足がないことを忘れてしまうほど自然体 闘病10カ月…壊死した両足と尻尾を切断、命をつないだアルノくん

古川 諭香 古川 諭香

2021年5月25日、arno05250525さんは線路沿いの道路で、1匹の子猫と出会いました。その子は、長毛の茶トラ猫アルノくん。出会った当初、アルノくんは両後ろ足が壊死し、お尻を浮かせている状態。壊死して真っ黒になっていた尻尾は、お腹に張り付いていました。

線路沿いの道路で出会った、長毛の茶トラ猫

近寄ると逃げてしまうため、アルノくんを保護するまでにarno05250525さんは30分ほど時間を費やしたそう。持っていた帽子の中にアルノくんを入れ、小走りで家に連れて帰りました。

危険な状態であったため、すぐに動物病院へ。治療は、体にいた大量のウジ虫を取るところから始まりました。

「自力で食べることができないほど衰弱していたので、先生が給餌してくださいました」

獣医師から告げられたのは、壊死した両後ろ足と尻尾の切断の必要性。

「やっぱりか…と思いましたが、覚悟はしていたので納得しました。生き延びてくれさえすれば、それでいいと。ただ、体力的に手術に耐えられるかは分からないとも言われました」

手術が行われたのは、それから1週間後のこと。手術後、アルノくんの呼吸は一度止まりましたが、獣医師による懸命な処置によって命は紡がれました。

術後、足の付け根で切断した左足の治りはよかったものの、膝で切断することとなった右足はなかなか良くならず、完治までに8カ月の月日を要したそう。

「傷が塞がってきたかと思えば開いてしまい、縫って…を繰り返したので、長期入院となりました」

ようやく、傷口が治り、安堵したのもつかの間。今度は、足とお腹の間に原因不明の穴が。

治療は傷口に粉薬を塗り、塗り薬をつけたガーゼを穴に埋め込んで包帯とテープでずれないよう固定し、経過を診るというもの。多い時は1日2~3回ほど傷の状態を確認し、ガーゼ交換をしてもらいました。

「この穴が何だったのかは結局、先生にも分からなかったようです。持っていた疾患が原因だったのかもしれないし、床ずれのような外的要因だったのかもしれません」

入院から2カ月後、アルノくんはようやく退院でき、おうちで暮らせるように。それはarno05250525さんがアルノくんを保護してから10カ月後のことでした。

過度に配慮せずに「猫らしい」生活を

現在、アルノくんは2本足でおうち生活を満喫中。後ろ足がないことを感じさせないくらい、元気いっぱいな日々を過ごしています。

一緒に暮らし始めた当初は、少しでも高いところに登ると、落ちた時に危ないのではないかと考え、arno05250525さんは気を遣っていたそう。

しかし、自ら高い場所に登り、軽やかに降りるようになっていくアルノくんの姿を見るうちに、過度な配慮をしなくなりました。

「高いところにも前足だけの力で登るし、走るのも、とても速いです。アルノは自分が障がいを持っていることなんて知らなくて、毎日、一生懸命過ごしています。だから、私たち家族もありのままのアルノを愛して、毎日楽しく暮らしています」

共に暮らす中で、arno05250525さんが意識しているのは、被毛に便がつかないようにトイレ後にお尻を拭くことと、入院時から食べさせている療法食を継続すること。

被毛の状態や健康を維持するため、スキンシップをとりながら毎日ブラッシングも行っています。

「病院の先生は当初、手術が成功しても、この子は一カ月も持たないかもしれない…と思っていたそうです。でも、諦めずに誠心誠意、治療を続けてくださった。この子の生命力と熱意ある治療のおかげで、ここまで回復することができたんです」

障がいがあることを忘れるくらい自然体

そんなアルノくんには、arno05250525さん家族にしか見せないかわいらしい一面が多々あるよう。

例えば、ご飯の時間。食べることが好きなため、時間になると鳴き始め、ご飯が出てくるまで鳴き続けるのだとか。

「食べている時に『おいしい?』と聞くと、食べながら『にゃあん』とお返事をしてくれます」

そして、普段はツンデレで呼んでもきてくれないのに、歩くと足にまとわりつくようについてくる姿も、arno05250525さんにとっては胸キュンポイント。

「抱っこしながらユラユラすると、甘えた声を出しながら眠ることもあります」

お気に入りのおもちゃは、猫じゃらし。arno05250525さんのお子さんたちと遊ぶことも大好きで、最近は新しく購入してもらったキャットタワーのハンモックでくつろぐのがマイブーム。

 

アルノくんは、家族が普段、食事をしている椅子のそばで、まったりとした時間を過ごすのも好んでいるようです。

「そういえば、アルノは足ないんやと、たまに思うほど、自然体で生きてくれています。これからもアルノが生きていてくれていることに感謝し、安全を見守りながら一緒に毎日を楽しみたいです」

そう語るarno05250525さんにとって、アルノくんは、いつもほんわかあったかい気持ちにさせてくれる光のような存在。

人知れず命を落としていたかもしれない1匹の茶トラ猫は愛され、想われる未来を手に入れました。

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