料理人でも間違える「火が出た天ぷら鍋に水」危険なので絶対やめて!どう消火すれば良い?

堤 冬樹 堤 冬樹

 京都市内の料理店で今月7日、火災が発生した。火元は天ぷら油が入った鍋だった。店主の男性は「鍋から火が出たので水をかけたら燃え広がった」と話し、ダクト部分が焼けたほか、顔や腕などに軽いやけどを負ったという。京都市消防局は「水をかけるのは極めて危険。絶対にしてはいけない」と警鐘を鳴らす。それでは、家庭で天ぷらを揚げる時などに火が出た場合、どう対処すればいいのだろうか。

 てんぷら油が過熱され続けると、煙が激しく上り、約360度で発火する。この時に水を加えると、一気に水蒸気となり、周囲に高温の油が飛び散る。市消防局が製作した「恐怖!天ぷら鍋火災」と題した実験動画でも、水をかけた瞬間、爆発的に炎上する様子が収められている。

 市消防局によると、消火の3要素は(1)冷却(2)空気の遮断(3)可燃物の除去という。天ぷら鍋から出火した際、最も適切で安全なのはこんろの火を消し、消火器を使うことだ。

 消火器はホームセンターなどで簡単に購入でき、家庭での設置を推奨している。消火器には粉末と強化液の2種類あり、特に天ぷら鍋火災で威力を発揮するのがより冷却効果が高い強化液タイプだ。小さくて軽く噴射しやすいエアゾール式の消火器具は、高齢者や女性にとっても扱いやすい。

 動画では、こんろの火を消して鍋をふたやしぼったぬれタオルでしっかりと覆い、空気を遮断して消す方法も実演している。だが、「一定の距離が保てる消火器と違って近づかなければならず、お勧めとは言えない」(市消防局予防課)。

 インターネット上などで紹介されているマヨネーズを投げ込むのはどうか。油膜が張られて消火効果は一定見込めるというが、ただでさえ炎が上がって動揺が予想される中、うまく鍋に投入できるか分からない上、油がはねて周囲に燃え広がる恐れもある。このほか、火の付いた鍋を外に持ち出そうとする人もいるといい、いずれも大変危険という。初期消火ができない時は、すぐに避難して119番通報したい。

 京都市内では2021年に火災が196件発生し、このうち天ぷら油火災は10件で、原因別では6番目に多かった。過熱防止装置などが付いた「Siセンサーコンロ」の家庭での普及によって天ぷら油火災の件数は減少傾向にあるが、業務用や古いコンロ、カセットコンロを使用している人は特に注意が必要だ。

 また、コロナ禍で自宅で料理する人が増えたほか、年度始めで新生活を始めたばかりの単身者が慣れないまま調理して火災を起こす事例も。市消防局予防課は「大前提として、調理中にコンロから離れて携帯電話を操作したり寝たりするのは絶対にやめてほしい」と訴えている。

 市消防局が製作した動画の視聴はYouTube「CityofKyoto」で公開中。京都市市民防災センター(南区)では、VR(仮想現実)機器を使い、天ぷら鍋火災も疑似体験できる。

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