HSCなど敏感で繊細な特性を持つ子どもたちが抱える集団生活での生きづらさがSNS上で大きな注目を集めている。HSC(Highly Sensitive Child)とは、アメリカの心理学者であるエレイン・N・アーロン氏が提唱した言葉で、「人一倍敏感な子ども」という意味です。
きっかけになったのは小児科医のりんごさん(@1amapple)が投稿したエピソード。
「かけっこの練習でどうしても一番になれないと泣く娘。同程度タイムの子同士で走ってるのに一回も勝てないのはなんでかなと思ったら…『わたしが1番になってると、前に人がいないから、このまま走ってて大丈夫なのかな?あってるのかな?って心配になって遅くするの。だから絶対1番になれない(T_T)』」
りんごさんがこのことを夫に話したところ、夫は「わかるわかる。自分一人だと急に不安になるんだよ。これでいいの?って。」「それでも経験を重ねていけば、ある時から急にこれでいいんだって自分で腑に落ちて大丈夫になるんだよ。一つずつクリアしていくしかない」と娘の思考を理解していたという。
SNS上にもこういった経験のある人は意外に多いようだ。
「これ、わかる
私もそうだった。だから、2番で良いや~になっちゃってた😓」
「うちの子まさにこれでスタートは他の子が走り出すのを確認してから、先頭を走っててもゴール間近で何度も振り向いて他の子が追いつくのを待っちゃうから毎年1番になれなくて…でも今年初めて合図と同時にスタートして振り向かすに1位でゴールを決められて成長が本当に嬉しかった。」
「めちゃくちゃわかる。1番は不安になる。でも、繰り返し練習して経験を積めば大丈夫になる時がくるんだよね。かけっこ頑張れー。」
りんごさんの投稿に対し、SNSユーザー達からは数々の共感の声が寄せられている。りんごさんにお話を聞いた。
ーーりんごさんから見たお嬢さんの性格についてお聞かせください。
りんご:よく一般的に言われるHSCタイプというか、繊細で、細かいことを気に病みすぎるところがあります。このため集団生活でストレスがかかりやすく、学校も定休日を作って休み休み通っています。内弁慶で家では思っていることをいろいろ話しますが、学校などでは本音をあまり言えないです。
ーーお嬢さまからこのお話を聞いた際のご感想をお聞かせください。
りんご:娘は運動が好きで、走るのも苦手ではありません。同じぐらいのタイムの子同士で走ると聞いていたのに、一度も勝てないといつも言っていて不思議だったのですが、こういう事情で一位になれなかったんだと聞いて妙に腑に落ちました。
いわゆる「初めてのことが苦手」「マニュアルがないと不安になる」タイプの子ではあるものの、ただまっすぐ走るだけなのに、前に人がいないと不安になってしまい、わざと遅くするなんていうふうに考えるなんて、自分では考えられないけど、娘ならさもありなんなので、なるほどと思いました。今回は似たようなタイプの人は他にもいるのかもしれないなと思い、ツイートしてみた次第です。
性格の説明のつけたしにもなるのですが、負けず嫌いで負けたくないと思いすぎるので、勝ち負けがはっきりするかけっこのような場面ではストレスがかかりすぎて苦しいです。負けたくないと思っていても、前に走っている人がいないと不安になって遅くするしかないなんて、気難しくて生きづらい性格だとつくづく思いました。
ーーパートナーの方にお話された際のご感想をお聞かせください。
りんご:夫は子どもの時は娘と似ていたようで、娘が学校や友人との関わりの中で感じることがよくわかるようです。今回の話も、私が聞いた時は私自身は「なんて繊細なんだ!!」と驚いたのですが、夫に話したら「わかるわかる」という共感だったので驚きました。
「先にいくお手本がないと、これでいいのかと不安になるんだよ」と言っていました。それで私が「そんなんじゃ、一生1位にはなれないね」と言うと、「いや、経験なんだよ。経験を重ねていくうちにこれで大丈夫と思える瞬間があって、そのあとは急に大丈夫になる。何事もその積み重ね」と教えてくれました。
私自身は小児科医として、自閉スペクトラム症の方の、初めてのことが苦手だったり、臨機応変な対応が難しいという傾向の対策として、「経験を積んで自分の中にマニュアルをたくさん作っていけば対処できるようになりますよ」なんてアドバイスをよくしているのですが、その実体験を娘と夫から聞いて、「なるほどな。とてもめんどくさくて苦労するけど、そうやって一つずつ人生を積み重ねていけば大丈夫なんだな」ということを間近に実感した瞬間でした。
ーーこれまでの反響についてご感想をお聞かせください。
りんご:このアカウントは身バレを防ぎたくて細々とやっています。今までこんなに反響が大きかったツイートはこのアカウントでは初めてで、ちょっと戸惑いました。
ですが、これだけ反響があるというのは似たような感じ方をしている人、思い当たる人がたくさんいるということなんだと思います。それをツイートに出来て、また多くの方の目に触れてもらえるのはありがたいと思いました。繊細タイプ、自閉スペクトラムのお子さんが、こんなところで苦労しているんだということを、少しでも実感してもらえたら嬉しいです。
運動会は、コロナのお陰でかなり短縮でやっているにもかかわらず、娘のような繊細タイプは練習のたびに疲弊して、家に帰ってからも嫌な気持を持ち帰り、夜も寝られず、運動会関係の嫌な夢まで見て翌朝も気分の悪いスタート…みたいな繰り返しが続きます。運動会が終わってもまだ疲れが抜けきれないという状況です。そういうふうに感じる子どもがいることを知ってもらえたらありがたいです。
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りんごさんの娘は「なんで運動会なんてやるの?体を動かして健康になるためなら、トンボとりでも、走ったり歩いたり飛んだり跳ねたりするから体は動かせるよ」と話しているという。HSCの症状が注目されるようになったのはまだまだ最近のこと。繊細な感情を持った子どもたちが疎外感を感じることないよう、世間の理解とサポート体制が向上することを願いたい。
りんごさん関連情報
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