ロシアへの経済制裁は効いているのか 欧米諸国が一丸となっても…実は多くの抜け道が

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ロシアによるウクライナ侵攻から2カ月が過ぎる中、欧米諸国や日本などがロシアに経済制裁を強化しているが、プーチン大統領は、欧米はロシアを孤立させられないと強気の姿勢を堅持している。はたして欧米による経済制裁は効いているのだろうか。

先に結論だが、総合的にみれば制裁は効いていないと言えよう。

まず、効果的と思わせる部分を紹介しよう。たとえば、モスクワの市長は4月18日、雇用支援策を打ち出しているもの機能せず、今後モスクワ市内の外国企業で働く20万人あまりが失業する恐れがあると警戒感を示した。モスクワなどロシアの各都市ではアップルやスターバックス、マクドナルドやIKEAなど世界的な欧米企業が相次いで営業を停止し、今後も再開する目途は立っていない。ロシアに進出する日本企業をみても、ジェトロが3月末に発表した企業統計によると、今後半年から1年後の見通しとして、「ロシアからの撤退」と回答した企業が6%に上り、「縮小」と回答した企業38%を合算すれば実に半数近くの企業が脱ロシア動きを示しており、そういった外国企業の動向はロシア経済・市民にとっては大きなマイナス要因になっている。

ロシアの若者の中にはリベラルな価値観を重視し、権威主義的なプーチン政権を嫌う者も多く、既にロシアから脱出した若者たちも多い。欧米による経済制裁がさらに若者たちのロシア離反を活発化させる可能性もあろう。

しかし、ここで原点に立ち返りたい。要は、欧米による経済制裁の目的は何なのかということだ。それには本来、ロシアのさらなる軍事行動を停止させるという抑止機能があるべきなのだが、実際ロシアによる軍事行動は続いており、プーチン大統領の強硬姿勢に変化はない。本来の目的に照らせば、欧米による経済制裁は2カ月が経過する今日、効いていないと言えよう。

また、それを助長するいくつかの要因からも目が離せない。まず、中国の存在だ。習政権はオリンピックとパラリンピックの間にロシアが侵攻したことを微妙に感じているだろうが、依然としてロシア非難を避け、むしろロシアとの経済的接近を図っている。

そして最近ではインドの対応にバイデン政権が神経を尖らせている。周知のように、インドはロシア製武器に依存しており、長年両国は友好関係にある。ロシア非難を巡って、インドが明確にロシアを非難しないことをバイデン大統領は名指しで不満を示した。日本のウクライナ支援を巡る自衛隊機派遣でも、自衛隊機が経由としてインドを利用する計画をシン政権は拒否した。5月には日本でクアッド首脳会合が開催されるが、対ロシアでクアッドが一致団結した姿勢を打ち出せない可能性も出てきた。欧米による経済制裁が強化され、ロシア産の石油や天然ガスの一部が欧米諸国へ輸出されなくなった一方、ロシア産原油の値段が下落したこともあり、中国やインド、トルコなどはむしろ同原油の輸入量を増やしている。

さらに、サウジアラビアなどの中東諸国、シンガポールを除くASEAN諸国も引き続きロシア非難を避け、対ロシア政策に加わっていない。サウジアラビアはバイデン政権によるイラン核合意復帰や脱炭素重視の政策を良く思っておらず、米国との関係は明らかに冷え込み、むしろロシアとの関係を重視する方向にある。

このようにみてみると、欧米による経済制裁は一部で効果的と思われるが、全体的にみれば多くの抜け道があり、決して効果的とは言えないのが現実だろう。

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