車線内の左端を進む2台の電動キックボード。すぐ横をクルマが走り、大型トラックの車体もちらり。後ろ姿から女性と推測されるキックボードの運転者はノーヘル。東京23区内で撮影された画像がSNSで波紋を広げています。電動キックボードの利用者とドライバーの安全な“共生”は図れるのか。撮影者に聞きました。
「えぇ…。」の驚きの声とともに、Twitterユーザーのろくりん(@RockCircle6)さんの公開した写真にSNSが息をのみました。「ここをいつも使用してる人から言わせれば危険しかない。大型車も多い。ここ走って恐怖を感じないのかな」「単純に怖いですよね…ひどい事故が起こる前にルール見直してほしいです」「夜に遭遇するとかなり怖いですよね。『何故こんなものを認めたんだ?』と疑問しかない。」「ドライバー側から見たら危なくてしゃーない」といった危ぶむ声とともに16万近いいいねがついています。
週末の夕方、場所は都内
ろくりんさんによると、現場は東京都江東区を走る国道357号の有明IC手前で、日時は14日午後6時ごろといいます。側道で信号待ちをしている際、本線上の路肩を走る2台の電動キックボードを見つけ、撮影しました。
現状、電動キックボードは道交法上、原付またはミニカーに分類され、公道を走るには原付免許または普通免許が必要です。また、産業競争力強化法に基づく「新事業特例制度」で認可された事業者が貸し出す、いわゆる特例電動キックボードを除いて、ヘルメットの着用が求められます。
目撃された電動キックボードには、東京23区内や横浜、大阪、京都各市でシェアサービスを展開する認可事業者のブランド名が確認されており、特例電動キックボードと分かりました。この場合、位置づけは原付ではなく小型特殊自動車とされ、ヘルメットの着用が任意となるほか、普通自転車専用通行帯は引き続き、自転車が走行可能な一方通行路も双方向走行可能となりました。また最高速度は時速15キロです。つまり、話題になった画像の電動キックボードは法令上は問題がありません。
石ころを踏んで転倒したら…
とはいえ、ドライバーにしてみれば、クルマのすぐ横や目の前を電動キックボードが走っていたら、相当神経を使います。ろくりんさんによると、件の電動キックボードは時速15キロの速度を保っていたようですが、周囲のクルマは可能な限り離れて走行しているように見えたそうです。ただトラックなど車幅が大きい車はあまり距離を確保できていないようでした。
電動キックボードの国内メーカーによると、電動キックボードは、小径タイヤなので荒れた路面や段差を苦手とします。街乗り用の自転車の径は16インチ以上が多く、ママチャリなら24インチ、マウンテンバイクなら29インチというのもあります。原付バイクは10インチから、スポーツバイクなら17インチといいます。これに対し、電動キックボードのタイヤのサイズは大きくても10インチといい、段差や荒れた路面への弱さは否めません。また、立ち乗りで重心が高いため、急激な姿勢変化に対して弱い傾向があります。特に急ブレーキをかけた際に運転者がつんのめって前に転がってしまうことがあります。
「路肩には想像以上に石ころや落下物があります。引っかかって転んだり、よけようとして車道にはみ出た際に、時速60キロ近い車に接触したらタダでは済みません」とあるユーザーはリプ欄では具体的なリスクを指摘していました。
進む規制緩和
今後2年のうちに施行される道路交通法の改正内容は、現在の電動キックボードの規制を大きく緩和するものです。
・最高速度が時速20キロメートル以下など、一定要件を満たす電動キックボードを新たな車両区分である「特定小型原動機付自転車」に位置づける。
・特定小型原動機付自転車には、16歳以上なら免許不要で乗車できるようになる。
・ヘルメットの着用は任意となり、車道に加えて普通自転車専用通行帯、自転車道も走行できる。
となり、条件を満たせば時速6km以下で歩道も走れます。自転車に近い位置づけと言えそうです。
ろくりんさんは「自転車側の重大な違反によって生じた事故でも、自動車側の過失割合が高くなるような現状を鑑みると、ドライバー側としてはこのようなモビリティーが免許不要で乗れてしまうことに非常に憂慮しています。自転車専用レーンの必要性が叫ばれているにもかかわらずハード面の整備がなかなか進んでいません。歩行者と自動車の間に位置するモビリティー(自転車や電動キックボードに限らず、フル電動自転車等も含め)のためにも、ルールと合わせて道路の整備も必要だと感じます」と話しています。