することもあります。だからこそ、コロナ禍でなかなか直接人と会いにくい時代ではありますが、「人」とのつながりや関係は、大切にしたいなと思っています。

「まちづくり」の社会課題に取り組む 丸岡直樹さん】
学生時代は教育系NPO「カタリバ」で学生職員(インターン)を経験し、高校生のキャリア開発支援に従事。大学卒業後は、歴史的建造物の利活用に取り組む「バリューマネジメント」で、宿泊施設の現場責任者、宿泊事業のマーケティング責任者を経験後、観光庁に出向。現在は、文化庁に出向し、文化観光推進コーディネーターとして、文化や観光を軸にした「まちづくり」に取り組んでいる。

ストレングスファインダー:学習欲、個別化、着想、ポジティブ、達成欲

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