「慣れた人」がやりがち?そのシート&ハンドルポジション間違ってるかも プロレーサーが教える長距離でも疲れない運転のコツ

広畑 千春 広畑 千春

 コロナ禍が続く中、通勤電車の密を避けようと車通勤に変える人や、キャンプブームを始め車を使って出掛ける人が増えています。ただ、普段より長距離や長時間の運転となると、疲労もつきもの。疲れにくい運転のコツをプロのレーシングドライバーに聞きました。

 教えてくれたのは、菅波冬悟さん(25)=神戸市。モータースポーツ好きな父の影響で、5歳でレーシングカートを始め、そのスピード感と迫力の虜に。15歳で全日本カート選手権の最高峰であるSuper KF クラスに参戦し、才能あるレーサーを発掘するスカラシップ(奨学金)制度の初代認定者に。2019年8月からLEON RACINGチームに所属し日本最高峰のレーススーパーGT GT300に参戦するほか、スーパー耐久シリーズなどでも活躍する注目選手です。

忘れられがちだけど、実は大切「ハンドル位置」

 そんな菅波さんが、長距離・長時間運転でも疲れない運転のコツとしてまず挙げたのが「ハンドルポジション」。全ての操作にゆとりが出るようにするのがポイントといい、ハンドルを切った時に腕が伸びきって前のめりになったり、脚が遠すぎてアクセル操作をしたときにお尻を前に動かさなければならなかったりするようなハンドル位置やシート位置はNGといいます。

 中でも、ハンドル位置は「僕もレンタカーなどを借りたら最初にする作業」。シート位置に比べて意外と見落とされがちで、変えたことのない人も少なくないかもしれませんが、「腕を上げているだけでも重力がかかって肩や腕、背中に負担がかかってしまう」そう。

 このため、前後の調整ができる場合はとりあえず一番手前まで持ってきた後、ペダルのポジションを調整して一番無理のない場所まで戻します。上下しか調整できない車であれば、いったん一番下まで下げてから、操作が窮屈にならない程度で、ハンドルに自然に手が置ける位置に調整します。

倒して乗るのはNG リクライニングは「少し起き気味」

 シートのリクライニングは、直立過ぎず寝過ぎず、シートに背中と頭を自然に預けられる角度にしますが、印象としては「少し起き気味」に。「よく、かなりリクライニングを倒して片手で運転しているドライバーもいますが、5~10分程度の近距離ならともかく、長距離運転では疲れの元になります。常に腰から背中、頭と体重をシートに預けられるのが、一番身体への負担が少ないんです」と菅波さん。

 シートの前後は「ペダルポジションよりもハンドルポジション優先」。左右に180度ハンドルを切っても、肩や背中がシートから浮かない位置に。「ペダルを優先してしまうと、どうしても手が遠くなってしまうことが多く、手の反応が遅くなる」といい、とっさの回避行動に支障が出るほか、ハンドルを操作するたびに姿勢がころころ変わることでミラーの見え方も変わってしまい、危険といいます。

 ハンドルの前後を調整できるテレスコ機能がある車なら、ハンドルポジションを崩すことなくペダルポジションを調整しやすいそうです。最後に目線を動かすだけでルームミラーや左右のドアミラーが見えるかをチェックしたら、準備は完了です。

カギは運転技術よりも「状況認知・判断」

 運転している時も「身体への余計な負担をかけない」のが鉄則です。特に急ハンドル、急発進・急加速・急ブレーキなど“急”のつく動作は、事故や交通渋滞の引き金になるほか、同乗者の乗り心地にも影響し、さらには車自体へのダメージにもなります。

 大切なのは、運転のテクニックよりも「周囲の状況に気を配り、把握し、判断する能力」と菅波さん。「レーサーというと、『度胸』や『勢い』というイメージや、前のめりでアクセル全開に…という印象があるかもしれませんが、実際は真逆。いくら速くてもチェッカーフラッグまでたどり着けなければゼロどころか、マイナスになってしまう。だからいつも、いかに効率よく、安全に、目的地まで車を運ぶか-ということを考えて運転している。心は熱く、頭は冷静に。僕らが目指すのは『究極のセーフティードライブ』。それは、一般道を走るときも同じなんです」

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