新潮7月号がスピード重版 ステージ4告白した坂本龍一さんの連載が話題 「最後の瞬間まで音楽を」

金井 かおる 金井 かおる

 新潮社は7日に発売した月刊文芸誌「新潮 2022年7月号」の重版を決定した。6月20日の出来予定で、予定部数は2000部。同号では音楽家の坂本龍一さん(70)が自伝連載「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」をスタート。自身のがんの症状がステージ4であることを明かしていた。

 坂本さんの連載開始が話題を呼び、発売直後から売り切れの店舗が続出。同社では9日、社内会議を行い、重版を決めた。同誌担当者は重版の理由を坂本さんの自伝が注目されたためとしている。現在、書店やネット書店などで重版分の予約を受け付けている。

 同誌は1904(明治37)年5月5日創刊。第二次世界大戦中や関東大震災で数号休刊したことはあるものの「現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります」(同社サイトより)。直近では2021年7月号(野田秀樹「フェイクスピア」長篇戯曲掲載)、同3月号(創る人52人の「2020コロナ禍」日記リレー掲載)でも重版を行なっているが、今回は発売3日でのスピード重版になった。

 SNS上では発売後、「新潮どこも売り切れ」「新潮すごい全部売り切れ」「書店数軒まわったけどない」「予想通り売り切れ」「どこもない。重版で読めたらうれしい」などの声が上がっていた。同号の定価は税込1200円だが、希少本を理由に約4000円の高値がつく通販サイトまであった。

坂本龍一さん「最後の瞬間まで音楽を」

 坂本さんの連載は2009年に刊行した自伝「音楽は自由にする」(新潮社)の続編。第1回目のタイトルは「ガンと生きる」。旧知の仲である編集者の鈴木正文さんが聞き手となり、両肺に転移したがんの摘出手術を昨年10、12月に受けたことや入院先でのパートナーや友人とのエピソード、自身の死生観や創作観の変化などを赤裸々に語っている。

 坂本さんが同社に語ったコメントは次の通り。

     ◇

夏目漱石が胃潰瘍で亡くなったのは、彼が49歳のときでした。それと比べたら、仮に最初にガンが見つかった2014年に62歳で死んでいたとしても、ぼくは十分に長生きしたことになる。新たなガンに罹患し、70歳を迎えた今、この先の人生であと何回、満月を見られるかわからないと思いながらも、せっかく生きながらえたのだから、敬愛するバッハやドビュッシーのように最後の瞬間まで音楽を作れたらと願っています。

そして、残された時間のなかで、『音楽は自由にする』の続きを書くように、自分の人生を改めて振り返っておこうという気持ちになりました。幸いぼくには、最高の聞き手である鈴木正文さんがいます。鈴木さんを相手に話をしていると楽しくて、病気のことなど忘れ、あっという間に時間が経ってしまう。皆さんにも、ぼくたちのささやかな対話に耳を傾けていただけたら嬉しいです。

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